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芥川賞作品。
著者自身工場で働いている契約社員だそうで。
賞を取ってもその環境は変えたくない、という言葉が印象的で、
なんとなくで生きている人ではないな、と感じた。
そして、この作品のテーマは明らかなようで明らかでない、と感じた。
すごく具体的な話を取り出して、とっても抽象的なことを伝えようと
している、というような。
そもそも小説ってそういうもんなんだと思うんだけど、
意外とその本質的な伝えたい何かが陳腐だったり定まってなかったり
するのが一般じゃないかと思う。
『ポトスライム〜』において、それは何なのか、と断定することは
難しいけれど、その何かはすごく安定していて芯が通っている気がするのだ。
つまり、明らかでない、というのは私の読解力や感性の問題で、
小説の問題でない、というか。
どの登場人物もはっきりしていて気持ちがいい。
今後の作品も期待。
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2009/03/19-20
文藝春秋3月号
借り物
ちょうどニュースで若者の貯蓄志向について取り上げていた。
重ね重ねへこましてくれる
慎太郎の評がよい
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津村記久子さんは「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞しました。
「週刊ブックレビュー」に特集ゲストとして出演されました。
番組では「ポトスライムの舟」と「アレグリアとは仕事はできない」についての紹介がありました。
津村さんは1978年大阪生まれで、就職氷河期に大学を出ています。
中江さんが「大阪のユーモアがあり、粘り強さが感じられる」と評していました。
津村さんが「分眠」生活を送っているという話は面白かったです。
仕事から19時に帰宅して、夕食後、21時から1時まで寝て、起きて2時から4時まで執筆するというものです。
1度寝ないと集中できないと言います。
この生活は憧れますが、早めに帰宅できないと不可能です。
19時に帰宅できたら幸せです。
私は疲れている時は早寝早起き型です。
図書館に予約して、「アレグリアとは仕事はできない」を読んだ後で、こちらを読みました。
この本には、「ポトスライムの舟」と「十二月の窓辺」が収められています。
「ボトムライスの舟」の舟とはピースボートのことだろうとマイミクさんのレビューに書かれていました。
私の住む町にもポスターがあり、106日間148万円とあります。
一度はやってみたいとは思いますが、不可能です。
ナガセの友人のそよ乃の「お金がない」というのとナガセの「お金がない」は次元が違います。
「ナガセは、ほとんど違う国の人間が話していることのようにそよ乃の話を」聞いていたというところは、特に30歳前後の世代に広がった「格差」を感じさせます。
ナガセは契約社員の本業の他、夜間や土曜日の仕事も掛け持ちしています。
本業の年収は163万円です。
ナガセが風邪でに行くと女医はナガセの方を見ずに診察します。
「若くてかわいくて女で医者だなんて、もう人生八割がた勝ったも同然なんだから、せめて視線ぐらいくれたっていいだろう」とナガセは思います。
奈良の東大寺や生駒など私も知っている関西の地名が良く出てきます。
お金のことが細かく書かれていますが、奈良と難波の間が往復1080円とかあると、関西の交通費は安いと感じました。
鹿児島本線は安いのですが、久大線や甘木鉄道は高いです。
私たちがあさくらから博多に出ると往復2000円かかります。
ナガセの家に転がり込んだりつ子がナガセのお下がりの服を着ているところ、幼稚園児の子どもが両親の不仲を理解しているところなどはもの悲しいです。
「十二月の窓辺」もツガワというナガセのような女性を主人公にした会社での話です。
女性の多い職場の内情はこんなものだろうかと思わせる内容です。
「やる気がないんなら辞めても良いわよ」
「あんたなんかよそじゃ絶対やっていけないでしょうね」
こんなことをストレートに上司からいわれたらたまらないです。
「あなたしかいない」と言われるのと対照的です。
2編とも面白く読みました。
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<内容>お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。
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読みやすくて引き込まれ、1時間くらいで読んでしまいました。主人公と同世代で派遣もやったことがある私。切実さをむなしさが伝わってきました
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不況の頃合いに芥川賞を受賞するには“らしい”作品。
年収163万円の29歳契約社員女性の日常を通して、ワーキングプアの実態を描き出す作品だが、不思議とサラっとしている雰囲気は好感が持てる。
近年『蟹工船』が再びベストセラーになっている中、この手の作品が時代に求められているのか。
主人公の状況を“不幸せである”と強調はしない作風は、等身大の女性の日常を丁寧に描き出しているわけだが、同時にこの状況を“当たり前”と思わせるところもある。
そこは、一種の時代の恐さかな…。
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文藝春秋で読んだから、正確には↑じゃないんだけどね。
