紙の本
半分以上が初出作品、シリーズ未読でも既読でも楽しめるハズ!
2011/08/19 00:04
13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:辰巳屋カルダモン - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵画を読み解く『怖い絵』シリーズが人気の著者。
本書はNHKで放映された出演番組のテキストを再編集し、新書化したものだ。
一連のシリーズ未読のため、調べてみたら、本書で取り上げられた33作品中14作品が、シリーズ1~3で既出であった(数え間違いがあったらスミマセン)。
逆に言えば19作品は初出なので、シリーズを未読の方も既読の方も楽しめる一冊だと思う。
西洋画を理解するには、歴史、美術史、宗教など、超えねばならぬハードルが数多い。見る前からあきらめてしまいがちだ。
著者は絵画の「歴史的背景、画家や注文主のエピソード、巧妙に隠されたメタファー」を親しみやすい語り口で解き明かし、知識ゼロの状態からでも理解できるように工夫している。美しいカラー図版の重要ポイントに直接、矢印が示されて、まるで目の前で解説されているようにわかりやすい。
「怖い」を切り口にした一話(一絵?)完結の、物語のような構成が成功している。美しく見える肖像画やのどかな風景画が一転し、じわじわと明らかになってゆく「怖さ」。美術の本なのにミステリーの短編集を読んでいるかのようだ。
絵画鑑賞の枠にとどまらず、他分野にも興味が広がる「こぼれ話」も満載。著者の博識なこと!
たとえば、スペイン・ハプスブルグ王家の人物が歴史映画に登場する場合。スペインのイメージから「黒目黒髪」の俳優が演じるケースがあるが、これは誤り。残された肖像画が物語るように、実際は「金髪碧眼」であった。それは現地の血をまったく入れずに近親結婚を繰り返した結果で……と「怖い」話につながってゆく。実に面白い視点だ。映画も絵画も両方観たくなる!
また、19世紀末に発表された小説『死都ブリュージュ』は当時ヒットし、その影響で絵画『見捨てられた街』が生まれ、さらにオペラ『死の都』につながった、という。一連の芸術の連鎖はたいへん興味深い。ベルギーのブリュージュは今や観光都市になっているそうだ。
本書および『怖い絵』シリーズで、著者は絵画を読み解く楽しみを教えてくれた。
だが、それはひとつの見方を提示しているだけある。絵画の楽しみ方はひとそれぞれであり、正しい作法があるわけではない。取り上げられた作品を「怖い」と感じるかどうかもまったく自由だ。
何の知識もなく対峙した方が、素直に楽しめたり自分なりの発見をすることもあろう。頭に詰まった知識は、直観的に届けられる「何か」を遮断してしまう可能性もある。
「予習しておかなくてはいけない」または「まっさらな心で感じなくてはいけない」、そんな極端な思い込みが先行して面倒になり、絵画の楽しみから遠ざかってしまうことが一番「怖い」と思う。
頭にたくさん詰め込んで見るもよし、ぶらっと見るもよし、楽しみ方は各人にゆだねられている。
そんな、豊かな美術の楽しみと、そのあり様をあらためて考えさせられた。
紙の本
名画の裏側を生々しく解説!
2016/02/29 23:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術には詳しくないながらも何となく、一種好奇心から
美術館巡りをしながら、名画を鑑賞していました。
生来ズボラなので画集鑑賞くらいでも満足なんですが、
本物に触れると、その迫力に圧倒されてました。
本書を読み、名画に隠された歴史的背景を垣間見ること
が出来て、かつて見た名画の迫力に得心しました。
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絵画を鑑賞するのに、完成より知識が必要と
思い購入。やや斜め方向からのアプローチだと思う。
が、とても面白い。
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今年最も熱中して視聴したテレビ番組、NHK探求この世界『「怖い絵」で人間を読む』。毎週月曜日の夜はほんと楽しみだった。番組テキストももちろんあるのだが、改めて書籍化された。中野先生の本は最近立て続けである。こうした出版社による人気作家の乱発姿勢、敬愛する中野先生でなかったら「何度も同じネタ使い回してんじゃねえぞ!」と言ってしまうかもしれない。ただ念のため言えば、オリジナルの『怖い絵』単行本シリーズとも違う、テレビ版テキストとも番組中で語られた内容とも違う、カラー図版たっぷりで、中にはオリジナルの『怖い絵』にも出ていなかった絵が詳しく紹介されているお得感は保証する。
(続きはブログで)http://syousanokioku.at.webry.info/201011/article_6.html
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立ち読み:2010/9/3
何でこんな本出したんだろう…。
ほとんど今までの本(『怖い絵1〜3』『名画で読み解く』)の焼き直し。
取り上げている絵はもちろん、それらに付された解説もどこかで見たものばかり…。
極めつけは絵画に矢印をつけて「清廉でありながらどこかこの世のものでないような老成した表情」「力なく椅子に載せられた右手」などの解説を付す、という安っぽいレイアウト。
だれだこんな構成にしたの…。
矢印解説の面積の文だけ絵がちっさくなってるし…。
新しい絵も数点あるが、ですます体だと中野氏の文章の魅力が半減している気がする。
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『怖い絵』を読んでたら、内容が重複する部分があるものの、この著者の文章自体が好きなので、特に問題なし。内容の復習が出来た感じかな。
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NHKの番組の方は未視聴ですが、引き出し線のついた解説などがわかりやすかったです。
各章ごとに主題がありそれにあわせて絵画の解説がなされているのですが、前半は光文社新書の『名画で読み解く~』シリーズと重複する部分が多くそちらを先に読んでいると少し退屈かもしれません。
番組テキストが基であり厚さ的にも仕方の無いことですが、タイトルから想像するような人間を深く掘り下げたものと言うよりは、時代背景や作者の解説と言った方が正しい感じです。
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中野氏の著書はコレが初めてなのですが、なかなか面白い視点から書かれておりました。
やはり何より怖いのは人間です。
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早稲田大学講師で西洋史を専門とする著者が誘う、怖い西洋絵画の本。
絵心もなければ絵画を嗜む能力もない私だが、西洋史の史実に基づいた絵の解釈は斬新で正直興味深かった。 絵を見る力というのは、デッサン力や色使い等を見るものだと思っており、目の肥えた人でなければ絵画を楽しむことは出来ないと思い込んでいたのだが、絵が描かれた時代背景と被写体となっている人物の素性を知った上で絵を見ると、画家が暗喩的に絵に盛り込んだメッセージなどが読み取れて、西洋絵画が近しく感じた。
「怖い絵」シリーズを著している著者だが、絵が怖いというよりも15世紀から19世紀までの人間模様がある意味怖いと言うべきなのだろう。 写真などという物がなかった昔に絵画という技法を通してその時代を垣間見ることが出来、単なる文章による歴史学習よりはリアリティをもって時代に接することができる。
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以前この著者の『怖い絵』シリーズを読みました。その時扱われていた絵画と、今回の本で扱われていた作品が結構被っていたので少し迷ったのですが、やっぱり購入して良かった。とても面白かった!
