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このところの出版業界ではハードカバー本の低価格化が進んでいるようだが、この『百年小説』は、その逆を行く6,930円という豪華本である。函つき上製で表表紙から裏表紙までの厚みが、約7cmもあり、51人の文学者の名短編が収録されている。
私自身、本好きとは云いながら、読んだことのないものが殆どで、新鮮さを感じながら読んでいる。
しかし、読み終わるのはいつになることか。
これを近所の書店で見かけた時は、買おうかどうしようか本当に迷った。価格も価格なら、大きさも大きさだ。最初は見なかったことにして、書店を後にしたのだが、その後新聞などで書評を見るにつれ、もう気になって気になって仕方がない状態になってしまった。あの、各メディアの書評ってヤツは曲者だね。いつも(騙されないぞ!)と気を引き締めてはいるが、自分が気になっている本の書評を見ると、つい買いたくなるもんね。しかも、この『百年小説』、初版を買うと『百年小説の愉しみ』という限定小冊子が付くので、ますます急いで買いたくなってしまうのだ。
結局、日をおかず書店に走り、めでたく初版購入と相成ったわけで。2kgの重量を歩いて持って帰り、ヘトヘトになったわけで。
でも購入してよかったと思うのは、内容の点から見て良書であることは一目瞭然だが、装丁や文字組みまでもが美しい点である。
函には淡い色彩のイラストが描かれていて、ノスタルジックな雰囲気だし、中の本は臙脂色のクロス張りに金色の花切れ、ライトブルーとブラウンのスピン(紐しおり)も、本の雰囲気を壊さない配色になっていて心憎い。タイトルはオーロラ箔で押されていて、決して派手ではないが、高級感が漂う。せっかく良い内容なのに文字組みが駄目で残念な本もたまにあるのだが、この『百年小説』の文字組みはスッキリしていて上品だ。教会の牧師先生が使っていた聖書みたいなアンティーク感があり、それこそ、アンティーク家具でもあったら、そこに置いておくだけで絵になる感じ。書棚に並べておくだけでも満足感が得られる本って、ホント、久々に出逢った気がする。
【平成二十二年八月二十四日 追記】
去年の七月から、ポプラ社刊行の『百年小説』という本を読んでまいりました。これは、明治・大正・昭和を代表する文豪の短篇が、五十一篇も収録された分厚い本で、良く知られた作品もあれば、代表作の影にかすんで、今ではさほど顧みられなくなった作品もあり、それぞれの文豪の横顔を知るのに、大変有益な書籍であります。
この『百年小説』を購入した当初は、ただのんびりと読んで行ければいいや、と漠然と考えていたのでありますが、こんなにも多くの好短篇を、順繰りに読み捨てていくだけでは勿体ないと思い、その時その時の感想を残していこうと思い立つに到りました。その際、手帖などの紙媒体に書き付けていくことも頭にのぼったわけではありますが、一念発起して、当世の大主流であるところの「ブログ」を用いて、自分の脳髄にうつりゆくよしなしごとを記録しておくことにした次第であります。「世間もすなる、ブログといふものを、吾(われ)もしてみむとて、するなり」といったところでありましょうか。
それまで、インターネットで自分の考えたことを公開するということには、まるで無縁の人間でありました。パソコン自体は手元にあったものの、蔵書管理のみに使っているような状態で、およそ我が家のパソコンには、コンピューターとしての仕事は殆どさせていないと云っていいくらいであったわけです。しかし、このインターネットを通じて皆様に御覧頂いているという状況が功を奏し、この度、一年ちょっとという時間こそかかりましたが、重さ約二㎏、厚さ約七㎝の大きな本を読み終えることが出来、かつまた、まがりなりにも全篇の感想を書くことが出来たのであります。
