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夢の棲む街、月蝕、ムーンゲイト、遠近法、童話・志那風小夜曲集、透明族に関するエスキス、私はその男にハンザ街で出会った、傳説、月齢、眠れる美女、天使論。
作者自ら選んだ傑作11を収録。
『歪み真珠』で興味を持った山尾さん。
かなり豪華な内容の新刊が出たとのことで借りてみた一冊。
ムーンゲイト、志那風~、眠れる美女、辺りが好きだなぁ。
志那風~は帰還、志那の吸血鬼(ヴァンピール・シノワ)、スープの中の禽(とり)、貴公子、恋物語の5つの物語が入っているのだけれど、狂おしい愛が描かれていてとても素敵でした。
あひる、苦しいか。
いいえ、それほどでも。
それほどでも、あなた・・・。
料理人とあひるの恋が一番胸に残ったなぁ。
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読むのに時間がかかりました…。見たことのないものをイメージしながら読むし、読んでる間どっぷり浸かってるので心に余裕のあるときしか読めないし。休日の起き抜けとかがいい。いろんなイメージが交ざりあって、山尾さんの世界が広がっている。「童話・支那風小夜曲集」が一番読みやすく、楽しい。「月齢」は書き出しに痺れたし、「夢の棲む街」「眠れる美女」は崩壊のイメージに酔う。「透明族」は頭のなかにアニメーションが浮かぶね。「天使論」「月蝕」は京都の学生生活がなつかしい。
何となく、作者の息遣いが伝わるような作品ばかり。ある人の頭の中にあるイメージが、そのままのかたちでないにしても、他人に伝わるってすごいな。それも、あえて言葉をもってして。
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サブタイトルに「山尾悠子初期作品選」とあるように、伝説の作家である山尾さんの若き日の発表作品から、デビュー作を含む11編の作品が著者自身の手で選ばれ収録されている。 作風は幻想文学と言われるように、精緻で絢爛たるイメージと、厳選された言葉のきらめきが光る作品の数々。月や星座をはじめとする宇宙や、どことも知れぬ古い王宮や地の果ての廃墟などなど、、、時空を越えて飛び交う想像力が常人のそれを凌駕している。これを20代そこそこの女学生が書いていたとは驚きの一語。登場する時代が早過ぎたのか、あるいは思うところがあったのか、この本の巻末作品「天使論」(昭和60年・1985年)を発表してから、長い長い休筆期間に入ることになったのだった。 収録作品の中では、「童話・支那風小夜曲集」(昭和55年)、「私はその男にハンザ街であった」(昭和56年)の2作品が印象に残った。よくバロック的なと言われる絢爛たる中世風の世界が舞台となりがちな山尾作品だけれど、この2つは中国とやや近代的な石畳の町を舞台にした作品。
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山尾悠子さんという作家を知らなかった。
何か面白い本はないかと物色していると、「夢野遠近法」という気になる大目が目に入った。手に取ってみると表紙にバロック時代の画家モンス・デジリオの絵が使われていた。これはただ者ではないと即決。
その日のうちに夢中で読み終え、すぐに現在手に入る山尾さんの本をすべて購入。
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とにかく寡作の人なので、チビリチビリ、なめるようにしながら半年くらいかけて読み終えた。
「夢の棲む街」のラストでは、情景が脳内にスローモーションで再生され、「遠近法」の“腸詰宇宙”に圧倒される。「透明族に関するエスキス」は、「デジスタ」の年間大賞を獲るような上質の短編映像を見た思い(と思ったら、作者自身による解説で、CGのようなイメージがまずあってそれを描写した、というようなことが書いてあり、納得)。
山尾悠子の作品を読むたび、こんなビジュアルを描く力が自分にもあったのかと、驚かされる。もの凄く凝った質の高いアトラクションを楽しむような感覚。その乗り物のレールを敷いたり、動かしたりしてくれるのは彼女の文で、自分はコースを進んでいくだけだけれど。それでも、これが自分の頭の中だと思うと、不思議だし、ちょっと嬉しい気分でもある。
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合わせ鏡の世界。果ての見えない奥行きの中に、無数の「此処ではない世界」が存在している。そう、確かに存在している。
冷たい鏡面の向こう側。
『遠近法』で描かれる「腸詰宇宙」を、眼窩の奥に思い描いてみる。私は「腸詰宇宙」の夜が好きだ。冷たい石畳の上、上下対称の欄干にもたれ、青い炎の落下を見詰めていたい。月光は鎖骨の窪み溜まり、腹には青い波紋が広がるのだ。
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高価な『山尾悠子作品集成』の廉価版。
同書から選ばれた11編を収めた、
お財布だけでなく手(腕)にも優しい軽量タイプ。
エッセイ4編が収録された別冊(中綴小冊子)が付いていて
得した気分。
初めて読むはずなのに既視感たっぷりで頭がクラクラした。
きっと作者の文章で酔っ払ったせいだろう。
幻想文学というより、奇想ギャラリーといった印象。
結構、皮肉に溢れているので、
幻想やファンタジーなどの単語から、
キラキラしたロマンティックな風景や人物を思い浮かべる人には、
毒気が強いからお薦めしない。
甘くない嗜好品のようなもの。
そんな中で唯一、
我々が暮らす現実世界と繋がっている「月蝕」が個人的ベスト。
*****
【2020/02/11 付記】
収録作は、
夢の棲む街
月蝕
ムーンゲイト
遠近法
童話・支那風小夜曲集
透明族に関するエスキス
私はその男にハンザ街で出会った
傳説
月齢
眠れる美女
天使論
(自作解説)
+
エッセー抄本*夢の遠近法 栞
・人形の棲処
・頌春館の話
・チキン嬢の家
