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私の現在の世界経済に対する解釈と合致する本でした。内容はそこまで濃くないですが、簡潔に要点を押さえてまとまっており、①コストパフォーマンスの高さ、②非常に分かっている(偉そうですんません)世界経済の解釈が行われている、点に於いて☆5にさせて頂きました。
まず、近代の先進諸国が現在の新興国などで安く資源を買入、付加価値を付け、高く売ることで成長を続けて来たと言うところから始まります。資源ナショナリズムに依って資源の支配権が薄れ、資源価格が高騰し、これによって新興国の交易条件が先進国に近づき、実体経済に於ける先進国の成長モデルが崩壊したと説明されています。
米国は実体経済で成長を続けることが出来なくなった為、金融経済を拡張させ、莫大な利益を生み出そうとした。ニクソンショックによって金の裏付けが無くなったドルを支えるのは資源、つまり石油であり、イラク戦争はフセインのユーロシフト宣言の結果として引き起こされたものである。何故なら、資源ナショナリズムによって既にセブンシスターズなどに依る石油支配は終わりを告げており、米国はその対抗策として金融経済の拡張、石油の証券化を行った為、実質的にイラクに権益を欲していなかった。金融経済の拡張とドルへの資本の集積の基盤となる原油-ドル支払い制度を守る為にイラク戦争は行われた、と。アメリカに領土的野心が無いことを、地政学(本文では明言されていない)的な見地から、シュミットなどを引用して陸と海のせめぎ合いを例示したところが好印象です。つまり植民地モデルの終わりを示唆している訳です。
ちなみに資源価格に支払われる価格は5兆円程度から25兆円に拡大し(つまり経済成長分が全て産油国、資源国に流れた)、企業に於ける利益の上昇分を喰らい尽くした。結果企業は人件費を下げざるを得なくなり、これが実質的な利益増加分とされてる。給与の減少傾向は決して不況が原因ではない、と。私もその通りだと思います。
地政学的なネタとしてユーラシアについて触れたいのですが本題では無いので置いておきます。世界の覇権は実体経済の成長、実体経済の低成長に依る金融拡張と外部への投資、利率の低下、衰退と覇権の移行の連続であると示唆しており、条件空間(法治空間)と平滑空間(条件無し(詰まり外部)空間)のような概念空間を作り出し、これを略奪行為などによって搾取し、実体経済が成長する。これに行き詰まると金融の拡張を行い外部投資が行われ…と言う流れですね。
現在に於いては投資主体(市場の中心)と投資元の分離が行われている為、これまでの歴史とは違ってきたと言う点にも注目しています。つまり、欧米は実体経済の中心では無くなったが、金融市場の中心となり資本を集め、これを新興国に投資することでバブルを起こし利益を得て来たと。その通りですね。これを自国民に対して行なってしまったのが所謂リーマン・ショックなどだったと。
また、資本主義と市場経済を同視していない点など、現実的な認識だと思います。ハト主義の人達は如何せん軍事主義を嫌いますが、資本主義の原点が略奪・搾取行為によって成り立ったのは事実であり、市場主���の主体たる経済と市場を形成する政治の別離不可能性を、グローバリズムと軍事プレゼンスの観点から考えているのが中々秀逸ですね。当然とも言えますが。
バブルの原因に関しても述べていますが、これはいいでしょう。
実体経済を成長させることの出来なくなった先進国に於いて、低経済成長は必然であり一過性の問題ではないこと、グローバリズムによって先進国と新興国の所得が平均化され、賃金が減少すること、物価が下がること、資源価格の高騰が不可避であること、それに伴う原材料費の上昇を加味した円高の利用が有利であること、金融経済を実体経済以上に拡充した世界でリフレ派のぎ論が無駄であること、あとは日本の末路と明るい話題として環境規制などによる成長領域の創設などについて触れていますね。グローバル化に依って中流階級が減り、先進国に於ける金融主体とバブル実体経済主体が金を得て、それ以外はぐっばいするような構造を捉えているのも中々鋭いと思います。
議論形式なので読みやすいですし、中々的を得た議論をおこなっていると思います。これに加えて地政学的議論、エネルギー戦略、資本収支戦略、次世代技術戦略を加えると良い感じで世界情勢が議論出来るかなーと。
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水野和夫、萱野稔人著「超マクロ展望世界経済の真実」集英社新書(2010)
* 交易条件といはどれだけ効率よく貿易ができているかを表す指標です。
* 産油国で資源ナショナリズムが起こったことが、オイルショックの原因です。それまで
植民地だった資源国が独立を果たし、自国の資源を価格もふくめて管理しようとした
(石油の国有化)ことがオイルショックの歴史的前提です。それまでは、メジャーを通
じてアメリカやイギリスが石油をコントロールしていました。有名なものはセブンシス
ターズで、これはオランダ・イギリス・アメリカの企業しかなく資本主義の歴史の中で
覇権を獲得した国だけである。その後、OPEC の発言力が一気に高まりました。再びそ
の価格決定件をアメリカが取り戻そうとして1983年に出来たのがWTI(ウェスト・
テキサス・インターメディエート)先物市場です。石油を金融商品化することで取り返
そうとしました。
* 60年代までは石油メジャーが油田の採掘も価格も仕切っていた。これは要するに定刻
主義の名残です。世界資本主義の中心国が植民地をつくり土地を囲い込むことで、資源
や市場、労働力を手に入れる。その支配のもとで経済成長をしてきた。これも、脱植民
地化運動や、資源ナショナリズムの高揚で崩れました。
* 脱植民地化の家庭で経済を支配する方法は一気に抽象化しました。つまり領土を経由せ