これが、一人でこっそりと手帖に書き綴っていくだけの孤独な作業であったなら、おそらくは『百年小説』を読み終えることも、文章を書き続けることも出来なかったろうと思っています。芸能人がいつまでも華やかでいられるように、年下の夫君を持つ女性がいつまでも若々しいように(まぁ、このたとえは、いま一つパッとしませんが) 相手があるからこそ、自分が触発されて頑張れるという状況に大いに助けられたように感じます。
こうして、一つの事をやり遂げられたのも、訪問してくださる方々、コメントを寄せてくださる方々がいらっしゃったお蔭であります。心より御礼申し上げます。
ブログを始めたばかりの頃は、読む人もそんなにいらっしゃらないだろうと単純に決めてかかっていたところもあり、私の書く文章は本当に、自分の為の備忘録といいますか、あとで読み返した時に自分にさえ分かればよいという程度のごく短い、つっけんどんなものでありました。しかしながら、訪問してくださる方が少しずつ多くなるにつれて、私の文章は少しく対外的にもなり、自分の考えや感じた事柄を、より詳しく、可能な限り丁寧に書いていくようになった気がします。様々なコメントを通じて、自分一人の頭では気付けなかったことや異なる観点からのご意見、知識というものにも恵まれました。このことに関しても大変有り難い気持ちでいっぱいです。
私は最近とみに実感するのであります。続けることこそ、大事なのだと。
どんな大家と呼ばれる人物も、その道の権威と呼ばれる人物も、脇目もふらずに一事をこつこつと続けてきたからこそ、まとまった成果や実績が残せるのであります。しかし、ごく当たり前のことではありながら、今までの私には、この一事にひたむきになるという経験が乏しかったのであります。キャリアを積み始めたにもかかわらず、別のことに興味が出てしまったがゆえに、今までの仕事を放り出したり、急に嫌気がさしてしまったり。好奇心旺盛といえば聞こえは良いが、それはとどのつまり、長続きしないということの裏返しでもあったわけなのです。私が飽きもせず続けてきたことといえば、読書くらいしかないのです。その読書すら、人に誇れるほど多読家でもなければ精読家でもないのでありますが…。
私は大家にも権威にもなれない凡人ではあるけれども、今は、本を読むことが好きという「一事」を一生かけて「大事」にしていこうと思っているのであります。何をするにも他人の三倍ほども時間はかかるが、これからもじっくり読み書きだけは続けていきた��。何年かかるか分からないが、せめて自分の持っている全ての本の感想なり書評くらいは書き果(おお)せたいものだ、と、心を新たにしているのであります。
この拙いブログを読んでくださる皆様、いつも有難うございます。
今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。
ブログ『フィロビブロン』では、『百年小説』収録作品を順に読みながら、各短篇についての感想を随時アップしています。
興味のある方は、そちらも是非御覧下さい。
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読み切ったあとの達成感が凄いです。小説、活字が好きなら大満足だと思います。これは借りた本なのでもっていませんが。
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1. 杯 / 森鷗外著(2012.6.27)
2. 夢十夜 / 夏目漱石著 (2012.7.4)
3. 一口剣 / 幸田露伴著
4. 拈華微笑 / 尾崎紅葉著
5. 吾家の富 / 徳富蘆花著
6. 武蔵野 / 国木田独歩著(2012.7.13)
7. 風呂桶 / 徳田秋声著 (2012.7.18)
8. 伸び支度 / 島崎藤村著 (2012.7.20)
9. わかれ道 / 樋口一葉著 (2012.7.23)
10. 修禅寺物語 / 岡本綺堂著 (2012.7.24)
11. 猫八 / 岩野泡鳴著
12. 外科室 / 泉鏡花著 (2012.7.25)
13. 青草 / 近松秋江著
14. 小さき者へ / 有島武郎著 (2012.7.31)
15. 死者生者 / 正宗白鳥著
16. 勲章 / 永井荷風著