第140回芥川賞受賞作。
池澤さんのおっしゃる通り、「しかしみんな。こんなに暗くていいのか?」って感じ。
作品から受ける暗さと、販促用POPに書かれてるコメントの明るさがいまいち噛み合わない、なぁ。
かといって蟹工船ほど暗いとも思えないし。うーん。
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読みやすい。1〜2時間で読めてしまった。爽やかなリズムのある文体。
最後がもっとロマンティックだったら良かったけどw 物質的価値観の世の中で、シビアではあるけど、
幸せのあり方を描いているような。ポトスライムとの掛け合いも、ナガセさんも凛としている。
163万円、という明確な数値も大事だよね。目的がやっぱり明確じゃないとね・・・。
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副業しないと生活できない工場の契約社員。
2月に読んだ時は、ふーんって感じだった。
でも3ヶ月経ち、5月になっても内定がもらえていない今。
私も彼女と同じ大卒。
他人事とは言い切れない。
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正直、読んでいて鬱になります。
キャラクターに感情移入が全く出来ませんでした。
ナガセがあれだけ金に執着しているのに、母親はきょいひょいとお金を使う姿にも納得がいきません。
ただ、すらすらとは読める作品だと思います。
最後の場面だけはよかったです。
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この前の芥川賞受賞作。
09年3月に読んだ本。
津村記久子の本は以前に、
ミュージック・ブレス・ユー!を読んだことがあります。
同じく脱力系でした。
この本にはポトスライムの舟と十二月の窓際という2つのお話が入っています。
2つのお話に共通して根底にあるのは、
社会?というか会社というものの圧倒的な強さ、その衝撃による余波。
ではないかと…。
これはあくまで私個人の、本当に個人的な思い込みですが。
ポトスライムの舟のことしか書きませんが、
主人公のナガセは一回仕事をリタイアしています。
フィルターを通して日常を見ているような、ぼぉっとした生き方。
そんなナガセが、ふと、世界一周旅行の費用163万円を貯めようと目的を設定してしまいます。単なるのりで。ぼぉっと。
お金を貯めようとするのに、思ってもない出費はかさみ、
友人とその娘は家に転がり込んで来るわ、
周りは波立つばかり。。
基本的に淡々としていて心が狭く、幼稚なナガセですが、
お参りに行ってみんなの願いが叶いますようにって思ってみたり、
不安定な中にも、温かい部分もあり…。
主人公の考えてることは自分で考えないといけないっていうか、
ずばっと書いてない。
帯に「つつましやかに生きている女性のささやかな縁によって揺れ動く心」って書いてあるけど、
本当に、
話の軸よりも
文章とか、表現とか
そういうものが魅力的だったように思います
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内容(「BOOK」データベースより)
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。
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表題作も良かったんですが、
同時収録の「十二月の窓辺」こっちも良かった!
主人公の気持ちがすごく重くて、
でも分かるわ〜って感情だった。
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内容(「BOOK」データベースより)
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。
芥川賞だー。あまりスミコと年の変わらない作家さん。文章は読みやすい。テーマもわりと卑近なのでさーと読めました。そして、ねー。。まー、思ってることも分からないでもない。お金とか。仕事とか。友達とか。人生とか。それらのげんなり感とか。ま、主人公は前向きになってましたがそのあたりはやっぱり小説ですよネ。ていうか、こんなことばっかり突き詰めて考えてる小説家って、スミコには無理だ…。。
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「元気そうな茎から分岐した若いポトスの茎が、葉の先の方だけをまだ親の茎にくっつけて「く」の字に折れ曲がっている様は、蝶の蛹に似ていた。」
第140回芥川賞受賞作品!ということで読んでみました。
感想は、「ふーーーん!」。
芥川賞の作品、そんなに一生懸命読んだことないのだけれど、どれも捉えどころが無いというのか、おぉすごい!という感動はさしてないのだけれど、どれも1行抜けてたり、1行多かったりしたらきっと選考に洩れたんじゃないかなと思える形になったものだと私は考える。
出てきた女性キャラを見ていて、私はどの人にもなる得るんじゃないかと思ってしまった。それぐらい、なんだかどこかにいそうなようなきもした。
もう1作「12月の窓辺」はなかなかツライ物が・・・というのも、あら、あの部署のことじゃない!?と思わざるを得ない内容だったので。
こういうのをパワハラっていうんじゃない、その過程で言われた人が自信を失っていく様が非常にリアリティがありすぎて、なんだか腹が立った。
両作とも最後に救いがあるのが良かったかな。
ちゃんとお話が終わってて、ちょっとだけホッとした。
【5/14読了・初読・大学図書館】