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「しずくは観覧車に乗りたい」
お金持ちの夫人のところへ身売りされることになった見世物小屋の人魚が口にした最期の願い。そして観覧車がいちばん高く登った時、出し物の話の通り人魚は泡となって空に消えた・・
心やさしい雑誌記者と美形の挿絵絵師が紡ぐ暖かい帝都探偵物語。
『赤いろうそくと人魚』を彷彿とさせるような表題が目に留まりました。
時は明治後期、類まれなる才能と美貌を兼ね備えた超売れっ子絵師(男)『有村礼』と売れない雑誌記者『里見高広』。高広は礼が自分と親しくするのは英文の推理小説を翻訳して読み聞かせるからだけだと少々卑屈気味。でも友人として好いていると言われ・・てな二人の関係がとってもそそります(失礼)。本来はあくまで友情(だよね)で、とても暖かく優しい探偵物語です。主人公の二人の関係を含め、好人物が多く登場し物語をひきたててくれます。こういった後味の良い話はやっぱり好いですね。
さて、気になった表題の一編ですが、作家の『小川健作』なる人物が出てきます。フルネームを見たときは男ですし何とも思わず流してしましましたが、ラスト彼の筆名が『未明』と明かされて、なんと!そうきたか!と納得。似てるはずです。先に気付かなかったのは情けないですが、そのおかげで楽しめたので良しとしましょう。この本が読みたくなったのは、小川未明の『赤いろうそくと人魚』を読んでいたから。そして、『赤いろうそくと人魚』を読もうと思ったのは、有川浩の『図書館戦争』にでてきたから。本が本を呼び、結果として新たな好い本に出会えることができました。こういう巡り合わせもいいものです。
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連続短編で、ひとつひとつがとても読みやすかったです。
むしろ貴方はツンデレですか? と聞きたくなった絵師が面白いw
推理物好きと言えばいいですが…首突っ込み系?
上司と絵師と他記者の、どれもこれも個性が強い面々に囲まれながらも
ごく普通にいられる主人公が素敵かとw
人も死なない、文明開化の時代の事件。
トリックも単純なせいか、非常に分かりやすかったです。
そして自分には無理だと言いつつも、謎を解いてしまう彼が
純粋でいい人だな、と。
それをいうなら絵師も…いや、どこの青春ものですか、と
突っ込みたくなる『始まり』でしたw
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私は大変楽しく読みました。日常系ミステリ…と言ってもいいのかな?
元々、日常系ミステリをそれほど読まないので、比較対象がよくわかりませんが(北村薫と米澤穂信は2作品くらいずつ?読んだことある程度)、気に入ったので星3つ。
登場人物にも事件そのものにも悪意のない作品で、読後感も非常に爽やか。
その分、地味といえば地味かも。推理らしい推理もしていないので、「ミステリ…か…?」という感じ。
登場人物が漫画的なので、そこでも好みがわかれそう。
ちなみに一番驚いたのは小川さんの正体(笑)
どうして人魚姫の話ばかりで「赤いろうそくと人魚」が出ないのかと思いきや。不勉強で知りませんでした。
…と、ここまでは一般小説としての感想。
ここから先は801とかBLとか分かって嫌悪感のない方だけ読んでください。
こういうことを言うのは大問題だと思う…思うんですがしかし。
これ、私にとって、すごく理想のBL小説です…。
誤解のないように重ねて断っておくと、前述のとおり、ミステリとしても星3つです。
ですが、BLとしてなら星5つ。それぐらい好みです。
以前、某漫画のPOPで問題になったことがあるし、一般書籍に対して、こういうこと言っちゃいけないとは思うんだけど…
NOT現代、優しい世界観、仲良し男子(それ以上ではない)にキュンと来る方は是非。
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感想はブログにて。
