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【第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作】しみじみと心に染みる,不思議な魅力の幻妖小説。人間と妖したちののどかで優しい物語。ホラーが苦手な人にもおすすめ!
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読了、85点。
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妖怪や神と人間が互いの存在を認識し合う世界、県境に住む妖鬼の皐月は人間社会とわずかな接触を持ちながら、良くないものが村に来るのを守っている。そんな皐月の元へ村の酒造から依頼が舞い込む。亡くなった旦那の奥さんが家の屏風に宿って、色々と我儘を言うのでその相手をして欲しいというものだった。
気乗りしないまま受けた皐月だったが奥方との会話を楽しむようになり……
表題作(生き屏風)他2篇収録。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
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積み本でしたが崩しました。崩して良かった。
この世界は、今まで読み進めたところでは割と平穏で、人を食う鬼や出くわして対応に誤ると常世へ連れ去られてしまう冬の山の神の存在が語られはしますが、明確に人間と人外のものが対立するような描写もなく、
また妖の持つ術を人間に伝えたり、人間からお供えをもらったりと、僕好みの柔らかい舞台になっています。
話の大筋はその世界観の中で人と妖の交流が、会話をメインに進み、非常に読み易く楽しい小説でした。
ちなみにホラー小説大賞と言いつつも怖さは殆どありません。同賞の長編賞『粘膜人間』と比べるとこちらの方が好み、また大賞の『庵堂三兄弟の聖職』は未読。
シチュエーションは割とありがちと言えばありがちですが、じゃあこれと思い浮かぶ小説もなく、そういう点でも僕にとっては良い作品。いや、短編だと以前ここで書いた『少女禁区』(http://booklog.jp/users/mametarou77/archives/1/4043943881)の表題作は、妖は出て来ませんが呪術の存在や時代背景が通じるものはありますが、『少女禁区』はもう少し黒さがあったのに加えて惜しいかな、これ一本の短編で世界観の広がりがない。
それに対して「生き屏風」から始まる皐月シリーズ?は最初の短編で存在だけ語られた猫師匠や狐妖が後の短編で登場したりと、広がりがあって楽しめます。
ヴィジュアル的には魂追いの表紙を見ると、アニメ化とか思ったりもしますし、ゆるアニメになれば楽しいかもしれませんが、こういうのをアニメ化すると唐突にバトルものになったりしそうですよね
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ぱらぱら読むうちに何となく気になって、最後は 物語にゆらゆらと気持ち良く取り込まれてしまった。妖達や生き霊が変に超然としていないのが良い感じ。書き下ろしの「猫雪」は、本当に湯豆腐でも食べながら一杯やりつつゆったりと頁をめくりたくなります。
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優しい妖怪もの。
馬の首で眠る皐月という少女の鬼は村境に住み、わるいものの侵入を防いでいる。
村人からのお供えをもらったり、依頼を受けたりして暮らしている。
ある日、亡くなったおかみさんが屏風に憑いて、その話相手をして欲しいとの依頼があり…「生き屏風」
作者は遠野物語や民俗学、妖怪ものが大好きなんだなあ、と思った。
妖怪と人間がつかず離れずで暮らしている、のほほんとした世界観でした。
続編がありますが、表紙はこちらが一番雰囲気があって好きです。
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とても面白い。解説の通り「癒しのホラー」です。図書館から借りましたが、所有したくなったので購入します。日本の秋から冬への少し寂しい感じ、人と妖と神がちょうど良い距離を取りつつ関わりつつそれぞれに暮らしている感じ、妖も人も周りの人(妖)達と食べたり飲んだりしている感じがとても好きです。
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寝る場面を想像したらホラーやけど全体的には牧歌的な1冊。 表題作では妖鬼である皐月の能力が少し見れたが、その後の話では思い出話で語られるぐらい。現在、凄い妖鬼になってるのかドジな妖鬼のままなのか分からない。これだけやと物足りないので続編を読んでみます。
