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著者頭良すぎです。
シャドー・バンキングのことが今回は勉強になった。
銀行は取り付け騒ぎが起こるから潰さないが、それが起こらないと思われていた金融市場で、今回それ(信用不安による流動性低下)が起きてしまった、ということ。取り付け、という視点で捉えたのは今回が初めてだったので、今回の金融危機に対する多面的な理解が深まった。
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クルーグマンは以前日本のバブル崩壊後の経済について調整インフレ論を打ち出した、当時日本の政治家の中にも調整インフレについて言及する人もいたが、実際は低金利、財政出動するのみで調整インフレは実施されていない。今回の著書でも日本のバブル崩壊について論じられているが、調整インフレが再び書かれている。今回のサブプライム問題からの大不況も日本を含めた過去の一連の不況の流れの中にあるとして解説されている。「問題は構造的なものではない、人々の思考を混乱させる時代遅れの教養。」と結ばれている。
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資本主義の安定にとって最大の敵は常に戦争と恐慌だった。大恐慌は資本主義と民主主義を破壊しかけ、多かれ少なかれ第二次世界大戦への道を開く一因となった。
すべての人が共産主義崩壊後の世界経済に満足していたわけではない。アメリカが繁栄を謳歌する一方で、他の先進諸国は問題に直面していた。日本では90年代初めのバブル崩壊の痛手から回復していなかった。欧州ではまだヨーロッパ病に苦しんでいた。
いかなる国も1953年から1973年までの日本のような驚異的な高度成長と、それに伴う社会の変化を経験したことはなかった。おもに農業国だった日本はわずか20年で世界最大の鉄鋼と自動車の輸出国となり、東京は世界最大の巨大都市圏に成長した。
90年代を通じて日本政府は一連の景気刺激策を実施し、国債を発行して、それが必要であろうとなかろうと、道路や橋を建設した。それらは直接雇用を促進し経済全体にも刺激となった。問題はこうした一連の景気刺激策が日本経済を立ち直らせるのに十分ではなかったということだ。91年、日本政府は財政黒字はかなり巨額だったが、96年に赤字に転じると赤字額はGDPの4.3%とかなり深刻になるつつあった。
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クルーグマンのノーベル経済学賞受賞後初の著作。
世界が今、どうなっているのか、なぜこうなったのか、主に金融とマクロ経済学の視点から理解することが出来る。
しかも、相当に解りやすくである。
クルーグマンがここまで解りやすく書いたのには理由があるように思える。
それは解りやすい方が売れるというだけではないように思える。
資本主義が行き詰まったとき、必ず息を吹き返すのが民主主義である。
どのようにすれば我々が望む生活を出来るのかのヒントをクルーグマンは読者に与える。
民主主義はそれを実現するためにある。
票を買う資本家は壊滅的な打撃を受け、問題は明らかだ。
さて、民主主義を始めようか。
それがいつの選挙になるのかは解らない。
しかし、いつの日か必ず民主主義は最適なリーダーを選びだす。
とりあえず、読もう。
その日が来たときに我々のリーダーを見逃さないように。
この不況がいつまで続くか解らないが、世界最高の頭脳の処方箋である。一人一人の力が今、求められている。
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私は、市場が経済合理性や基礎的要因(ファンダメンタルズ)とは無関係に動くことがあるのを見て、「ああ、きっとこういう人間の心理や思惑が入りこむから、経済や市場は面白いんだろうな」と思っていた。しかし、著者はそんな状態を「アマチュア心理学」と断じている。まったくこの人は、無知な人間がちょっと何かを分かった気になった気分をバッサリ切り捨ててくれる。
この本は、象牙の塔に住む高名な経済学者が、一般人にはさっぱり意味不明な用語をこれみよがしに使ったエラそうな経済本とは全然違う。やはり頭のいい人は例え話がうまい。「ベビーシッター組合」の例は分かりやすかった。
グルーグマン教授の本はこれが最初だったが、他のも読みたいと思った。
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筆者のポール・クルーグマンは2008年のノーベル経済学賞の受賞者。アメリカの金融危機に端を発した今回のリセッションがどういうメカニズムで起こったのかを分かりやすく解説している本、かなり知的刺激を受ける本当に面白い本だ。
この本の中で筆者は、一章を割いてバブル崩壊後の日本経済が長期的な不況に陥った状況とメカニズムについて触れている。そのこと自体にはここでは触れないけれども、今回の世界不況によって日本は再度、当時と同じメカニズム(流動性の罠と呼ばれるもの)による不況に陥るのではないか、と言及している。バブル崩壊後、日本は2003年から2004年にかけて以降、景気が持ち直したのだけれども、それは結局のところ外需、すなわち、輸出頼みのものであったため、世界的な不況が広がると、ということは輸出先の経済が不振に陥ると、輸出に期待が出来なくなることを意味するからだ。
