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代表作「或る『小倉日記』伝」および処女作「西郷札」を収める。
暗くて、救いようのないストーリーは、これこそ松本清張の短編。元気のない人が読めば、ますます元気が失われること間違いない。が、その希望のなさがクセになる作家だ。
唯一、希望を持たせそうなのは「火の記憶」か。
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清張というと個人的には極めて日本的な情念に満ちた世界を描く人、というイメージなのだけど、そのイメージ通りの短編が載った本だった。それにしても「啾々吟」は他人ごとではなく、読んでいて悶えた。
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この短編集の収録作品は、
・西郷札
・くるま宿
・或る「小倉日記」伝(1952年)
・火の記憶
・啾々吟
・戦国権謀
・白梅の香
・情死傍観
この中では、芥川賞受賞作の「或る「小倉日記」伝」と「啾々吟」が印象に残る。
「或る「小倉日記」伝」は、明治42年生まれの田上耕作が不自由な身体ながら、母親の協力のもと、行方不明というか、そもそも存在するか否かも不明な、鴎外の小倉日記を捜し続けるという展開で、最後は・・・。
●2023年9月17日、追記。
「或る「小倉日記」伝」をウィキペディアで見ると、次のように書かれています。
---引用開始
『或る「小倉日記」伝』(あるこくらにっきでん)は、松本清張の短編小説。『三田文学』1952年9月号に発表、翌年に第28回芥川賞を受賞した。
福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)在住であった松本清張が、地元を舞台に、森鷗外が軍医として小倉に赴任していた3年間の生活を記録することに生涯を捧げた人物を主人公として描いた短編小説である。
それまで朝日新聞西部本社に勤務しながら執筆活動を行っていた清張が、上京後小説家に専念するきっかけとなった作品。
---引用終了
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西郷札、、、西南戦争の際に薩軍が発行した軍票をもとに一攫千金を夢見た男。しかし、そこには罠が。
・くるま宿、、、明治初頭、節操を重んじ世を捨てて今は一介の車夫に身を落としているもと武士の正体が実は。これも明治維新がうみだした悲劇
・或る「小倉日記」伝、、、芥川賞受賞。当時の風潮でしょうけど、障がい持ちの青年をかなり貶めているので、いまの感覚だとむしろ発禁でしょう。最後のオチが悲しくもあり純粋で美しくもある。
・火の記憶、、、モデルの場所は福岡県民ならぴんとくるボタ山のあった地域。悪く言えば、ミイラ取りがミイラになったというオチなのだが、男女の妙も感じさせる、私は好きな一品。
・啾々吟、、、能力技量は高いのに、溶け込むEQが低くて、どこにいっても疎んじられる男の不幸を描いた
・戦国権謀、、、謙虚な本多正信と、つい欲を出してしまった本多正純の話。日本人の教訓話によく使われるエピ。
・白梅の香、、、田舎者が江戸にやってきて、やんごとなき女性に溺れるも、残り香でその女性の夫にばれてしまうという話。うまい感じにまとめてると思うが、著者本人はディテールが下手と気に入ってない様子。
・情死傍観、、、心中をたくさん止めてきた阿蘇の山守の語り。みかけの事実と真実には奇妙にズレがありがちという人間観察が上手い著者らしい切り口