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コドモにとって学校はあまるに大きく、そこで適応できないと世界全体との折り合いがつかないような自分なんて生まれてこなければよかったような気がしてくるものだ。文学全集はそんな学校の外にいくらでも他の世界が、大人の世界、外国、過去が、だから未来があるのだ、と教えてくれる。
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2010.03.21. 思ったよりイマイチ。「文藝ガーリッシュ」シリーズの方が、読書の水先案内としては好き。取り上げてる本が、偏っている(というのが著者の持ち味だろうけど)ので、読みたい気持ちにもなりにくい。。。
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名作を読むということは、「ものすごくおもしろいものを、一生知らずに過ごしてしまうかもしれない」とつねに思い起こすこと。自分の現在の好き嫌いに閉じこめられそうになったとき、そこから逃げ出せるようにしておくこと。間違う危険のある場所に出て、間違う権利を回復すること。
だから名作を読む。明るい独房を出て、外の真っ暗闇を歩く。
(P.227)
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千野帽子さんてヲトメな方だという勝手な印象がありましたが、思ってたよりずっとcriticism。面白かった〜! 授業中に本を読んで叱られたのは苦い思い出ですよね… 身に覚えが。「恐怖」の章がどきっとしてざわざわした。ホラー小説の内容じゃなくて千野さんの警句に。自分は小説をどんなふうに読んでるだろうか…?
ところで、ちくま文学の森はいいよね〜 今ちょうど文庫になってて嬉しい。
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文藝ガーリッシュでデビューした著者の評論の集大成。『野生時代』(2008年〜2009年)に連載されたものを加筆修正。とにかく内容豊富。自らの読書経歴から説き起こし、その後の読書傾向、名作(?)との出会いまでを赤裸々に告白。そこから始まる、古来からの文学観に対する毒舌の嵐の見事なこと。12章にわたって、次々と展開される、新たな切り口による解釈で発見すること多々。特に、第9章の「文学全集」や第10章の「文庫本」で展開される、日本における名作主義や教養主義への批判は我が意を得た気分。そして、田舎の実家の本棚の片隅にあった赤い箱入りの全集を思い出しながら、あれを読んだのは自分だけだったなあと感慨に耽った、、、辛口の言葉で展開される著者の文学論は、本当に新鮮でまさに目を洗われる思い。読まず嫌いの本を持つ、読書好きの諸兄にお勧め。
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千野とくれば栄一で、あのカレル・チャペックの『ロボット R.U.R.』(1989年、岩波文庫)やミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』(1993年、集英社)などで、東欧文学を名訳で私たちに紹介してくださった大恩仁で(残念ながら7年前に亡くなりましたが)日本のスラブ学の重鎮しか知りません。はたして、この千野帽子がどういう人なのか、ひょっとして千野栄一の娘さんなのか御子息なのかもまったく存知ません。
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千野帽子は「ユリイカ」の猫特集を読んで以来気になっていたので読んでみた。
私もミステリなど読まず嫌いなところあるので、隠れた名作を紹介してくれるブックガイドかな、と期待して。
読み始めてすぐ「これはロッジの『交換教授』だな」、と思ったらそのまま出てきて嬉しくなった。
でも紹介されている本が古典なのはいいけど、完全にネタバレなのはがっかり。
文章はかなり面白く、読んでると「おおっ、これは読まねば」という気持ちになるのだけど、微に入り細に入り紹介してあって「ちょっとちょっと」と思ってたら、最後まで行っちゃうのね。まあ、『テルレス』や『飛ぶ教室』など読んでた本はいいんだけど、『モルグ街』みたいにもうどこでもネタバレしちゃってるのもいいと思うんだけど、これから読もうと思っていた本はすっかり読む気をなくしてしまった。紹介されなければ知らなかった本は仕方ないけどね。
昔頑張って『静かなるドン』や『いいなづけ』を読んだことを思い出した。
さすがに『静かなるドン』はもう読まないと思うけど、また古典の大作を読んでみたいな、という気持ちになった。
この著者、ただの文学好きが高じて書評やってるわけではなく、きちんとアカデミックな経験も積んだ人だというのが伝わってきたので、また読んでみようと思う。但し、これから読もうと思ってる本の紹介は飛ばすことにする。
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ひょんなことでお名前を知った著者。歯に衣着せない物言いで、本を登場させては凄まじい勢いでバッサバサと捌いていく本文から、ずいぶんスピード感と逞しさのある女性だと思いきやまさか男性だったとは。大変失礼しました。
著名な作品を語っていたかと思えば派生して別の作品が登場し、内容から考察まで深入りするのかなと思えばヒラリと次へいく、という掴みどころのない印象。終始さばけた口語調なので肩を張らずに読める。情報量がすさまじく、マシンガントークを聞いているが如く集中力を要した。多くの本が登場するものの、ブックリストとしての使い方は私には出来そうになく、こうゆう読み方をしなさいと指南してくれているわけでもない。
