紙の本
いともたやすく個人情報が悪用される、現代社会の恐ろしさがホラー小説のようにじわじわと伝わってくる
2011/01/25 14:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書子司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自殺した政治家の詳細な行動の記録や、防犯カメラに移ったおぼしい写真や動画などがネット上に溢れることから、どうしてそのような情報をてにできたのか?2人の検事がその真相を調べ始めることが、この物語は始まる。
すぐに、個人のアドレスから資産まで個人のあらゆる情報を把握し、しかも偽造できる犯罪者をテーマにしたJ.ディーバーの「ソウル・コレクター」を思い浮かべてしまった。しかし、この作品は、どうもちょっと様子が違う。「ソウル・コレクター」では情報を操る見えない犯罪者をどう突き止め捕まえるか、というサスペンスに物語の主眼が置かれていたように感じたが、この作品の主眼は、ある意図をもてば個人の情報など簡単に手に入り、それをインターネットなど使えばいとも簡単に流布でき、さらにそれに簡単に踊らされ、付和雷同し瞬く間に増幅させてゆくことの恐ろしさにあるような気がした。ツイッターで有名人のお泊まりをばらしてしまった女性のプロフィールなどがあっという間に暴かれて、ネット上に公開され、自身のブログなども炎上したことつい最近のことである。安易に情報を漏らし、しかもその人間の情報が簡単に突き止められる公開される。巨大な組織がそのようなひとりひとりの情報や企業のデータを自在にできれば、どんなことでもできてしまう恐ろしさ。それがこの作品がひしひしと伝わってきた。
後半、主人公である検事は自身の冤罪を晴らすことができたが、組織の実態は明らかにされず事件は終焉を迎える。組織の規模も、構成メンバーの実態もまったく闇のまま幕を閉じる。中途半端とも構成の破綻とも、作者の力量不足ともとれるが、逆にそうすることによって、ストレートな社会派エンターテイメント情報小説の範疇を超えて、ホラー小説のようなじわっとした怖さが残った。作者の狙いもそんなところにあったのでは……。
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監視社会の恐怖を描いた作品、仕組みについてを表立って出さず
主人公を検察官にした所から捜査も可能でという進め方は
ただ最後の落ちが結局なんだったの?という蟠りを残していて
不満の溜まった内容であった。
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前作「プロメテウス・トラップ」で化けた!?と思われる作者の
最新作。youtube、ニコ動、twitter、ブログ...etcあらゆる
インターネット環境サービスを駆使して一人の人間を
追い込んでいく謎の組織「オーディンの鴉」と対峙する一人の
検事。本人の預かり知らぬところで垂れ流しされる個人情報の数々...想像しただけで怖いっす。
確かに現代に於いてはありそうな恐怖だし、その不気味さや
人々のライト感覚の悪意と卑しい興味本位による嫌がらせは
リアルで凹みます。
ただストーリー的には...ピンと来ない部分も多く...警察の介入を
極端に嫌う主人公の心理や、あまりにも万能な「鴉」による攻撃と情報収集能力、それを探っていく主人公の協力者...こちらの理解を越えて話が進んでいく印象が強い。
そして全く正体が見えなかった「鴉」の人間を追い込んだ主人公。
深夜零時、東京湾マリーナでの対決...闇の中に浮かび上がるその
「鴉」側の人物...
おぉっ!!! .....えーっと...どなたでしたっけ?? 的な肩透かしを
食らったと感じたのは自分だけ!??
いや、でも。先が気になりノンストップ系の充分面白い作品。
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個人情報の流出に始まる事件を壮大なスケールで描いたITサスペンス。扱われている題材がTwitter、2ちゃんねる、ニコニコ動画、YouTube、といったおなじみのサービスなのがよりリアルに恐怖をかきたてる。サクサク読める良質のエンタメ。
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謎の組織オーディンの鴉によって、インターネット上などで個人情報がどんどん晒されて・・・という話。
相手の姿が、なかなか見えてこないだけにかなり怖い、というか気味悪く、なんとなく、オチはみえているんだけれど、ドキドキしながら一気読みした。
この人の作品は、どれも取材や下調べがしっかりされている印象で、いまのところハズレ無し。
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各種書評で、非常に高い評価を得ていたので、とても期待しながら読んだのだが、「あれ??」という感じ。
なんとも中途半端な終わり方という印象です。
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読み終わった
おもしろかった
読みやすかった
実際のリアルで存在する人間
情報によって各々の脳内に描かれる人間
この2つが乖離することによって生じる問題について
ここ何作か考えさせられる作品を続けて読んだ
ネットが存在する前は一人の人間に対して得られる情報は限られていた
今は、見知らぬ有名人だけでなく、SNSなどにより身近な人の情報もネットを通じて得られるようになった
ネット以前であれば、情報の伝播方法が限られていたため、様子がわからぬ状態、つまり冷却期間を置いてから人間同士の問題解決が図られる
一方、ネット後はレスポンスをリアルタイムでやり取りするが故に、熱くなった状態のままコミュニケーションが続き、感情的な爆発につながる結果に至ってしまうように見受けられる
昔、言語を手に入れた人間は、言語を持たぬ時代よりコミュニケーション能力が向上したが故の問題を抱えたのではないだろうか?