・ラヴクラフトとその偽作集団
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もしこの人の作品に出会わなかったら、自分の人生は違ったものになっていただろうと思える作家は多くない。
これまでの人生を振り返っても、幼少期のアーサー・ランサム、思春期の光瀬龍、そして山尾悠子くらいしか思い浮かべることができない。
20歳を過ぎてからはそこまでの出会いが一度もないという事実を思うと、幸福な読書の楽園から永久に追放されてしまった気分になるのだが、それはさておき。
「夢の棲む街」「ムーンゲイト」「遠近法」といった初期の短編には、純粋に言葉だけで構築された世界がある。それは、若い日の自分が焦がれ続けて、どうしても手に入れられなかった世界でもある。
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個人的な見所は本編ももちろんだが、付録の冊子にもある。
特に痛烈なラヴクラフト評はサブカル批判としても有益。
山尾悠子の作品自体が幻想文学に対して禁欲的であり、澁澤龍彦などの正統な流れを踏襲したものになっている。収録された短編で面白いのはやはりボルヘス的に結果として成立したという『腸詰宇宙』。他にも中国における吸血鬼を扱った短編が魅力的だったか。
山尾悠子の作品は幻想文学入門に最適であり最高である。
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ムーンゲイト、志那風~が好き。
全編を通して、怪しくも美しい幻想的世界を硬質な鉱物のような文章で書きあげています。やはりこの無機質さが我々読者の想像力を掻き立てるからこそ、山尾作品はこんなにも魅力的なのでしょう。
特に中国に住む吸血鬼の話、アヒルと料理人の話には痺れました。
美しい花には毒が有るのではなく、毒が有るものほど美しい。
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行間から、はらはらほろほろと真珠の粒が、絶える間も無く零れ落ちてゆく
様な幻覚を視る。
それでいて、決して装飾的では無い
文体はラベルの楽の音の様・・ ・。
古風な漢字と、その横に付された流れるようなルビが文章の雰囲気を形成
して美しい。
文体の余韻、ページの余白、これこそ
夢の遠近法かも知れない。
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間違いなく私の読書歴の頂点に位置する作家になりそう。
『夢の棲む街』★
『月蝕』★
『ムーンゲイト』★
『遠近法』★
『童話・支那風小夜曲集』
『透明族に関するエスキス』
『私はその男にハンザ街で出会った』★
『傳説』★
『月齢』★
『眠れる美女』★
『天使論』★
付録
『人形の棲処』★
『領春館の話』★
『チキン嬢の家』
『ラヴクラフトとその偽作集団』★
記憶に強く残っている作品に星をつけようと思ったが、
そんな試みもくだらないくらいにそれぞれが強い印象を残す。
ここまで鮮烈で確固としたイメージを植えつけられるとは。
驚愕に近い。
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山尾悠子作品を読んでると「天使のたまご」(押井守)とシルヴァン・ショメのアニメーション(特に「老婦人とハト」)が思い浮かぶ。
読んだそばからイメージが浮かんでくる、なんというか視覚的な文章。
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今回、始めて幻想小説というジャンルを読んだ。
正直なところ読んでいて、ほとんどの話がよくわからなかったが、話の雰囲気に少し惹かれた。
なんとか、現代の日本っぽいのが舞台の「月蝕」は辛うじて意味がつかめたが、内容はまあ普通の話。
自分の好みとしては、題名は忘れたが、料理人と鳥の話がよかった。
次にこのジャンルに挑戦するときは、文章を純粋に楽しめるようになっていたい。
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「幻想小説」と呼ばれるものは概して苦手なのだけど、ごくたまに心をわしづかみにされるようなビジョンを描き出す作品に出会うことがある。その筆頭が、本書にも収められている「遠近法」だ。SFのアンソロジーで読んだとき、そのイメージ喚起力に完全にノックアウトされた。
「作品集成」にはちょっと手が出なかったのだが、これならばと買いこんでみたものの、最初の「夢の棲む街」がどうにも苦手な部類の「幻想小説」で…。「遠近法」だけ読み返して積んであったのを、なんとなくまた読んでみることにしたのだった。
「夢の棲む街」は、やはり好きとは言えないけれど、独特の硬質な世界に圧倒される。これが大学生の時のデビュー作とは。著者が巻末の「自作解説」で「すべてがここにある」と語っているのに納得した。グロテスクな要素もあり、血や粘液が流れる描写もあるというのに、冷え冷えとしたノーブルな空気に支配されている。
圧巻はなんといっても「遠近法」。何度読んでもすばらしい。SF的想像力で作り上げられた異世界には傑作が数々あるが、この「腸詰宇宙」は紛れもなくその一つだと思う。無限に続く塔の内側に階層としてある世界。その中を巡る太陽と月。《蝕》という現象。まさにめくるめくようなイメージで、ため息が出るばかり。断片的な記述を重ねるスタイルも効果的だ。世界の真実を求め、九万階上方の回廊を目指した人々の挿話が、残酷で、美しい。ラストの「ウロボロスの蛇」でとどめを刺されてしまう。「語り手」を揺らしてあるのも浮遊感を高めているのだろう。
本書ほど「自作解説」が役に立ったことはない。「月蝕」や「童話・支那風小夜曲集」は解説のおかげで、なるほどねえと楽しむことができた。著者は自分より少し年上なのだが、同じ京都で学生生活を送ったことを初めて知り、にわかに親しみも湧いた。初期の作品は京都で書かれたものも多いようで、さり気ない書き方ながらその頃への愛着が伝わってきた。