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新聞の危機が言われているが、新聞そのものが危ないのではなく、新聞業界が長年築いてきたビジネスモデルや記者クラブ制度に代表される取材スタイルが危機に瀕してるということだと思う。その点では自分も同感だ。
この本では地方に焦点を当てて、新聞再生の可能性を探っている。
市民ジャーナリズムとして地域密着を目指そうとする旧鹿児島新報。コミュニティサイトに力を入れる事で活路を見いだしている神奈川新聞。地域に密着した新聞を立ち上げたものの業界の壁に跳ね返され廃刊に追い込まれた滋賀。この3つの事例から新聞を再生させるために何が必要か、今後の新聞及びメディアに求められるものが何かを検証している。
新聞が抱える問題というと大手新聞社に目が行ってしまいがちだが、地方新聞の存在も必要不可欠だというのをこの本を通じて改めて認識させられると思う。
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周縁で格闘するジャーナリストたちは、「大マスコミ」から無視され、踏みつけられ、蹴散らされても、果敢に立ちあがり挑戦しつづける。そうした営為のなかに、「新聞」なるものの原初形態を見いだし、新聞再生のカギを見つけられると信じる。
「県紙」とは極論すれば、戦時下の一県一紙政策によって構築された戦争遂行のための遺制である。
評論家の多くは、産業としての新聞・業界としての新聞しか視野にいれておらず…
周縁 はもっとも変化が起こりやすい場であり、失敗例も成功例もふくめて、未来像が見える場なのだ。
パブリックジャーナリズム
しかし、伝統的客観主義を絶対視すれば、記者は権力者と対峙するエリートとなり、普通の市民ではなくなる。
そこからすれば、PJは地方紙記者による社会運動であり、一歩間違えば読者をあらぬ方向に扇動しかねない危うさがともなう。
周縁 のジャーナリストほどみずからの存在理由や正当性を問われる機械に「恵まれ」やすい。
番犬でいるよりも、よき隣人であること。
彼ら彼女らは自分たちが社会から必要とされるかどうかの瀬戸際でもがき苦しんでいたのだ。
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学環報道班のお勉強のために。学環の畑仲先生の著作。
新聞の業界としての危機については多くの本がある。
産業論だと全国紙の話題、業界環境の問題について、になりがちだが、この本は地方紙と言う新聞の周縁部にその再生の可能性を見ている。
3つの地方紙の取り組み事例を通して、上から目線のジャーナリズムではなく、読者との交流、読者をつなぐ空間の創出が「新聞の再生」のカギだと説いている。
これと「新聞社」の2冊を読んで思ったのは、「地方紙と通信社があれば、全国紙いらないんじゃない?」ってこと。全国紙ならでは、ってなんだろう?(←連載とかはそうらしい。)
もう何冊か読んでみないとインプットが足りない気がした。
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[ 内容 ]
「新聞の危機」が唱えられて久しい。
しかし巷で議論されているそれは、たんに「新聞業界の危機」に過ぎないのではないか?
大手紙の視点からは見過ごされてきた周縁的な場所、そこにこそ、「新聞なるもの」の本質と可能性が見いだされるのではないか?
コミュニティからの挑戦と挫折、そして再生。
地方紙の試みから新聞の可能性を探る。
[ 目次 ]
序章 新聞とはなにか(『新聞社』のセンセーション 新聞危機説、じつは「業界」危機説 新聞という言葉のルーツ 新聞と新聞紙 社会の意識、社会の現象 周縁から見つめる〈新聞〉なるもの)
第1章 新聞という「場」を再生させる―旧鹿児島新報社OBたちの闘い(廃刊の光景
最後の紙面 「位一県一紙」に逆戻り 発言する市民 地域密着 「だれでも記者」 「みんなでネット鹿児島」って? 当事者の発言、そしてパブリック非営利組織による復刊の可能性 時間というもうひとつの敵)
第2章 コミュニティに回路を開く―神奈川新聞社カナロコ編集部(首都圏の地方紙 朝日新聞社のグループ企業 ニュースになった「カナロコ」 新聞とブログ 言論空間の広がり 周縁だからこそ自問 ふつうの暮らし、ふつうの感覚 ブログ「炎上」を肥やしに カナロコ効果と課題 ニュースをアグリゲートする新規事業)
第3章 “新聞”を創るということ―『みんなの滋賀新聞』の挑戦と挫折(四半世紀以上も地元新聞を持たない県民 新聞紙を必要とした地元経済界 徹底したマーケティングリサーチ 「ジャーナリズム」よりも社会基盤 新しい新聞のかたち 創刊前のいらだち 厚かった「業界」の壁 新聞の原点はどこに)
第4章 新聞を救う(学問と現場をつなぐ知 産業論が盛んな理由 困難に直面する業界・産業 〈新聞〉の淵源 近代新聞の正統性を示す「公共圏」 「新聞」再生は「社会空間」の再生 パブリックジャーナリズムという社会運動 危機的な状況のなかで 鹿児島、神奈川、滋賀の事例を再考する イデオロギーと人間観 再生の芽、いたるところに 熟議の資源づくり)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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2008年の出版だが、今読んでも内容に古さは感じない。大手からではなく周辺=地方からの新聞再生の可能性を見つめる、著者の魂を感じる良い本だ。