なんてことが思い浮かんだ
「進歩」によって手に入れたコミュニケーションの道具を使いこなし成熟するには時間がかかるのだろうな
それにしてもリアルでの会話であれネットであれ、言論による人間のトラブルは言語誕生直後から今日まで続いてる気がして、これは人類が言葉を使ってコミュニケーションをとり続ける限り無くならないのでは
解決するには言語を用いぬコミュニケーション方法を新たに生み出す必要があるのかもしれない
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ITによる便利な生活の裏に潜む危険。本書のストーリーほどではないけど、不幸はいつ誰の身に起こってもおかしくない。と感じた。
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技術的にあり得なくないところで話を展開してるので、リアリティがあってよいが、反面ワクワク感に欠けた。あと、いわゆる真犯人が若干唐突かも。(そういう意味では、星新一の「声の網」の方が好みだった)
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2010/06/03:初福田和代氏作品。個人情報ハッキングもので話の流れはベタですが、現在日本でよく使われている身近なインターネットサービスの名前があちらこちらに効果的に出てくるため、リアリティがあって引き込まれました。もし自分が巻き込まれたらと思うと怖くなります。欲をいえば、もっとそれらのサービスを生かした展開だったらとは思いましたが、手堅くまとまっていて十分面白かったです。
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一人の代議士が自殺するところから、物語は始まる。死んだ代議士の個人情報はネット社会の犠牲に。真相に迫る検事二人にも忍び寄る得体の知れない「オーディンの鴉」
専門用後が多く、読みにくいと言う評判も耳にしたが、特に私は感じなかった。ラストはもう少し、スカッとさせて欲しかった。
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クレジットカードやメールやネットから
個人情報が漏れる?
まぁ実際漏れてないんでしょうが、誰かが
その気になったらココまで個人の中身まで
晒されてしまうもんなのか。
普通に怖い!
と思いながら一気読み。
面白かったーヽ(´∀`*)ノ
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「ヴィズ・ゼロ」で緊迫したサスペンスがよかったので、この作品も期待です。帯にも・・・
「私は恐ろしい」。不可解な遺書を残し、閣僚入り間近の国会議員・矢島誠一は、東京地検による家宅捜索を前に謎の自殺を遂げた。真相を追う特捜部の湯浅と安見は、ネット上に溢れる矢島を誹謗する写真や動画、そして、決して他人が知り得るはずのない、彼の詳細な行動の記録を目にする。匿名の人間たちによる底知れぬ悪意に戦慄を覚える二人だが、ついに彼らにも差出人不明の封筒が届きはじめる…。
とあり、かなり大がかりなネット関係のサスペンスと思って期待しました。
読んだ印象は、「ヴィズ・ゼロ」の時とは違ったかな。主人公の湯浅の印象が当初の印象から悪にひとりで立ち向かう感じがしなかったのが大きな要因だったかも。情報の氾濫や個人情報の漏えいなど、あたかもって印象はありますが、なぜかすっきりしなかったなあ。ラストの謎ときの対決場面も・・・映画のシーン向けかな(^^;
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緊張感みなぎる展開。同時進行する娘の闘病のようす。子どもの話や後輩の恋の話がもっと膨らませられたら、最終的な謎解きの犯人像の意外性が際立っていれば、などと勝手な贅沢を感じるほどよい物語だった。
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『ソウル・コレクター』と完全にカブっている。本作品の方が社会性が強いので事件そのものの質は見劣るが、無意識のうちに情報を垂れ流すことへの脅威はどちらも同じ。
前作の『プロメテウス・トラップ』の対角線上にあるような作品。作者の得意分野が活かされ、落ち着きのあるいい社会派ミステリに仕上がっている。刑事ではなく検事を主役に据えたのがミソかな。調理方法さえ間違わなければ、必ずしも警察にこだわる必要はない。これからも警察ミステリという主流は続くだろうが、設定をある分野に絞った変形バージョンも増えてくるのではないかと感じた。
この作家とはだんだん相性が合ってきた。女流作家のリピート率は低いので今後の活躍に大いに期待する。