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紙の本
建前と本音
2009/09/08 16:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
やけに気になる表紙である。別に女子高生から足蹴にされたいとか、そういう意味ではないが(本当だよ?)、ヒロインを端的に表してはいる。しかし、実際のヒロイン【斗神璃亞】はここまで尊大ではない。いや、尊大なのだが、裏に隠された彼女の本質を知ってしまうと、むしろ可愛らしく見えてしまう表紙である。
『第二保健部』という舞台と主人公【結槻未祐】との関係に少しだけ「第二ボランティア部」と相通じるものを醸しながら、本音を隠して無理に頑張る人の苦悩を解決したい、建前で武装した人の心を解放したいと奮闘する物語……のようである。というのも、本巻では未祐のクラスメイトにして想い人である【六堂蛍】のエピソードが一応完結してはいるのだが、璃亞が第二保健部を創部した動機や部活動を通して遣り遂げたいこと、または璃亞が留年するきっかけとなった長期停学の真相などがまだ明確になっていないからである。当初からシリーズ化を想定した描かれ方である。それでも人の心の限界、すなわちタイトルのようなSOSサインを敏感に察する能力がある未祐が蛍や璃亞の内心の苦しみに気付く場面では、知られたくない心の奥底に気付かれ、恥部とさえ思っている領域にまで踏み込んでくる未祐に戸惑い、当初は拒絶の態度を見せるも、最後には気付いてくれたことに感謝と情愛を示す展開が実に良かった。特に璃亞の「サイン」を感じ取って我を忘れてからの未祐は反則的にカッコ良い。これがまた男気溢れる唯我独尊なヒステリアモードといった感じの変貌振りなのである。そしてここで璃亞の尊大でない本性が少し見えてくる。「璃亞さん、実はあなた少しMでは?」という意外にも押しに弱い一面を見せてくれる。P.206からは悶絶モノの展開である。こりゃあ次からはツンデレるしかないでしょ、璃亞さん。最後に見せた璃亞の大胆な振る舞いが次巻への期待を大いに抱かせる楽しい作品である。
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