http://croco.blog14.fc2.com/blog-entry-52.html
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時代物やミステリーになじんでいない人にも、読みやすいライトなミステリー。
良くも悪くもコミック向きな感じかな。「超絶美形の天才絵師」が出てくる辺りがとくに。
短編だし、さらさらと読みやすいので、この本原作にレディコミ辺りでどなたか描きませんかねぇ。
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雑誌記者の高広と、天才絵師の礼。この2人のコンビが良い。
「腰の低いホームズと高飛車なワトソン」という言葉は正にピッタリだ。
ミステリーなので、もちろん事件が起き犯人が存在するのだが…。ここには、例えばお金が欲しくて人を殺すような犯人は登場しない。
事件が起きる経緯は少しだけ複雑で、犯人は悪人ではなく他の者と同じく人間なんだと感じる。
そういう印象では、東野圭吾さんのミステリーに登場する犯人の描かれ方に似ているように思う。
全体を通して、主人公を始めとした登場人物の人柄が丁寧に描かれている。
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舞台は明治。雑誌記者・里見高広と美形の天才絵師・有村礼の帝都探偵物語。
4話からなる連作短編集で、彫刻の才能を持つ少年の行方不明事件、宝石店から消えた真珠の行方、観覧車から消えた人魚の謎、怪盗との対決、といった内容です。
昔の探偵小説、といった雰囲気がとても好み。
どの謎もやっぱりね、という真相ですが、2人のそこはかとない友情や掛け合いの面白さ、あたたかな読後感であっという間に読んでしまいました。
一番好みだったのは第4話の「怪盗ロータス」ですね。
ラストの後日談が効きました。
ぜひシリーズにして続けていただきたいです。
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「しずくは観覧車に乗りたい」富豪の夫人に売られてゆくことが決まり、最後の願いを口にした見世物小屋の人魚は、観覧車の客車から泡となって消えた。水神の怒りに触れて浅草は水中に沈んだのか。いや、地上という水底から人魚がその身を縛るもののない空へと還っていったのか――(表題作)。
心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年が贈る帝都探偵物語。明治の世に生きるふたりの青年の交流をあたたかに描いた、新鋭の人情味あふれるデビュー作品集。 (表紙裏より)
表紙見て、どこのボーイズラブなんじゃろう?と思ってしまいましたが、これはれっきとした(?)ミステリフロンティアでした、あはは。
雑誌の売り上げを左右する、美麗挿絵を描いてくれる天才美形絵師・・・。彼がアームチェアディテクティブぶりを披露してくれるのかと思いきや、こちらはワトソン役でしたね。
挿絵を描いてほしさにホームズの本をちょこちょこと訳してあげる雑誌記者の方が、色々と動き回るホームズ役でございました。
しかもこの人、お大臣の義理のご子息なんですよ。
跡を継がせたい父親の意思を、必死になって覆そうとしている姿はちょっとかわゆいです、ふふふ。
あ、あと〈真珠にまつわるみきもとさん〉、〈人魚とろうそくにまつわるおがわさん〉などなど・・・、登場人物が実在の人物を彷彿とさせるところがちょこっとお楽しみみたいな感じがして面白かったですよ。
帝都を舞台にした和製ホームズとワトソンの活躍ぶりも、なかなか興に乗って楽しめました。
お気に入りは「怪盗ロータス」ですね。
だましだまされのコンゲーム。
ラストにどんでん返しがあって、それで満足していたら、本当のラストにもう一回ひっくり返されて・・・ものの見事に読みの裏の裏をかかれました!