ここから先は私見。短期的に見ても中長期的に見ても、日本経済に対してはかなり悲観的にならざるを得ないような気がする。不況に対して政治の出来ることは基本的には2つ。ひとつは金融緩和(金利を下げたり貨幣量を増やしたりすること)であり、もうひとつは財政政策(すなわち公共事業等の政府支出を増やして需要を人工的に作り出すこと。今回の給付金等もこの変形)である。ところが、短期的に見ると日本の場合、金融緩和策は効かない。だって、これ以上、ほとんど緩和する余地がないから。もうひとつの財政政策は、短期的には効く余地があると思う、というか、短期的にはこれ以外に政治のやれることはない気がする。ただ日本の場合、多額の財政赤字を抱えているわけで、不況が長期に及んだ場合、あるいは、次の不況の時に、更に財政赤字を増やすことが出来るのかどうか(基本的に国の赤字は国債でファイナンスされている訳で、あまり発行しすぎると金利もあがり、借金返済だけで手一杯になりかねない)、すなわち、中長期的に見れば、この手は使いにくくなっている。日本の経済に今ひとつ伸びがない、というか、ぱっとしないのは、内需、すなわち、民間消費が弱いから、民間消費が弱いのは貯蓄率が高いからのように思える(統計数値を見ればよいのだけれども、そこまでは出来ない)。貯蓄率が高いのは、将来に備えようとするためであり、将来に備えようとするのは、将来に不安があるからだと思える。随分と回りくどくなったけれども、要するに国の社会保障制度、特に老後をまかなう、年金と介護のシステムを皆が信頼していないから、それに備えて貯蓄をすることが、個々人にとっては合理的な行動ではあるけれども、経済全体にとっては足かせになっている可能性がある、ということだ。だって、将来の年金の財源は不明確で制度が維持できるのかどうか、みたいな議論はあるし、保険料を支払ったのに記録に残ってないかもしれません、みたいな年金制度は誰も信頼しない。私自身、父親の介護で個人的に苦労をした経験があり、すなわち、困った時にどこも預かってくれる施設がない、というか、いつ入所できるか分からない、という介護保険制度も信頼しにくく、やっぱり自分で備えなきゃ、って思ってしまうわけである。
ということで、即効性は全くない���れども、私の提案する長い目で見た経済成長策は、年金と介護のシステムの信頼性を取り戻す、ということだ。何だか「風が吹けば桶屋がもうかる」的な感じもしなくもないけれども。
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2012/03/30:
日本をダメだダメだと言っていたが、
世界が日本と同じになってしまった。
大恐慌は米国ではもう発生しないと、
米国の学者・経済人は考えたが、
やはり恐慌は発生してしまった。
優秀なIMFが、アジアの危機を増幅させた。
何を今さら....という本だが、わかりやすい。
あとで、読み直して見たい本。
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邦題は「世界大不況からの脱出 なぜ恐慌型経済は広がったのか」。クルーグマンは1999年の時点でこの前の世界大不況を予言していた、ていう本。確かに、おても説得力があった。そうか、これを1999年の時点で、見通していたか、と。でも、僕が思うに、経済ってのは定期的にいつかは壊れる、そういうコワレモノっていう部分が常にあると思う。だから、ここから立ち直っても、また何年かしたらどこかで経済はおかしくなって、で、世界はまたおかしくなって、てことにきっとなるんだろうな、て思う。たぶんね。だって、結局、経済に一番影響を与えるのは、人間の心理の揺れの部分なのだから。(11/6/15)
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これまでの経済の浮き沈みや今の終わらない不況の中で、
経済学なんて事実の後からの解釈で役に立たないと思っていたが、
この人の本を読むと経済学もちゃんと使えば役に立つのかなと思う。
平易な言葉で書いているが、全体のつながりがきちんと分かる。
本質をとらえているからこそ、シンプルに説明できるのだろう。
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本書は、アメリカのノーベル賞学者により、2008年のリーマン危機の直後に書かれた経済書であるが、実にわかりやすく説得力がある。
これが「リフレ派」というものなのか。この内容を2008年のリーマン危機の直後にすかさず上梓できるとはすごいというべきか、それともこの主張がだんだんと世の中に波及して、日本において現在の自民党・安倍晋三の「日銀の金融緩和催促」という経済政策につながっているものなのか、どちらなのだろうかと思った。
1990年代の日本が、「爛熟期」から一転して「失われた20年」となったことは周知の事実だが、それがどのようにして起きたのかを本書は「日本がはまった罠」でわかりやすく明らかにしている。
その解決策の「ベビーシッター協同組合のクーポンをより多く発行すること」とは、日銀がもっとお札を刷ることなのだろうが、この体系的な主張を読むと、「自民党・安倍晋三」の主張の背景がよくわかる。
しかし、この政策で本当に日本は「失われた20年」から脱却できるのだろうか。
現在行われている衆議院選挙で「自民党・安倍晋三」は政権を取りそうだから、本書の見解と主張が正しいものかどうかは、現実に検証出来るのかもしれない。
しかし、アメリカの一流の経済学者とはすごいものだ。日本においてもこのような切れ味が鋭く、誰にもわかりやすく説得力があるエコノミストは出てこないのだろうか。
本書は、4年前の発行にもかかわらず、現在の日本の置かれた経済状況をよく理解できるすぐれた経済書として高く評価したい。
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昔読んだ『世界大不況への警告』の改訂増補版。
経済の難しい話を、分かりやすいコラムにしてくれるクルーグマンは好き。
経済の動きを大胆に予測するのも。リベラルで民主党よりなのも良い。
猛烈な反ブッシュだったクルーグマンは特に大好きだった。
でも、日本の金融政策、経済政策に口出ししてくるクルーグマンは信用できない。何の権利があって、日本の経済を操ろうとする?
日本にはクルーグマンの信者がいっぱいいるから、彼が何か言うたび、大きく影響を受けてしまう。
内政干渉すんなよ!やめてほしい。
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面白いのでクルーグマンを連続一気読みです。
この本は格差は作られたの直後に、
以前出された本を改定する形で出版されました。
しかし内容的にはかなり加えられ、
リーマン・ショック問題を、
過去の歴史を紐解きながら説明もされており、
非常に勉強になる1冊となりました。
ためになります!!