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傑作。主人公が29歳の「みっともない」オールドミスで、心臓病といったら、ハッピーエンドになりようがないと思うが、読後感は非常に爽快である。主人公ヴァランシーに襲いかかってくる精神的圧殺は、19世紀英国上流階級社会(舞台はカナダだけど)の恐ろしさを思い知る。こういった社会的圧力は東洋も西洋もないんだなと思う。だが、死を覚悟した主人公がほんとうに生きるために、行動を起こしてからは、これらの精神的圧殺をはねのけ、ついに理想の夫を見つけていく所は痛快にして美しい。ヴァランシーとバーニーの間の関係は、一種の夫婦の理想なんじゃないだろうか。人間の「再生」というテーマでは、ゲーテの『ファウスト』とか、黒澤明の『生きる』などと言った作品が思い出されるが、注目すべきは、モンゴメリーが哲学や政治の文脈ではなく、「生活」の中で、この人間の再生を描いていることだ。表面的にはロマンス小説のように読めないこともないが、文学的テーマも深いものがある。何かにしがらみを感じている人は読めば、得るところがあるであろう。読み出したら止まらない、ストーリーテリングや自然描写は魅力的、美しい自然の中で紡がれる静かな愛情の描写にも心を打たれる。惹句には「すべての夢見る女性に」と書いてあるが、男性が読んでも十分楽しめた。
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モンゴメリ作品が好きで手に取った。
終わりかけた女が輝きます。
自然が美しい描写で描かれていて、目に浮かぶよう。
個性的な登場人物も楽しい。
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貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた…。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!?ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。
さすが、モンゴメリ。自然描写の美しさは言うに及ばず、登場人物たちの性格や心の動き、そういったものを見事な筆致で描いていて読ませる、引き込まれる。女性が一人で生きることができなかった時代の、家族、親戚、コミュニティ、そういったものに縛られて自由のないヒロインが病気をきっかけに自分を生きるようになる様子がじんと伝わってくる。そしてヒーローとの結婚。心を解きはなったヒロインが語る自然の美しさは本当にモンゴメリここにありという感じ。嫌な親戚もちょうどいいアクセントになっていて、最後にはヒロインと一緒にクスリと笑える。
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モンゴメリさが十分に出た作品でした。モンゴメリは村岡花子さんの訳した本しか読まなかったのですが、この方の翻訳もいいと思います。
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主人公はブスで痩せっぽちの上、彼氏のいたことがない29歳女性。
人からどうでもいい存在と思われて、必要とされたことがなかったのに
余命宣告をきっかけに、周りの人に従う日々に別れを告げます。
アンシリーズと同様に、ロマンティックな自然描写が素晴らしいです。
一節追う毎に想像力が描き立てられて、一気に読めるお話でした。
最初は延々と憎たらしい演出が続くので、疲れてしまいかねませんが
中盤から怒涛の勢いで面白くなります。
主人公の考えに共感を覚える人は、はまりますね。
読後感は爽やかなので、スッキリしたい人におすすめです。
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「赤毛のアン」のモンゴメリが
大人の女性たちのために
こんなラブストーリーを書いていたとは知りませんでした。
恋人もいないさびしい独身女性の主人公が
突然の余命宣告から、
自分らしい悔いのない人生を送ろうと決意し、
周囲も驚くような行動を次々と起こしていく様子が
非常に痛快。
初めて自分の意思で人生を歩み、
人を愛することを知った彼女が
どんどん美しく、魅力的になっていきます。
ラストは少々ハッピーエンドに過ぎた気がしたのですが・・・
(そんなにきれいにまとめなくても、みたいな)
でも周到に張られた伏線も効いており
最後まではらはらしながら読みました。
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実はアンシリーズを読んだことがない私…。
29歳、すべての人におびえていたオールド・ミス、ヴァランシーが主人公。
モンゴメリの作品は初めて読んだけどよかった!
恋愛…がメインの小説になるのかな?最初は主人公が暗くてだらだら読んでしまったけど余命を宣告されて変わったあたりからは読んでて楽しかった。
自然の描写がすごく綺麗だしヴァランシーとバーニィの二人がなんかもう…幸せそうでうらやましい。
なぜアンを子どものうちに読まなかったのか…アンも読まなければ!