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あらすじ
↓
村の酒屋の死んだはずの奥方が、あの世から戻ってきて家の屏風に取り付いてしまった。
「村はずれに住む妖鬼の皐月」は、屏風の奥方の相手をして、
退屈を紛らわしてほしいと頼まれ、しぶしぶ出かけていったのだが――。
↑
あらすじ終了
「村はずれに住む妖鬼の皐月」←これ重要
だって、この娘が主人公の話だから(他の短編も、この先も)
物語に登場する者達は怪異側の生き物ですが、
話自体はもの悲しさを感じる話です
怖くは無い
むしろ、登場する人間の方が恐ろしいかなと
屏風の方に感情移入してしまいますよ
ただ、この皐月の寝方が……
グロいというか、不可思議と言うか
作者の方の文書で理解は出来るのですが、本当に合ってるのか納得出来ない……
是非、そこは読んで欲しい
ちなみに、続刊として、
「魂追い」「皐月鬼」が出てます
全3部作になっているようなので、続きも読む予定
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【本の内容】
村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。
病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。
屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。
そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。
嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき―。
しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
[ 目次 ]
[ POP ]
日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作に、書き下ろしの二編を加えた連作短編集。
2作目の「猫雪」や続く「狐妖の宴」も、魅力的な、一癖もふた癖もある妖怪や人間達が登場して面白いが、なんといっても「生き屏風」が良かった。
「皐月はいつも馬の首の中で眠っている」
まずこの冒頭から掴まれる!
村境に住む皐月は、飼っている馬(その名も「布団」)の首の中でないと寝られない妖鬼だ。
物語は鬼や妖怪が人間と共存しているいつかの時代の日本が舞台のようだが、丁寧な時代背景や設定の説明はない。
だからこそ、読者をすっと物語世界に引き込むこの一文は秀逸だと思う。
皐月は、死んでから屏風に取り付きわがまま放題の酒屋の奥方に、話し相手として雇われる。
シェヘラザードよろしく皐月が奥方に語る不思議な体験や出逢った妖怪の話は、過度に面白そうに描写しているのではなく、むしろ淡々としている。
ただその淡白なリズムが、作品全体の独特の雰囲気を生み出している。
皐月と奥方が親密になっていく様子や、じんわりと心に広がる結末もいい。
短編だけではなくぜひ長編も読んで見たいと思う作家だ。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ほのぼのした優しい空気の流れる和製ファンタジー。むかしむかし妖怪と人間が共に暮らしていた時代、ある村のはずれに、馬の首で眠ることで知られる少女の姿の妖鬼が住んでいました。村人は彼女に依頼や相談事を持ち込むこともしばしばで。という感じの話。民話のようなお伽話のような淡々としつつも懐かしい雰囲気にひたり、ゆったりとした気分で物語を楽しめました。
続巻もあるようなので読みます。
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妖鬼の皐月と様々な人や妖怪との不思議な触れ合いを描く日本ホラー小説大賞受賞作を収録した連作短編。
すごくとぼけた味わいのある短編集です。ホラー小説大賞の受賞作ですが、怖さはなく皐月と人は普通に会話しています。
話をするだけでなく皐月は色々な頼みごとをされます。表題作「生き屏風」では霊が憑りついた屏風の話し相手、「狐妖の宴」では女の子に頼まれ惚れ薬を作るため一緒にヤモリを探します。
こうして読んでいると日本昔話を読んでいるよう。登場人物たちみんなほのぼのしていて、肩ひじ張らず穏やかな気持ちで読むことができました。
個人的に印象的だったのが「猫雪」の冒頭。皐月の先輩(?)の妖怪がある男に「何になりたい?」と問いかけると男は「雪になりたい」と答えるのですが、
