投稿元:
レビューを見る
筆者はレジームシフト理論の提唱者。
「資源が低水準の時は禁漁して回復を待つ」のがよい資源管理という。
IQ・ITQにはコモンズとしての漁業資源の包括的管理に向かないとして反対の立場の模様。
でもITQ導入国の方が、日本よりも資源管理に成功しているような印象はあるのですがその点どうなのでしょうか。
ITQについてはあとがきでしか触れられてないんだけど、気になります。
ところでアイスランドのITQ金融的利用は、昨年の金融危機でなにか変ったりしたんでしょうかね。
投稿元:
レビューを見る
『イワシと気候変動――漁業の未来を考える』(川崎健、2009年、岩波新書)
日本近海でイワシが獲れなくなったといわれる。それは乱獲によるものなのだろうか?
この点、筆者は、日本付近の黒潮地域に分布する極東マイワシ、カリフォルニア海流地域に分布するカリフォルニア・マイワシ、フンボルト海流(南米ペルー沖)地域に分布するチリ・マイワシの3種のマイワシが漁獲量が奇妙にも一致していることを見出だした。これは「グローバルな気候変動が遠く離れた水域のマイワシ」に「同時に共通の変動を引き起こし」たのであり、「漁獲によって」変動するものではないと指摘する。
では、乱獲ではないとすれば何故イワシがとれなくなったのか。それは「レジーム・シフト」というグローバルな数十年スケールの海洋生物の変動現象による。海洋は何十年という単位(熱塩循環で見れば1000年から2000年!)で対流・変動しており、大気・海流がレジーム・シフトを引き起こすとされる。
その他、国際海洋法の制定の経緯、日本の漁業についてなどの記述がある。
たいへん勉強になったが、少し難しく感じた。
(2009年7月1日)
投稿元:
レビューを見る
難しかった。
はじめにと最後の章をじっくり読んで
あとは流し読み。
でも、お魚好きだからこそ
きちんと考えたい。
だからもう少し噛み砕いて書いて欲しかった。
投稿元:
レビューを見る
海洋生物資源の変動を長期的な気候変動によるレジームシフトか乱獲かという議論を軸に国際海洋政策の枠組について考える。
鯨問題にも共通するけど、この手の「国益」が絡むと途端に何が科学的か、が揺らいでく感じがよく分かる。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
大漁・不漁を左右する海の魚の数は、地球の大気や海と連動して数十年スケールで変動していた―この「レジーム・シフト」を著書は一九八三年、世界で初めて見いだした。
九〇年代以降、世界的に大きく進展した研究成果を踏まえ、これからの海と海洋生物資源の持続的利用のあり方に明確な方向性を示す。
新しい地球環境観への誘い。
[ 目次 ]
序章 海と漁業で何が起こっているのか
第1章 イワシが消えた
第2章 プランクトンからマグロまで―海洋生態系の大変動
第3章 海は気候を記憶する
第4章 地球はひとつのシステム
第5章 分断された海で―国連海洋法条約と漁業
第6章 日本の漁業はいま
終章 海から、持続可能性を考える―温暖化とレジーム・シフト
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
2012 1/16パワー・ブラウジング。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
なんか新書、それも自分の専門と遠い新書が読みたくなって手にとった本。
大気-海洋-海洋生態系という地球環境システムの変動を統一的に説明する「レジーム・シフト」理論を、イワシを入り口に紹介する本。海洋動態解析の話。
その理論自体が筆者のイワシの漁獲量変動の原因の研究からはじまっている。
普通に話自体が面白いのはもちろん、ふだんあまり馴染みのない分野の研究の話としても興味深かった。
・魚は大量の卵を生む、世話はしない
⇒・0コンマ数%の生き残り率の変化で個体数が激変する
投稿元:
レビューを見る
漁業の関係者ではないので、鰯と気候変動の関係はよくわかっていない。
昔、いわしは安価で、栄養源だった。
日本の経済を支えてきたのは、鰯かもしれない。
鰯を大量にとり続けられるようにするにはどうしたらいいかを考えさせられた。
漁業の未来だけでなく、日本の未来を憂える。
ps.
鰯の天麩羅も得意ではなかった。
鰯が貴重になってきて、鰯の天麩羅が好きになってしまった。
投稿元:
レビューを見る
イワシなどの漁業資源は、人間による乱獲により減少したという説を否定し、数十年間のスケールで変動する気候変動の下でその数が変動するという説を提唱。
これがなかなか面白い。数十年間のスケールで、寒冷期と温暖期が繰り返れるが、寒冷期にはイワシなどの小型魚が、温暖期にはカツオやマグロなどの大型魚の数が大きくなるらしい。
今後、温暖期が進行すると漁業資源はどうなっていくんだろう?
投稿元:
レビューを見る
著者は、魚のバイオマス変動と気候変動との関係、すなわち地球と海の生態系の大きな変動を解明した第一人者。レジームシフトを明らかにし、平衡理論に基づくMSY(最大持続生産量)の概念を覆した功績は大きい。動物プランクトンを食べる小型の浮魚のバイオマスの振幅幅は10〜20倍程度、マイワシやアンチョベータでは数百倍になる。
気候と海のダイナミクスについても丁寧に説明されている。冬季混合層(亜熱帯モード水など)の水量と性質は、北西太平洋の冬の季節風の強さによって決まり、翌年まで保存される。エルニーニョ・ラニーニャ現象は、気圧の東西の変化である南方振動(SO)が対応している(ENSO)。
北大西洋振動(NAO)は、冬季のアイスランド低気圧(IL)とアゾレス高気圧による偏西風の強さの変動。寒冷な冬ほどラブラドル海で沈み込む水が多量につくられるため、深層水の熱塩循環の強さはNAOによって変化する。そして、NAOはインド洋と太平洋の熱帯水域の海面水温の変動によって駆動されている。
FAOの海洋生物資源評価や、ネイチャーに掲載された漁獲物の平均の栄養段階の変化に関する論文、マグロ群集のバイオマスが15年間で80%減少したと主張する論文に対して、レジームシフトを考慮した分析で反論している最終章は注目に値する。
海の支配権をめぐる歴史や、日本の漁業の歴史についても触れており、索引や参考文献のリストが付いているのも親切。
多くの要因が複雑に関係しているので、なかなか完全には理解できない。しかし、地球環境と生態系をダイナミックにとらえなければならないということがよくわかった。
投稿元:
レビューを見る
自らの研究の成果を述べた本。たいへんよく調べられている。数々のデータを駆使し説得力ある論述がなされている。細部まで理解できたわけではないが、単なる乱獲が漁獲高減少をもたらしているわけではなく、キーワードとなっているレジームシフトによる、地球全体の変化のローテーションを理解しないと問題解決に至らないと警鐘を鳴らしている。それにしても欧米の横暴には腹が立つ。