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良かったです!
何といってもこの本は自然の風景描写がすごいです!何というか本当にきらきらと目の前に思い描けるんですよね・・。
主人公のヴァランシーと、その夫になるバーニィ・スネイスが暮らす森の奥地の描写が素晴らしいです。
お話の方も、冒頭では高圧的で人の気持ちなどお構いナシな母親や親戚に押さえ付けられ、かなり陰気で寂しく暮らしているヴァランシー(29歳でオールドミスと呼ばれています)ですが、ひょんなことから自分が余命1年足らずなことを知り、「このままじゃ死ねない!」と思い一念発起して、もとの自分を取り戻していきます。
この一念発起した後のヴァランシーと母親や親戚たちのやり取りが可笑しいです。
「そうだそうだ!言ってやれ!」ってな感じです。
そしてその後、余命短い学校友達の世話を住み込みでしたり、「悪漢」というもっぱらの噂のバーニィ・スネイスに自分から結婚を申し込んで、結婚してしまったり・・。
怒涛のような1年を過ごします。
その後色々あり、最終的には素敵なハッピーエンドとなります。
モンゴメリの「赤毛のアン」とはまた全く違った趣ですが、こちらもとても魅力的な本だと思います。
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赤毛のアンのような、コミカルさが少々物足りなく、モンゴメリ特有の辛らつさが、ちょっと前に出すぎた感がある。ロマンス小説。
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『赤毛のアン』で有名なモンゴメリーの作品。
自然の描写が美しい。
前半の、延々と続く親戚筋の愚痴が「まだ続くのか!」と思いつつも退屈しないのは何故だろう?
後半、やや成り行きが読める部分もありましたが、外国文学にあこがれた少女時代の気分を思い出しました。
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29歳独身女のヴァランシー。高圧的な母親と親戚達の怒りを買わぬよう、ただ大人しく生きてきた彼女は、ある日医者から余命1年と宣告されます。未来を失った彼女は、この世に恐れるものが無くなり、自分の為だけに生きることを決意します。自分を必要としている者、自分が愛する者を求めて本当の自分をさらけ出し、彼女の世界はすっかり変わります。
・・・とっても痛快な気持ちになる、そんなお話です。
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ヴァランシー・スターリングは、29歳のオールド・ミス。
彼女は、実家で一族の者たちを顔色を窺うように生きているような女性だった。
具合の悪かった心臓を診てもらいに医者に会いに行ったのだが、
なんとその時は、医者の息子が事故に遭ったと連絡があったところ。
彼はすっかり動転してしまっていて、ヴァランシーはちゃんと診てもらえない。
医者にすらきちんと相手にされないのだと落ち込むヴァランシーだったが、
その後衝撃の手紙が彼女のところに届く。
そこには、狭心症のために余命1年と書かれていたのだ。
だが、彼女は、ここで大きく変わるのだ。
死を恐れていないといっても、それを無視するわけにはいかない。
ヴァランシーは、死を恨んでいた。
生きてきたという実感もないのに、もう死ななくてはならないとは、いかにも不公平だ。
暗闇の時間がすぎていくにつれ、彼女の心の中には反抗の炎が燃えあがってきた。
それは、彼女に未来がないからではなく、過去がなかったからだ。
(中略)
あたしは、いつも、ぱっとしない、取るに足らない者だった。
そう言えば、こんなことを何かで読んだことがあるわ。
女には、それで一生幸福だと感じる一時間がある、
それは、見つけようと思えば見つけられるものだ。
でも、あたしには見つけられなかった。
もう、決して見つけられないんだわ。
ああ、もしその一時間があたしのものになったら、いつ死んでもいい。
この燃え上がるような気持ちに強く強く共感する。
私は、決して、抑えつけられて生きてきたわけではないのだが、
生きたい、生きたいと思ってしまうのだ。
この思いは何なのだろう。
彼女は、家を出て、「がなりやアベル」と呼ばれる老人の家に住み込み、
