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女たちのジハードで語られたような、シンプルで無駄のない地の文体に、文中小説(とはいっても引用と概要ではあるが)が挟まる、最初の展開。
その文中小説が秀逸。
文章も練られていて、それだけで十分に読みごたえを感じるような素晴らしいプロット。もったいない!
このままできればきちんと読みたい、そう思わされるほどの出来栄え。
しかし作者の展開するストーリーの肝は、そこにはない。
その作者の数奇な運命?才能?能力を軸に、担当者、同じ賞をとった老作家、そして主人公と3人の人生が絡まりあいほつれていく。
最後の結末は・・・
人は失われたものを求めずにはいられない。
なくしたものの輝きを美化し、そこに逃げ込み、
自分が欲しかった答えをひたすらカクニンしようとする男たちの姿は、
愕然とするほどに脆く、そうして胸に痛い。
失われたから、そこにないから輝いている。
それに目を奪われるのあまりにすぐ手の届く手垢のついた現実を、貶めた瞬間にそこは、闇。
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出版社に勤める主人公は偶然、読者をぐいぐい本の世界へ呼ぶ小説に出会う。しかし、その小説は肝心な所で終わっている未発表作品。その作品を完成させたい一身でもはや自分の仕事の域を超え、作者を探す、その姿はもはや狂っているのではないか…?そして怪しい宗教団体に突入していく…という感じの話。篠田さんは宗教話上手いと思います。が、そこまで感情移入できなかったナ。
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おもしろかった!ひさしぶりに日本の閉鎖的で湿った民俗学的世界にはまって満足しました。主人公はなんとなく冴えない青年で最初は感情移入するのが難しかったけれど、「聖域」と名づけられた原稿の登場で一気に加速、最後まで息切れしなかった。ただ結局「聖域」の結末が描かれていなかったのが唯一残る不満かな。
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初めて読んだ篠田節子の作品。
詳細も結末も詳しく覚えていないんだけど、とにかく引き込まれた記憶がある。
読後はしばらく放心状態。
何度も何度も肺水腫に陥るシーンがあるのって聖域だっけ?
あのシーンが強烈で涙が出てきた。
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篠田ワールド、これはオカルト系。
おどろおどろした世界は、篠田節子の筆が光るところ。
他の作品に比べて、やや地味な印象。
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偶然手に入れた「聖域」という未完の小説に魅せられた出版社の編集者が、作品を完成させるために、消息不明の作者を追うと...というサスペンス小説。
主人公には、今ひとつ感情移入できなかったが、先を読ませない展開で、ストーリーを追うだけでもなかなか面白かった。
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大作だと思います。
だけど私は宗教にももちろん宗教を題材にした
ほんにもあまり興味が無く…
最初はとても難しく感じました。
ただ主人公が女性作家に小説の続きを書いてもらうために
危なそうな団体に乗り込んだり
東北の田舎町を探し回ったり…と言う下りは
引き込まれました。
最終的にはやっぱり私には理解できない
分野にたどり着いた感じなので
私的には★が二つですが、やはり重い大作だと思われます。
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主人公は “水名川 泉” に辿り着けるんだろうか、と最後まで惹きつけられて読んだんですが、結着の仕方が・・・。
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「読む人を虜にする原稿」って、たまらなくそそられる帯にひかれて購入。読んでみれば、下北、イタコ、宗教と、いま興味を持っているキーワードがぽろぽろ出現。めいっぱい期待したけど、うーん、このボリュームに収めようというのは無理だったんじゃあなかろうか。このテーマで長大な大河小説を書いてくれれば読み続けてみたいけれど。