この本は「読まず嫌い」という題名にピンと来た人が著者と一緒に共感する、そしてそういった本との付き合い方について再確認する作品だと思った。本に関しては雑食でありたいとは思いつつも「読まず嫌い」となっている本(作家?)は多数。
すぐとは言わず、いつか手に取れる日がくるよう広い受け皿を用意し、手に取った時は型にはめず自分の感じた印象を受け止め、他者の印象も知る姿勢を持っていたいと思う。
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頭の中で「帽子嫌い」と変換されていて、探すのに手間取りました。
先日も、桜庭一樹の『赤朽葉…』の続編が出たってんで予約しようとしたら、どの図書館でもヒットしない。今をときめく桜庭の新刊が何故ない!?…『製鉄天使』が「鋼鉄少女」に脳裏で化けていました。嗚呼、あんころもち作ってもらえない(涙)
閑話休題。
「チノボーシ」の響きと苗字から、この人ってチェコ語の千野栄一さんのご子息かしらと思っていたら、表紙にロシア文字表記があり。どうなんでしょ?→千野帽子はペンネームらしい。
「本ばかり読んでいると碌でなしになる。何が禄でないって悪いところを全部本のせいにするくらい禄でもない」ってのに激しく同意。
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国語が嫌いで、そこで扱われるような古典などを読まず嫌いし、読書が好きだからこそ自分が好みそうな本以外の本を読まず嫌いしている傾向が私にはあるので、本作はとても心に響いた。名作だって、無理にそこから何かを学ぼうとかせずに気楽に楽しめばいい、という著者の読み方に勇気づけられる。読まず嫌い本を読んだ結果、それを好きだと思うかどうかは分からないけど、その時得た感想はその本でしか得られないものである、という著者の考えに読書欲をくすぐられると同時に、読書って刺激的だなぁと思った。
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「はじめに」でつらつらと述べられる、「ミステリが嫌いだった。」「SF小説が嫌いだった。」「時代小説が嫌いだった。」「歴史小説が嫌いだった。」「伝奇小説は(略)食傷した。」という嫌い嫌いのオンパレードに、ちょっと愉快な気持ちになる。
同意できない部分もあるけれど、「純文学も得意ではなかった。(略)名作文学とは人生観を開陳してくる小説なのか。だったらめんどくさい。そういう人生観を若者に読ませようとした編者の教育的配慮を退屈に感じた。」「青春っぽい文学が苦手だった。理由は気恥ずかしいから。」の辺りは力強く頷かざるを得ない。「青春」に関しては、小学生から高校生の辺りまでは正にそういう気持ちだった。もう(作者の言葉を借りれば)和解していますが。
最後の方で著者は、カフカの『変身』に対する「現代人の不安と孤独をあらわにした作品」という紹介を目にした時のガッカリ感をわかりやすく言葉にしてくれていて、「そういうことだったのか!私!」という気持ちになった。というわけで、読まず嫌いだった『変身』もいずれ読んでみたいと思う。
ところで、表紙のデザインやペンネームから、著者はてっきり女性だと思いきや、男性だった。ギムナジウムの件であれっやっぱり女性!?と思ったが男性だった。『文藝ガーリッシュ』も読んでみたい。
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筋金入りの読まず嫌いの著書が、さまざまな名作文学との和解の記録を書いたもの。エッセイなのかなと思って手にとったが、どちらかと言うとブックガイドのような色合いが濃い。
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基本的に読まず嫌いはしないよう意識してきたつもりでしたが、この本を読んだら自分で思っているよりジャンルは選んでることに気が付きました。
たしかに海外の名作・古典には全く食指が動いてなかったわ。
なんとなく名作って大雑把なあらすじを知っていたりするせいで今更読む気が起きなかったり、訳本が苦手だったり、難しそうだったり・・・と今まで読まないできた理由をあげるとホントだほら、きりがない(笑)
「ものすごくおもしろいものを、一生知らずに過ごしてしまうかもしれない」といわれると焦ってしまう私。
自分の興味の範疇を超えて、そして、著者のいうように、自分の「面白い」の枠を超えて自由な読書をめざし、今後はゆるく海外古典にもチャレンジしていきたいです。
まずはドンキホーテあたりから。。
それにしても著者の読書量には驚きました。その上で古典文学の価値や構造を体系だてて分かりやすく読み解き、しっかりと文芸評論もしている。本の紹介なども世間話をするように次から次へと飛ぶのでテンポが良くて会話のように楽しい。
個人的には文学全集の成り立ちと意義、衰退までに関する評論がとても面白かった。文化に求めるものの変化、教養という価値自体の衰退、とかね。なるほど。
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読むべき本としての「名作」。そんな義務や強制を強いる、重しのついた「名作」。そこには誤解や無理解も潜んでいよう。ともかく、そんな「名作」とどう付き合っていったら良いのか?をめぐる、体験的読書論。
文学全集なるものに挑戦してみたくなった。
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[関連リンク]
本読みHPブログ: 今年読んだ本から(2009): http://hon-yomi-hp.seesaa.net/article/135548764.html