アベルの娘で、胸の病で余命いくばくもなく、また、過去の心の傷により、
ほぼ人づきあいをしなくなっていたシシィの看病をするのだ。
彼女自身も死を意識しながら、同じく死に臨もうとするシシィを看病する。
ふたりは心を開いていき、そして、ヴァランシーはシシィを看取る。
彼女が幸せそうに死んでいく姿をヴァランシーは「なんと美しい!」と思う。
実家に住んでいる頃から、なぜか気になる存在だったバーニイ・スネイスに、
彼女は病のことを打ち明け、自ら結婚を申し込む。
なぜなら、彼女は気づいてしまったから。
今や、ヴァランシーは自分がバーニイを愛していることをはっきりと知った。
きのうまでは、彼女は自分だけのものだった。だが、今はもうこの男のものだ。
しかし、彼が何をしたわけでもない―何を言ったわけでもない。
彼女を女と見てくれもしない。だが、それはどうでもいいのだ。
彼女は無条件に彼を愛しているのだ。彼女の中のものすべてを彼に捧げるのだ。
もはや、この愛をおさえつけたり、否定したりすまい。
ヴァラ���シーは自分があまりにも完全に彼のものだという思いがして、
彼以外のことを考えること―彼のことを考えずして物事を考えること―すら
不可能な気がしていた。
もし、自分の命があと1年しかないのだとしたら、いったい自分は何をするだろう。
いや、自分の命が1年しかないとして後悔しない生き方を自分は今しているの?
そう考えずにはいられない。
ヴァランシーに深く共感する点は、さらに2つある。
ひとつは、タイトルにもある「青い城」の存在だ。
現実がどんなに苦しくても、誰しも、自分だけの世界を持っている。
たとえ、呼び名は違っても。
そして、心の支えとして、本があったこと。
彼女は、ジョン・フォスターの本の影響を受け、
その本の言葉が、決断を促したり、
過去のしがらみに戻りそうになってしまったときに気づかせてくれたりする。
「世の中のほとんどすべての悪は、その根源に、
だれかが何かを恐れているという事実がある」や
「もしあなたがある人と、三十分間口をきかずに座っていられて、
その上なんの気まずさもないのなら、あなた方二人は友達になれる」など。
作中作家であるジョン・フォスターは、印象的な言葉を残している。
自分にとってちょっと意外だったのは、
本書の語り口がかなりの毒舌で辛口だったことだろうか。
私は毒の強いものはダメだと思っていたのだがそうでもなかったらしい。
身近なある友人に似ているこの語り口をにやりとしながら読了した次第だ。
その友人とモンゴメリはどこか似ているのかもしれないと思ったのだった。
自分の心の支えとしての自分だけの世界と本と本読み本語りを共にできる友だちの存在。
リアルはいろいろなことがあったし、これからもいろいろなことがある人生だけれども、
本当に必要なものはちゃんと求めてきたし、ここにあるんだと感謝したいと思った。
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紛うことなく「ハーレクインロマンス!」って感じ。
ヒロインが親戚中から抑圧されているのは時代的なものなのかなと思いつつ、29歳(今だったら35歳ぐらい?)にしては精神的に幼いような・・・
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≪内容覚書≫
29歳の独身女性、ヴァランシー。
一族の中で、言いたいことも言えず、ただただ我慢の毎日。
だが、ある日、心臓病と診断される。
悔いない人生を送ろう。
ヴァランシーの人生が、始った。
≪感想≫
やっぱり好きだなー、モンゴメリ・・・!と思わされた作品。
ヴァランシーを取り巻く一族は、少々悪意を持って描かれすぎている気はするが、
確かにこういう人いるよなー、とニヤリとしてしまう。
それにしても、オールドミスになることへの劣等感がすさまじい。
この点には、時代を感じる。
現在、ヴァランシーとほぼ同年代ということもあり、
現在との差を意識しながら興味深く読んだ。
モンゴメリの作品は、成長というか変身が鮮やかに描かれるのが、
心惹かれる点かもしれない。
女性なら、きっと誰もが憧れるサクセスストーリー。
生きたいように、生き生きと生きてやろうじゃないかと思わせてくれた。
個人的に久々に、爽快な読後感で、★5!