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週刊誌から文芸誌に異動したての編集者・実藤が、ある時偶然手にした未発表原稿「聖域」。物語が佳境にさしかかったところで、終わってしまっているこの作品のラストを読みたい一心で、実藤は無名の作者・水名川泉を捜し出すため、僅かに残された痕跡を頼りに東北へと向かう。
◆94年4月刊行された小説であるにもかかわらず(執筆はそれよりずっと前だと予想されるけど)、「新興宗教」が物語のひとつの軸として働いている。日本人にとっての「信仰」の問題。
◆東北地方の描写に、いつか車窓から見た風景を思い出し、記憶と描写を重ね合わせるように読まされた。
◆二重の「聖域」。『聖域』という本書の中で、「聖域」を扱っている二重性の面白さ。作中の「聖域」も、普通に興味深い内容。退屈させない。
◆泉を捜索する過程の疾走感。加速していくミステリー。
◆創作の虚構に惑う作家としての泉。潮来としての泉。
◆編集者・実藤の「作品を世に出す」という使命感が、途中から揺らぎ、利己的な欲求のために泉に接触しようと試みる。その際の人間の醜悪さ。
舞台として登場する青森県浅虫温泉周辺は個人的に思い入れがあるのだけど、きっと綿密に取材を重ねたのだろうなあというのが伝わってくる描写でした。
一級のエンターテインメント小説でありながら、作者である篠田氏の小説家である己をも賭した挑戦、そのプロ根性に、ほとほと感服するばかりです。文句なしの5つ★。ぜひ読んでもらいたいものだと思いました。
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とある編集者が行方不明の小説家の行方を追う、サスペンスです。
いろんな意味で死にたくなりました。
いや、これじゃあ表現がまずいな。
帰りたくなったというか、返りたくなったというか、還りたくなったというか・・・。
失ったもの、敵わないもの、美しいもの、そんなものにすがってしまう。
普段はそんなこと思ってもいないのに、いざ目の前に現れると、抗えない。
嗚呼、人間って弱い生き物なんだなって、登場人物たちの姿を見て思いました。
でもきっと、どんなに強い人でも、弱い部分があるんです。
どんなに隠すのが上手でも、ふとした瞬間ですべてが崩れてしまうこともある。
でも、それでいいんだ。
崩れるなっていう方がたぶん無理だ。
そこで初めて気付くことがある。
そこで初めて見えたものがある。
だからどうか、崩れる人を許してほしい。
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作中作。小説の中に、題材として小説の「本文」が入っている。
作中作に、終わりがないのは、そんなもんだろうという気がした。
巫女(いたこ)に対する記述が豊富で、口減らしのための方策については考えさせられた。
蝦夷に対する記述は尻すぼみで、何が書きたかったのかが分からなかった。
山で亡くなった女性に対する描写が中途半端なのは仕方が無いとして、だからどうだという決意みたいなものがあると嬉しかった。
もう一回手を入れて貰えると嬉しいかも。
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ミステリーやサスペンスの類を期待して読んだのですが、ちょっと思ったのとは違いました。
めまぐるしい展開があるわけではなく、主人公が苦悩をかかえながら進んでいくロードムービーのような印象の小説。
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弥勒が好みではあったので、温泉でダラダラするのに持って行ったが、弥勒よりも好みな展開で、一気に読んでしまった。この「救い」がテーマなのであって、最後「聖域」の結末が、僧慈明による般若心経というのは、割とそこへ落ち着くしかない、というのは途中から読めてしまうのではあるが、そこへたどり着く苦悩や絶望が、何だか真に迫って、途中でちょっと涙ぐんだ。
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2014.11.8
すごい作品だった。
宗教、信仰、生と死、人はなぜ生き、生かされているのか…。
終始どんよりと東北の海の色のように暗く重たいテーマで進むこのストーリーを私の稚拙な文章力では書き表せられない。今までに読んだこのとのないジャンルのストーリーでした。
最初にこの本を買った時に思い描いていた話の展開とは全く違っていて、序盤の『聖域』のあらすじ部分は読むのが辛かったけど、中盤から実藤が水名川泉を追って東北に行くあたりで徐々に話が急展開していき、引きこまれていきました。
読み応えのある作品でしたが、ちょっと自分には重たすぎ、なんだかどんよりとしていて読んでて不安になるような小説でした。大作だけど、自分向きの作品ではなかったです。