暗い、不気味な絵が好きなので、この本で紹介されている作品も元々好きなものが多いのですが、肖像画は主に筆のタッチや構図なんかを楽しむだけで、まぁ実物よりも割り増しで描かれてるんだろうなぐらいは思っていましたが、そこにもっともっと色々な意味が隠されているとは考えた事がありませんでした。
『カルロス二世』なんて、割り増しで描かれてるにしても、あんまり美形じゃないねなんて呑気な事を思っていたくらいだったのですが、この本を読んで改めて絵を観ると、本当だ、なんて怖い絵!
本の“はじめに”で書かれているように、私も絵を観るのに余分な知識は却って邪魔になるんじゃないかと思っていた部分があります。好きな絵は好きな絵、それだけでいいじゃないかと。
でも、知識ってやっぱり邪魔になるものじゃないんですね。
知識があってもなくても、好きな絵は好きだし、嫌いな絵は、絵柄は嫌いでも、観るのが面白くなってくる。
その絵が描かれた時代の歴史をちゃんと勉強してから絵を観るのは大変なので、私みたいな怠け者には、この著者の本は本当に有り難いです。
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美術館を巡って絵画を見始めた当初は、ゴッホが好きで、それからレンブラント、今はベラスケス!そしてレーピンというすごいロシア人も知りました。西洋絵画入門書としてはうってつけだと思います
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絵画が人間の生みだした文化であり芸術である限り、それは人間と世界を読み解く重要な要素の一つである。
寓意に関しては大学でもっとちゃんと勉強してればなぁと思うほど面白い。
さらに描かれた物の意味やその習俗などとても興味深い。
なるほど美術館ではこれらの要素を鑑賞して「探し」「勉強」するものなのかもしれない。
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おもしろかった。
「怖い絵」ってどんなだろって興味津々だったけど、西洋史とか全然詳しくないから「怖い」より「教養が身につくなぁ」って印象の方が強かったかな。
暗い絵ばっかりだったけどね。
勉強になった。
プラド美術館は行ったことあるので、特に興味津々だった。
あと、イエスの絵、箱根?で小学生の頃見たの思いだした。
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たとえばドガの「踊り子」。
その絵が描かれた当時のパリでは、現代とは異なり、バレエはオペラの添え物でしかなく、バレリーナとは下層階級出身の、娼婦と変わりない存在だった。その事実を知った時、愛くるしい踊り子の、それを描いたドガへの印象は大きく変わる筈。
絵画は色彩、タッチ、雰囲気などを心で味わうだけが鑑賞ではない。
描かれた時代特有の常識、文化による背景、注文者の思惑、画家の計算、意図的に隠されたシンボル、メタファーを“知識”で読み解く時、描かれた王子の、風景の、そして神の運命の残酷の本当の意味を知る。
その血の純潔ゆえに滅び行くスペイン・ハプスブルク家の末裔を描いたディエゴ・ベラスケスの『フェリペ・プロスペロ王子』
姉の見合いの席で若き皇帝に見初められ、姉の代わりに彼の皇后となり、他の王族の代わりにアナーキストに暗殺された悲運の女性を描いたフランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルターの『エリザベート皇后』
旧ソ連政府の圧制を、かつてのリューリク王朝のツァーリズムの圧制を描く事で暗に批判したイリヤ・レーピンの『イワン雷帝とその息子』
革命の2年前、不幸の予感に満ちた母子の肖像を描いたエリザベート・ヴィジェ=ルブランの『マリーアントワネットと子どもたち』
そして、聖アントニウス病を患った人々が、死を賭した巡礼の果てに出会うマティアス・グリューネヴァルトの『イーゼンハイムの祭壇画』
時代、文化、そこに生きた人々のさまざまな絡み合いを読み解くうちに、あなたが良く知っていたはずの絵の、当たり前だった様相が一変するかも知れません。
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中世ヨーロッパの絵画はよく目にする機会がおおいが、絵の中に隠された深い意味を知ると違った視点で観る事ができる。
絵で描かれる作者の訴えは文章よりも大きな表現力を持ち、無限に想像力を掻き立てる。
この本ではカラーで絵画が掲載されており、文章も繊細で細やか。最後は自分が絵の中に入り来んでいるような錯覚に陥るような構成になっている。