ここで雪という答えを持ってくるのがとてもセンスがあるなあ、と思いました。確かに雪のようにひらひらと落ちて、そして地面に落ちてそっと溶けゆく、ってなんだかロマンチックですもんね。
雰囲気の非常にいい作品だったので皐月の出てくる次巻以降も読んでみたいなあ、と思いました。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞「生き屏風」
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2015年17冊目は先月まとめ買いした初読みの作家、田辺青蛙。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作含む、三編の連作短編にして、三部作の始まり。
あらすじ:「生き屏風」
県境で一人暮らす妖鬼、皐月。彼女の所へ、造り酒屋の奥さんの霊の話相手になって欲しいという依頼が持ち込まれる。
「猫雪」
若くして隠遁生活 を送る次郎。皐月の先代の県境守りである猫先生と出会い、変化(へんげ)の術で雪となる体験をする。約1年後、次郎は再び猫先生の術で雪となることを望むのだった。
「狐妖の宴」
惚れ薬を作って欲しいと皐月の所へ依頼がある。しかし、皐月はその調合を知らない。思い当たるのは、里の外れに住む狐妖であった。
本書解説、東雅夫氏の「癒しのホラー」とは言い得て妙。一編目の冒頭の皐月の眠り方こそグロテスク(その割に筆致が軽く感じる)ではある。しかし、全体的には、鬼や妖(あやかし)と人とが共生する、日本昔話のような感覚。恒川光太郎とは少々ベクトルが異なる、和風ファンタジーかな?!
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県境で里を守る妖鬼の皐月と、そのまわりの妖や人との関わりを描いた、耽美で静かな物語。
連作短編のような3つのお話。
妖や霊などホラーの要素はあるけれど、怖さは一切なく、どちらかというとやさしいお話。すこし、主人公の皐月がうすい気がした。シリーズを重ねればもっと皐月も魅力的になるかしら。
ふたつめの「猫雪」がよかった。
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夏の角川ホラー消化月間。相変わらずのホラー要素無し。速攻で読んだ事自体を忘れかけていた。
風来坊の美少女鬼と、その周辺の一癖二癖ある妖の昔語りを中心として、純文学風に機微を描く。
「美少女鬼」てのに感情移入できなければ、最初から最後までなんにも面白くないという典型作品で、すんません、全くダメでした。話の内容は、芥川系の純文学風なところがあり、また、屏風に乗り移った屋敷の奥さんや、何になりたいかと言われて「雪」と答える粋というのは、落語調で悪くはない設定だと思う。
…惚れ薬はまったくもって面白くなかったんだけど。
話を戻して、昔風純文学風にしろ、落語調にしろ、この本に決定的に欠けているのは、文体の統一感である。妖の上下関係はあろうが、「○○ではありませんか」と急に現代風丁寧語が混ざってくる違和感のせいで、これっぽっちも作品の中に入れない。
また、その他の情景描写も、中学生の作文のように、ダラダラとあれがこうして、これがこうしてとマス目を埋めたくて仕方がなかったの?と問いたいレベルのものである。
作者は何かを書こうと模索しているんだろうけど、読み手にはなんにも響かなかった。響く人がいるとすると、「皐月」という鬼を、脳内で美少女に仕立ててアニメキャラにでも想像できた人だろう。想像するには情景描写が足りなさすぎるのだが。
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村はずれで暮らす妖鬼の皐月。彼女が依頼を受け、亡くなった奥方の憑いた屏風の相手をする表題作をはじめとした連作3編。これは表題作が日本ホラー小説大賞短編賞受賞作ということからか、角川ホラー文庫から出ているが、ホラーというよりは人と妖との優しい日々を描いたファンタジーに近いのではないかと思う。どの話もそれぞれ好きだが、一番インパクトがあったのは「馬の首で寝る」という状況が絵で浮かんだ部分かもしれない。妖猫に雪に変えてもらいひらひらと宙を舞い、さっと溶ける…。音のない世界が浮かんでちょっと泣きたくなった。
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ホラーというより、しみじみした寓話だった。しかし、にゃんこ先生ってどこにでも出てくるのな。ビジュアルが頭に浮かぶ作品だし、アニメ化したらいいんじゃないだろか。