これは完璧に脱帽です。
こういった、「うわ!やられたぁ!」とうれしい悲鳴を叫ばせてくれる作品なら、もっと読んでみたいですね。
続編希望です、ふふふ☆
以下は覚書的メモ。
「点灯人」
〈尋ね人の記事を載せて欲しい〉
尋常小学校四年の少女・桜の一言から、雑誌記者の里見高広は少女の兄である“天才少年彫刻家”・慧を探すことになる。
その行方を捜すうちに、倒産したはずの印刷所が機能していること、そこで意外なものを印刷している事実を突き止め・・・。
「真珠生成」
金魚鉢から現れた、たぐいまれなき大粒の真珠・プリンセスグレイス。それは大手宝石店から盗まれた、大粒の真珠のうちの一つだった。未だ行方がしれない残りの真珠を追うことになる里見は、自分が手伝い講師として通う教会に、その宝石店で働く少年がいることを知る。近日その姉が結婚するらしいのだが、どうもそれは傾きかけた教会を救うための結婚のようで・・・。
「人魚は空に還る」
大人気の見世物小屋にいる、謎めいた“人魚”。
何もない場所に向かって怒鳴り散らす団長の奇行。
浮世離れした富豪の妻である美女に買い取られた人魚が、空高く浮かぶ観覧車から消えた謎。
優しい嘘に守られて、悲劇の人魚���朗らかに笑う・・・。
「怪盗ロータス」
自身の盗みの証しとして、蓮の木彫りを残していく義賊・ロータス。
日本で言うところの宝くじ・台湾彩票の秘密の売買が取りざたされる頃、米相場でひと山当てた成金・大黒のもとに、ロータスからの盗みの予告状が送られてくる。
大黒の持つ印象派の絵画コレクションが狙われた噂は世を駆け巡り、大黒は一躍時の人に。
しかし大黒は盗みを恐れ、絵画を次々と売り飛ばしてしまう。
彩票事件の一斉検挙とロータスの盗みのタイミング。
大黒の真意とそれを上回るロータスの機知。
数十年後に本当の勝利を得たのはいったいどちらだったのか・・・?
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イケメンが探偵役じゃないとこがいい。いいキャラ揃い。続編も読まなくては。ただし、このタイトルは損してるような。
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舞台は明治。雑誌記者・里見高広と超絶美形の天才絵師・有村礼の帝都探偵物語。腰の低いホームズと高飛車なワトソンのカツヤクである。
いろいろツボな設定でとても楽しかった。
てっきり、絵師のほうが探偵役だと思っていたので、逆だったのもよろしかった。
「前門の弥勒菩薩(顔だけ)、後門の海坊主。」
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謙虚な探偵と高飛車な助手って新しいな(笑)
やはり明治時代辺りの雰囲気は好きだ。旧時代と新時代、清濁が混沌としてる感じが。
表題作と「怪盗ロータス」が好き。
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確かに時代設定の勝利。モチーフの割に物語のエネルギーが薄めな感じもしたけど、いい余韻を残す作品をそろえてる。表題作と四話目が好き。表題作はずるい。未明。全ての夜が明け、新しい朝が来るように。機会があったら続刊も読んでみたい。
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へたれなホームズにつんでれなワトソンという組み合わせが面白い。些細な事件を探偵じゃない記者がほどいていくのも清々しかったです。そよ風みたいな文。
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■「しずくは観覧車に乗りたい」富豪の夫人に売られてゆくことが決まり、最後の願いを口にした見世物小屋の人魚は、観覧車の客車から泡となって消えた。水神の怒りに触れて浅草は水中に沈んだのか。いや、地上という水底から人魚がその身を縛るもののない空へと還っていったのか-(表題作)。心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年が贈る帝都探偵物語。明治の世に生きるふたりの青年の交流をあたたかに描いた、新鋭の人情味あふれるデビュー作品集。
■■ミステリー短編集。明治ミステリーというわりに設定も描写も軽くて、読みやすい。二人の関係が普通の探偵と助手ではないのが、中々意外性があって面白かったです。優しいお話でした。
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「ミステリ・フロンティア」シリーズの一冊で、「帝都探偵絵図」シリーズの第1弾にあたる。明治の香りが漂う帝都・東京を舞台に、ホームズとワトソンを意識する二人の青年(心優しき雑誌記者・里見高広と美形の天才絵師・有村礼)が、降りかかる難問を思わず唸るような着眼点で解決していく。実はこの2月に、同じシリーズの第2弾『世界記憶コンクール』の方を先に読んでしまっていた。第2弾を先に読んでいたとはいえ、面白いことには変わりない。 時代背景を明治末期としており、時代考証を重ねた史実や情景がノスタルジックに描写されている。読みながらその場面、場面や登場人物たちが、脳内で劇画風に画像転換されていく気分。