17. 真鶴 / 志賀直哉著
18. 恭三の父 / 加能作次郎著
19. 久米仙人 / 武者小路実篤著
20. 妹の死 / 中勘助著
21. 刺青 / 谷崎潤一郎著
22. 椿 / 里見弴著
23. 鮨 / 岡本かの子著 (2012.8.2)
24. サラサーテの盤 / 内田百間著
25. 生涯の垣根 / 室生犀星著
26. 虎 / 久米正雄著
27. お富の貞操 / 芥川龍之介著 (2012.8.6)
28. 窓展く / 佐藤春夫著
29. 雲雀 / 藤森成吉著
30. 山の幸 / 葉山嘉樹著
31. 押絵と旅する男 / 江戸川乱歩著
32. アリア人の孤独 / 松永延造著(2012.8.7)
33. ゼーロン / 牧野信一著(2012.8.8)
34. へんろう宿 / 井伏鱒二著
35. 機械 / 横光利一著 (2012.10.24)
36. 渦巻ける烏の群 / 黒島伝治著(2012.10.29)
37. 焼跡のイエス / 石川淳著
38. バッタと鈴虫 / 川端康成著
39. 暢気眼鏡 / 尾崎一雄著
40. 秋風 / 中山義秀著
41. 告別 / 由起しげ子著
42. 闇の絵巻 / 梶井基次郎著
43. 散歩者 / 上林暁著
44. 幸福の彼方 / 林芙美子著
45. うけとり / 木山捷平著
46. 小美術館で / 永井龍男著
47. 聖家族 / 堀辰雄著 (12.11.1)
48. 心願の国 / 原民喜著 (12.11.2)
49. 波子 / 坂口安吾著 (12.11.7)
50. 山月記 / 中島敦著 (2012.9.18)
51. 富嶽百景 / 太宰治著(2012.11.9)
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出たときに購入し、厚さにびびり、膝に跡がつき、結局いまでは、気になった作家ができると探して読むという辞書のような存在に……でもあのとき買って良かったです
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA88287957
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林芙美子の幸福の彼方(1940)を検索したら、この本が出てきた。厚さにびっくり。
コンセプトはとても良いのだけれど、誤字が気になった。
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いやぁよく読んだと思うよ~杯(森鴎外)夢十夜(夏目漱石)一口剣(幸田露伴)拈華微笑(尾崎紅葉)吾が家野の富(徳冨蘆花)武蔵野(国木田独歩)風呂桶(徳田秋声)伸び支度(島崎藤村)わかれ道(樋口一葉)修禅寺物語(岡本綺堂)猫八(岩野泡鳴)外科室(泉鏡花)青草(近松秋江)小さき者へ(有島武郎)死者生者(正宗白鳥)勲章(永井荷風)真鶴(志賀直哉)恭三の父(加能作次郎)久米仙人(武者小路実篤)妹の死(中勘助)刺青(谷崎潤一郎)椿(里見弴)鮨(岡本かの子)サラサーテの盤(内田百閒)生涯の角ね(室生犀星)虎(久米正雄)お富の貞操(芥川龍之介)窓展く(佐藤春夫)雲雀(藤森嘉樹)押し絵と旅する男(江戸川乱歩)アリア人の孤独(松永延造)ゼーロン(牧野信二)へんろう宿(井伏鱒二)機械(横光利一)渦巻ける烏の群(黒島伝治)焼跡のイエス(石川淳)バッタと鈴虫(川端康成)暢気眼鏡(尾崎一雄)秋風(中山義秀)告別(由起しげ子)闇の絵巻(梶井基次郎)散歩者(上林暁)幸福の行方(林芙美子)うけとり(木山捷平)聖家族(堀辰雄)心願の国(原民喜)波子(坂口安吾)山月記(中島敦)富嶽百景(太宰治)~多分,この一冊を読むのは後にも先にも私だけでしょう。ま,蔵書の場合は殆どがそうだろうけど,これは図書館の本ですが,重くて・厚くて。よく見たら出版社(ポプラ社)の寄贈本。著作権が切れているのかなぁ。この時代の方々は自分のことを小説として書いていて,そりゃ気疲れするだろうなぁ・・と考えさせられました。自殺者の多いこと…