紙の本
高校生の親と高校教師に読んでほしい本
2009/12/21 17:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヒロ1958 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最後の数ページはウルウルだった。
著名なヴァイオリニストの母と二人暮らしの玲は、受かることを疑いもしなかった音大附属高校の受験に失敗し、新設女子高の普通科に進学。「ぼんやりの膜」で自分を包み、周囲と一線を画す玲。2年の秋、そんな彼女が校内合唱コンクールの指揮者に選ばれる。彼女なりにがんばるが惨憺たる結果に終わり、玲はまた「ぼんやりの膜」の中に戻る。しかしクラスメートたちの中では何かが少しずつ、だが確実に変わり始めていた。そして、玲の最も嫌いな校内マラソン大会、最後にグランドに戻ってきた玲の耳に聞こえてきたのは……。
この小説は、玲を主人公としたdoで始まり、彼女のクラスメート5人の内面をそれぞれの視点から描き、最後のsiで再び玲を主人公とする物語として収斂させるという構成になっている。6人の少女の、クラスメートからは見えない面を描くことによって、ストーリーは豊かでふくらみのあるものに仕上がっている。
説明ではなく、もっと描写がほしいという気もするが、ありきたりの話になりがちなストーリーをこれだけの作品に仕上げる力量は見事だ。特に「ぼんやりの膜」とは言いえて妙。不本意入学やらコンプレックスやらのニュアンスが実体として見えてくるようだ。
「お受験」に象徴される一部の私立高校は別にして、少子化に加えてこの不況の中、私立高校に通う子どもたちが背負い込んでいるものは結構重い。現役の私立高校生にとってはちょっと避けたい本かもしれない。その分(と言うのも変だが)その親御さんたちに、そして私立高校の先生方にぜひ読んでほしい作品だ。
紙の本
気づけたなら、それがはじまり。今からでも、いつからでもきっと大丈夫。
2009/12/11 09:57
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nyanco - この投稿者のレビュー一覧を見る
『スコーレNo.4』で大ファンになった宮下さんの最新作。
今回の舞台は女子高。
大人になってから見る女子高生たちは、キラキラ光って見える。
しかしこの物語に登場する女の子達は、コンプレックスや15にして既に挫折を味わい、残りの人生はもう既に余生気分の女の子達ばかり。
周りから見たら元気いっぱいに見える千夏だって、優等生のひかりだって、みんな心には誰にも言えないもどかしさを感じ、何かを諦めたように頑張れずにいる。
途中まで、ああ、今、リアルタイムに生きている中学生や高校生に是非読んで貰いたいな…と感じていた。
しかし、読み進めると忘れていた昔の自分をそこに見つけてしまった。
私の居場所はここじゃない。
私はこんなところに来たかったんじゃない。
もうすっかり忘れていた昔の私。
輝くような青春小説は、体験することが出来なかった私には憧れの場所で、羨望の的でもありました。
でも、この物語に出逢い、つまらないのは、選択を失敗しちゃったのは、自分だけじゃなかったのかもしれない…と思えたのです。
楽しそうなあの人や、お気楽に見えたあの人だって、内面にはいろんなものを抱えていたのかも…。
ちょっとしたことがきっかけとなって、周りの見えていなかった玲が気付き、変わっていく。
そして周りのみんなも、前をむいて歩き出す。
心が清々しくなる物語でした。
私はあの時に気付けなかったけれど、今からでもまだ大丈夫?
気づけたなら、きっと何かが変わるかもしれない、そう思わせてくれる素敵な物語でした。
今、女子高生の女の子に、これから女子高生になる中学生に、そして昔、女子高生だった私のような大人にも鵜読んで貰いたい素敵な本でした。
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2009.11.10. 女子校、楽しいですよ。それぞれの内面では、いろいろあるのかもしれないけれど、やっぱり楽しそうですよ。いいなあ、合唱コンクール。
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音大の付属高校を落ちた御木本玲、ピアノに憧れるカレーうどん屋の原千夏など多感な女子高生が、合唱コンクールを機会に変わっていく。優しい気持ちになれる。
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よき青春ストーリー。みんな大なり小なりいろいろ抱えてる。でも「歌」をきっかけにいろんなことに前向きになっていく。読後さわやか!
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すごくよい。主人公は女子高校生たちだけど、ああいう「ぐるぐる」は、ずっと前に思春期を過ぎた僕にでもある。日常の小さな感情の動きを丁寧に拾った話。優しく暖かい。
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御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子校の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる…
なつかしの青春小説。
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「目指すのは何かといわれれば、うまく答えることはできないけれど、つまり、よく生きること、なのだと思う。」
ものすっごく良かった!!!!!
