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みんなのレビュー4件

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紙の本

傑作シリーズ第2弾

2009/09/13 03:32

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:斜麓駆 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「麗しのプリンセスとくちづけを」につづく,「悪魔の乗り手」シリーズ第2弾です。前作から続けて読むと,このシリーズでは,ヒーローの男臭さが巧みに描かれており,心理描写,コンプレックスを抱くようになった背景などが,細い糸が絡み合ってやがて太い糸になっていくように,すばらしいストーリーテリングの技が表されています。
 今回のヒーローは前作のヒーローであるゲイブの腹違いの弟ハリー。ゲイブら4人と戦争で仲間意識を強く持ち,「悪魔の乗り手(デヴィル・ライダー)」と呼ばれる一人です。馬をこよなく愛し,競走馬を育てる夢を追って,友人のイーサン・ディレイニーとすばらしい馬屋を持つ屋敷を購入するためにハンプシャー州にやってきます。その屋敷の持ち主だったヘレン・フレイモア(愛称ネル)は,雨の中,荷馬車の荷台で帽子もかぶらず雨に打たれていたところで,偶然にハリーに遭遇します。二ヶ月前に出産し,父を亡くし,しかも赤ん坊を父が連れて行ってしまったという不幸な境遇に出会い,放心状態で屋敷に戻る途中でした。しかもその屋敷はすでに抵当に入っており,ネルが戻れる状況にはなかったのです。ハリーとイーサンはその屋敷を購入しようとしていたのでした。雨に打たれているネルの琥珀色の瞳を見て,ハリーはなぜか惹かれるものを感じるのでした。これらの偶然が重なり,ヒーローとヒロインの糸が次第に絡んでいきます。
 赤ん坊の父親の名前をネルは誰にも明かそうとしませんでした。住む家を失ったネルを,ハリーは結婚すれば,その問題は解決すると持ちかけ,赤ん坊をロンドン中を探しても必ず見つけると約束します。この赤ん坊捜索作戦は,本作の中心的なストーリーですが,ロンドン中の乳児院を回っても見つからず,一時は二人とも捜索をあきらめざるを得なくなります。しかし,赤ん坊の父親(ネルはかたくなにその名前を明かそうとしませんが)をついに見つけたハリーが,懲らしめようとしたときに登場してくる従卒が,かつて戦地でハリーたちの戦いぶりを知っていた男であり,赤ん坊トリーの居所に関わってくる,というしゃれた展開が準備されています。赤ん坊の父親は,敵役としては存在感のない,つまらない男ですが,敵役をそのような人物とすることによって,ハリーやイーサンの男らしさがかえって強調され,読者はますますヒーローに惹かれていくよう意図されているのは見事です。
 敵役との対決があっけない分,作者が用意したのは,ハリーの友人で前作から引き続き登場するイーサンと,前作のヒロインの家庭教師を勤めていたティビーとの遠距離恋愛です。話は巧みながらも貴族の出自ではなく,読み書きが苦手だったイーサンが,ティビーに文字を教わり,恋愛感情を何度も手紙を書き直し,思い切って告白するイーサンの姿と,イーサンに愛情を感じながらも自分が36歳という適齢期をすっかり過ぎていることから,釣り合わないと考えているティビーの関係は,ほのぼのとした,なんとか互いの気持ちを通じ合わせてやりたいという気持ちを読者に感じさせます。このサブストーリーも本書の魅力です。
 さらには,ハリーとネルの面倒を見,さらに家族と疎遠になっているハリーと兄たちの関係を修復しようとするレディ・モード,ネルの赤ん坊が発見された家の惨めな暮らしをしている赤ん坊たちを引き取って育てようとするバロウ夫妻など,愛情あふれた人々が脇を固め,愛することのすばらしさ,あたたかさをたっぷり描ききった作品です。

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2010/09/21 11:36

投稿元:ブクログ

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2010/11/15 15:35

投稿元:ブクログ

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2016/05/23 09:07

投稿元:ブクログ

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