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壮大すぎて、盛り込まれ過ぎて、読みごたえドーン!
疲れるけど、いい読後感。
やりすぎな感じも含めて、ぜんぶ、いい。
個人的な事柄に終始せず、社会を世界を宇宙を描きだそうとする。
そりゃ、不完全だよ。未来なんてわからない。
でも、その心意気に、ぎゅんと来るのだ。
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面白い。本当にありそうな未来を絵がいていて、そういう意味でも面白い。分人主義というのに興味がわいた。
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ふうむ。星を4つにするか3つにするか迷うところです。これだけの舞台設定をまるで見てきたかのように描く手腕には畏れ入るのですが、つまるところは「愛」の話であるのに、なぜに宇宙飛行士なのか、なぜに大統領選なのか、なぜに近未来にしたのかと思うことがたくさんあります。
とくに大統領選挙の白熱した演説合戦が続くあたり、それはそれでとても興味深いのですが、本題の女性飛行士の妊娠疑惑はどうなったのよと歯がゆい思いをさせた上であれですか。
「メルクビーンブ星人」にも、もうちょっと何かあるのかと思ったのにあれですか。
展開が時間軸を無視しているのと、視点が選挙PR会社の映像作成者に移ったり、いくつもの名前を持つ男が登場して混乱したり、とまあ、わざと難解にしているようなきらいがありまして、アホな人はご遠慮くださいと言われているような気がしないでもない。それであっと驚く結末があるってわけでもないんだなあ。
ARという3次元映像の技術は20年ぐらいたてば本当に一般家庭に当たり前になっているかもしれません。死んだ息子の映像(しかも成長する)と暮らす母親かあ、ありえそうですね。
ディヴという言葉が盛んに使われています。多様化する対人関係の中で、様々な「人格」を使い分けるという意味です。あのときキミを大切に思ったディブを忘れたくないんだ、みたいな感じです。こういう会話をするようになるのでしょうかね。なんだか面倒な未来ですなあ。でも、「源氏物語」の生まれた日本ではすでに大昔からやっていたんですって。
20年後、生きていたらまたこの本について語るときがやってくるかもしれませんね。
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これまでに過去,現在をテーマに小説を執筆されてこられた,平野啓一郎さんの「未来」をテーマにされた小説です。
「過去」や「現在」と異なり,不確かな「未来」をテーマにされた小説ですので,平野さんの大胆な想像で創られた世界観などを楽しみにして読みました。
テーマは,現在から未来における,「個」の在り方と,過酷な状況下における「愛」が大きなところかなと個人的には理解しています。小説を通じて,個人的にもいろいろ考えさせられることが多くありました。
過去を扱った「日蝕」「葬送」や,現在を舞台にした「顔のない裸体たち」などとは違う内容で,思索を深める一作だと考えています。
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すごく肉厚な物語だった。
人類初の友人火星探査プロジェクトの飛行士(主人公)たちの宇宙船内での数々のトラブル、それが想像もしていなかったものだけどよく考えたらありえるというかまぁ深刻な課題で。
一方、アメリカで定着してるディヴィジュアル(分人)という概念や東アフリカ戦争と企業倫理という現代にもある問題(舞台設定は2037年)がとても緻密に描かれている。
概念的であるはずのものがここまで具体化した世界というのは私個人としては理想的であると思った。
さまざまなディヴィジュアルを抱えつつも、どうしてもインディヴィジュアルとして逃れられない性質の問題も真正面から捉えていて、それが内面のみの葛藤だったらどういうロジックでももっていけそうなんだけど、そういう方向に持っていかずに一人一票を有する「大統領選挙」という現実を通して描かれていたことに物語としての迫力を感じた。
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面白かった!ストーリーは、生物兵器を巡る謎もあり、人間関係の複雑さもあり、現代の問題として考えさせられる部分もあり、色々満載で、最後まで緊張感を持って読めました。読み終えて、「ドーン(夜明け)」というタイトルがしっくりくるなあと思いました。
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久々のSFで、行きつ戻りつしたりして、ちょっと時間かかっちゃいました でも、設定はそうでも、内容はSFだけじゃなく、いろんな要素がてんこもり。最後は“愛”だし。 「ディヴ」っていう概念について、ふ〜んって考えさせられました。
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表紙に惹かれて購入し、宇宙船内での話かと思えばそうではなく、政治絡みでした。
ディヴィジュアルと興味深い概念も登場して、そこが魅力的でした。
でも、話が交差するので最初は少し読みにくい気も。
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舞台は近未来の世界。人間が喪失感を埋め合わせるむずかしさは現在と共有されています。
強固な物語世界の構築には成功した作品だと思いますが、登場する人物たちの内面がリアルな人間とはとても思えず、そのたびに物語との距離を感じずにはいられませんでした。身体性といえばいいのか、生々しさが希薄な小説です。この小説世界の人物間では当たり前の「ディヴィジュアル」という価値観は一見クールですが、誰にでもできる考えとは思えない。リスク回避者も出てきてよかった。思想実験的側面が強すぎて拒絶感を覚えました。「他人の顔見て態度を変える」ことを頭の中でこねくり回して理論武装したような気持ち悪さも感じました。
それでも、平野作品に特有の、小説として固有の世界観構築は、他作家と比して群を抜いています。
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不思議な魅力の作品。なんといっていいやら。
うまくはないと思うんだよね。むしろ、一文が長くて、ごちゃごちゃしていて悪文のことが多い。
近未来のこの作品だけの用語やらがやまほど出てくるけど、なんともわかりにくくて、置いて行かれちゃう。
きっと、筆者の中ではすっきり整合性をもって首尾一貫した世界と主張をもって書かれているんだろうけど、読み手にきちんと伝えようという気持ちはあんまりないんだろうな。
だもんで、すごく読みにくい。
だけど、引き込まれるんだよねー。
読みたい気持ちでよんでいるのに、悪文がじゃまをするー!