短編かと思うと、最初があまりにももの足らなくって「あれ?」って思ったのだけれど、なんてことはない連作長編だ。
最初にコリコリに凝り固まった主人公。
それが徐々に徐々に、解されていくその過程がとても美しくて優しい。
前の『スコーレNo.4』も物凄く良かったのだけれど、音楽、という点での私の好みはこっちだし、非常に共感できた。
ほぅっとため息をついてしまいたくなるような物語の完成度に感激なのでした。
【2/4読了・初読・市立図書館】
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日本人が書く現代の物語って難しい。
この作品は、久々に素直にいいなぁと思えた。
深く踏み込まないと、女子高のクラスメイトの顔なんて
みんな同じか、のっぺらぼうだ。
だけどみんなそれぞれのグルグルやドロドロ、モヤモヤを
そのかわいらしい姿にそっと収めている。
自分だけがつまらない、自分だけが特別。
同じ人間の中に同時に存在する感情。
なんだかすごくよく分かる。
ハイロウズはその前身ブルーハーツ時代から私は
なじみの無いグループだ。一度甲本ヒロトのステージ
パフォーマンスをみてまだいたいけな私は心底
ビビりまくってしまったから。
聞くべき時代に聞き逃したのかも。
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彼女たちにはみな、理由がある。その、新しい女子校に入学した理由が。
とある学校のオンナノコ達の悲喜こもごも。盛り上がっているわけではないのに、しっとりと染みいるお話でした。歌いたくなりますね。
麗しのマドンナ、聞いてみたい。
「つまり、よく生きること、なのだと思う。」
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『スコーレNo.4』で宮下さんのファンになり、この本を、図書館で予約してずっとずっと待って、やっと手に入りました。
あまりに期待が大きかったので、その分、身勝手ながら、裏切られたらどうしようという不安がありましたが、読み始めて数ページで、この物語を私はきっと大好きになる!!と思いました。
それはもう、予感というより、確信に近い感覚でした。
実際、その通りでした。
繊細な自意識、コンプレックス、劣等感、トラウマ、先の見えない不安感・・・女子高生たちの抱えるいろんな心のぐるぐるが、合唱でクラスみんなで歌うことを通して、少しずつほどけていきます。
こうかいてしまうと、私の説明が下手なせいで、「いわゆる青春小説かー」という感じになってしまうんだけど、そして、確かに青春小説なのですが、
大人が読んでその青春の渦に巻き込まれてしまうような引力があります。
連作短篇形式なのですが、1人1人の心が軽やかになるたびに、私の心も一緒にほくほくと温まっていきます。
それがなぜなのか、よくわからないのですが、1つには宮下さんの表現力の巧みさがあると思います。
奇をてらったところのないシンプルな文体だけれども、1文1文、真摯な態度で、丁寧に書いているんだなぁと感じさせる何かがあります。
だからこそ、これからもずっとずっと宮下奈都さんの著作を追いかけていこうという決意を新たにしました。
青春まっただ中の人にも、青春はもうとっくに引退したよという人にもオススメの一冊です。
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明泉女子高等学校に通う御木元玲とそれを取り巻く同級生の短編小説。
読んでるとなんとなくわかったり、わからなかったり
理解できるような、出来ないような。
自分に照らし合わせれば
ちょうど2ヶ月前の物語になるんですが
なんと言うか、こういう高校生活もいいなあと思いました。
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新設の私立女子高校。同じクラスの女の子たちはそれぞれに想いを抱えているが、それを見ないようにしてそれなりに高校生活を過ごしていた。合唱コンクール、マラソン大会が1つの転機となり、次第にひとつのメロディーを奏でていく。
合奏のように繋がっていく女の子たちの想い。描かれているのは純粋な想い。傷つきやすくて気まぐれで難しそうに見えるけれど、とても素直な1人1人。それぞれの声が響き合って、1つの渦になっていく。気持ちは歌声とともに。
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有名ヴァイオリニストの娘、
その同級生たちの音楽(うた)を中心にした友情物語。
音楽の才能のある者、ない者、大好きな者、そうでもない者。
音楽に対するスタンスがそれぞれ違うのに、
一度歌い始めたら、そんなのもう関係ないんだよなあ。
ていうか、ブルハじゃなかったハイロウズ賛美小説で、
ちょっと引いた。
クラシックもあり、ヒロトもあり、ならいいんだけど、
どっちが書きたいの?て思う。
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御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子校の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる――。あきらめ、孤独、嫉妬……見えない未来に惑う少女たちの願いが重なりあったときにあふれ出す希望の調べ。いま最も注目すべき作家が鮮烈に描く、青春小説の記念碑!
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do 12月1日 よろこびの歌――御木元玲
re 12月22日 カレーうどん――原千夏
mi 1月13日 No.1――中溝早希
fa 1月27日 サンダーロード――牧野史香
sol 2月19日 バームクーヘン――里中桂子
la 2月26日 夏なんだな――佐々木ひかり
si 3月4日 千年メダル――御木元玲
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きっと読む者誰でもに自分の高校生時代を思い起こさせることだろう。というよりも、その時代の自分に帰っていくような心地にさせられることだろう。なぜかといえば、自分というものの存在意義とか、夢とか希望とか諦めとか、さまざまな思いに揺れ動く年代をすごす彼女たちの心情が、とても繊細に丁寧に描かれているからだろう。
ひとりひとりが何かを抱えて集まった2Bというクラスで、つかず離れずの関係をなんとなくつづける毎日に、風穴を開けたのは玲であり、またその玲の背中を押したのはクラスメイトたちだった。自らの内側だけをみつめてきた彼女たちが、他人の心の内側にも自分と似たものがあることに気づき、ほんとうのつながりを持てるようになったことが心底喜ばしかった。主人公は御木元玲だが、登場人物のだれもが主役の一冊である。