ごちゃごちゃしていて、読み飛ばしたい衝動にかられるー。
それでも、とにかく最後まで読まずにいられないのは、この本のどこかに必ず救いがあるっていう気がするから。
それに早く至りたくて読み続けてしまった。
世界の大問題は誰が解決するのだろう。
そのことを考えると、個人の無力感に虚無的になってしまうけれど、どれだけ文明が進んで、世の中が変わっても、人と人とのかかわりから全ては始まる。
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平野啓一郎は、この作品を通じて、それまで温めてきた「分人主義」という思想を伝え、生きること、愛することについて、メッセージを投げかけたのだと思う。
分人主義は、簡単に言うと、「個人」は接する人に応じて多くの分人(ディヴ)を持つということで、「分人」はそれぞれの性格や接し方に紐付くものと考えることができる。ちなみに、それは対面に限らず、メディアを通しても形成される。
物語の舞台を「分人」の生成が過度に抑制される、宇宙飛行(火星への到達)と米国の大統領選挙に紐付けたのは、分人主義を語る上で、非常に効果的に機能していると感じました。
ちなみに、物語の中で印象に残っているのは、主人公がSNSやブログを通じて、「ディヴィジュアルをデザイン」しようとした過程で、それにより、自暴自棄になりかけていた主人公が、少しずつ再生していくところ。
それは多分、「複雑に入り組んだディヴの中で何を一番大切にすべきか」という課題を、我々にも投げかけているものだと思う。これは一見、セカイ系みたいに聞こえるけど、そんなことではなくて、様々な利害関係を乗り越え、自分が正しく生きるためのディヴを探すということだと考えている。そんなディヴを自分は持っているだろうか?
そして、こうしてレビューを書いていることや、SNSやFacebookでコメントを公開することも、メディアを通じた自分の「ディヴ」をデザインしていることになる。
「分人主義」というものが、現象学やそうしたものに置き換わるとは思わないけれど、そんな抽象的な議論よりは、「分人」を通じた人間関係をいかに作るか、という平野啓一郎の思想の方が、現代、そして近未来では、よっぽど説得力があるのではないか。
いずれにせよ、それらを網羅するプラットフォームとしての、作品の完成度は高く、最後は感動的ですらある。所々に出てくる技術的小ネタも個人的に笑えて◎でした。
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舞台が近未来なので、私がいかにも好きそうですが
ウィキ小説とか、考察がけっこうおもしろかった。
これは好き嫌い分かれる話だと思いますが
私は好きです。
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隠すものは悪か恥芥川賞作家のSFサスペンス長編。人類の夢、火星有人探査計画『ドーン』と、第二のベトナムと言われる泥沼の東アフリカ戦争のさなかに行われる大統領選。二つのテーマを結ぶのは、ドーンの日本人クルー日比野明日人を巡るスキャンダルと、民主党のPR映像ディレクターにもたらされた「ニンジャ」という謎の兵器の情報だった。ドーンの船内で起こる二つの事件、ニンジャの情報を持つ謎のパパラッチなどが絡みあい、メインテーマを彩っていく。結構本格的なSF設定ではあるが、そのSF要素は単なる装置に過ぎず、この小説のテーマは、正義とか悪とか愛とか倫理とかそういう哲学的・本質的なものである。特に、嘘に関するイアン・ハリスの考察は非常に興味深かった。要旨を説明する。人間が隠したいと思うものは、悪と恥の二種類である。どちらが告白しづらいものか。一般にはそれは悪の方であるように思われているが、実際には恥の方である。なぜなら悪は究極的には一般的なものであるが、恥は個人的なものだからだ。とにかく、よく出来てはいたが、あまりSFエンターテイメントとして面白いものではなかったように思う。せっかく宇宙の話なのに、大統領選の話に終始するのではあまりにも地味だ。
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分人主義、おもしろい、非常にしっくりきた。複数の人格を有する個人が、それを明示的にする時代。だれも自分の中の多重性を感じ、その折り合いと共存している、普遍的なテーマに、躍動的な物語として表現されている。
著者に感じていた「取材してます感」を払拭するようなシナリオの幅に純粋に楽しみました。同テーマの小説もあるとのこと、さっそく読んでみたい。
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個人individualを個々の人、場所に応じて分化した、分人主義divisualismの行き渡る、2033年のアメリカ。
宇宙船「ドーン」に乗り、初めて火星に降り立った勇敢なクルーたちだったが…。
途中登場人物の名前に混乱しかけ、内容の停滞に
ページを繰るスピードが落ちたものの、総じて興味深く読めた。
「いいかね、アストー。人間は、社会に有益だから生きていて良いんじゃない。生きているから、何か社会に有益なことをするんだ。」
そして、主人公である医師でクルーの明日人が、
悩みの果てに辿り着く、その場所があそこでよかった。