ずに他の経済を支配する方法へとシフトしたのです。脱領土的な覇権の確立、これがお
そらくグローバル化のひとつの意味なのです。
* イラク戦争は、石油そのものではなく、ドル基軸通貨という国際的な経済ルールをめぐ
って起された戦争である。石油について言えば、価格決定がアメリカの先物市場にゆだ
ねられていることと、石油をドルでしか売買できないことが経済システムの根幹にあり
ます。
* 71年にニクソンショックがあり、ドルと金の兌換が停止されて以降、ドルが基軸通貨
としての価値を実質的に担保できるのは石油とのつながりだけだった。それがなくなる
とドルは基軸通貨であることの土台を失ってしまった。そこにフセインがドルの代わり
に出してきたのがユーロであり、アメリカを震撼させることになった。
* 95年にルービン財務長官が「強いドル」政策への転換を表明。これで世界からどんど
ん投資マネーがはいるようになり、アメリカはそのマネーを運用することで経常収支赤
字が膨らんでも最終的に利益を出せる仕組みをつくった「アメリカ金融帝国」の成立で
す。アメリカがこの強いドル政策により国内にバブルをつくって金融市場を拡大、今回
の金融危機へと至るまでの過程はじつは、ドル対ユーロの潜在的な戦いの過程だったと
いえるのでは?イラク戦争はその潜在的な戦いの現実化した姿かもしれません。
* ちょうどオイルショック(73年)やベトナム戦争(75年)が終わったあたりから実
物経済から金融経済への方向転換。先進国は交易条件が悪化したことで実物経済では稼
げなくなってしまった。そこに金融に��け口を見出していくようになった。金融機関の
利益が全米企業の半分(49%)を占めるほどになり、しかしそこで働く人は5.3%。
ニクソンショックで変動相場制が導入され、それにともなって通貨先物市場が導入され
て金融市場が広がっていきました。
* イタリア、オランダ、イギリス、アメリカと世界資本主義の覇権が移転していく中で、
そのつど生産拡大の局面があり、その後、それがいきづまると金融拡大の局面がある。
それによって、増殖された資本が、バブルのあとにもっといい投資先を見つけて覇権移
動が起こる。アメリカの典型もフォード式大量生産です。その中で一気に経済成長がお
こり、そして他国もそれに追従して資本蓄積を目指すため、アメリカ型の生産様式が世
界標準となる。耐久消費財も社会にいきわたってしまえば市場が拡大しなくなってくる。
そこで高度成長が終わり低成長時代に入る。その後に起こるのが金融拡大の局面です。
* これからはルールを設定して世界資本主義をみずからに有利な形でコントロールする。
今後考えられるのは、覇権と工場が分離するということです。今までは覇権を持つ国は
同時に世界の中心的な生産拠点でした。しかしこれが分離する可能性が大いにあります。
中国やインドが世界の工場になるけれども、資本をコントロールしたり、世界経済のル
ールを決めたりして中国やインドの成長の余剰を吸い上げるのは別の国になる可能性
がある。そうしたシナリオがあるとすれば、今後はアメリカをヨーロッパの連合体が軍
事と金融を牛耳って世界経済のルールを定めることになる。例えば、サム寸の利益も半
分以上は欧米系の資本に吸い上げ荒れている。また、中国の電気自動車BYD もアメリ
カ資本が入ってきている。つまり、実物経済のもとで利潤がもたらされる場所とその利
潤が集約されコントロールされる場所が、資本主義の歴史上はじめて分離するというこ
とになる。
* つまり、資本主義は決してたんなる市場経済として成立してきたわけではない。長い間、
先進国が軍事力を背景に有利な交易条件を確立し続けることで成立してきました。そう
いう意味で、資本の蓄積の原理は交換よりも略奪に近い部分がある。資本主義は市場経
済とイコールではなく、国家の存在が深く組み込まれている。資本主義以前の社会にお
いて略奪は第一級の経済活動であったのと同じように、略奪というのは本質的なファク
ターだということを指摘したい。
* 日本の経済は今後どうなっていくかということだが、最も大きな問題として、低成長時
代に入ったにもかかわらず、経済成長を前提として税収・歳出構造のままであることで
ある。社会保障・公共事業の削減があるが、これは成長時代の構造になっており社会保
障に手をつけることは現在難しい。つまり、低成長を前提として脱近代的な社会システ
ムをつくらないかぎり財政赤字などの問題は根本的には解決しない。
* 日本では97年から国債の利回りが2%をきり、この時点で完全に低成長時代にはいっ
た。その結果、インフレを起せる条件もなくなったということを認識すべき。インフレ
が喚起できるのは、耐久消費財が普及している過程において出る。日銀が量的緩和をし
てインフレ政策を取っていると分かれば「3円後に値段があがるならローンをして今買
おう」となります。現在は、耐久消費財が社会にいきわたってしまい、新しく欲望を喚
起できない状態ですので量的緩和は事物部経済の物価の上昇にはつながらないのです。
* 円高と円安どちらにメリットがあるか。これは円高の方がメリットがあるように思われ
ます。円高は交易条件を改善させることができるためです。さらに輸出先をアジアなど
の新興国にシフトしていく必要があります。確かに円安は輸出産業にメリットがありま
すが、輸出のメリットをうける産業の経済規模と、資源を輸入する素材産業の経済規模
を計算すると、後者の方が大きい。さらに、ドルは、基軸通貨としてのプレミアムが剥
げ落ちてきているため、円高が進んでいるとしてもそれはドル安の裏返しになります。
そうであるなら、日本側から円高を阻止することは難しいです。中期的にはまだドルが
基軸通貨の役割を果たしていくと思われるため、日本としては円高・ドル安を受け入れ
て、輸出先をアジアに一層シフトしていくことが必要です。そうすれば、資源を安く輸
入して、強い通貨であるアジアに輸出することで悪化し続けている交易条件を改善する
ことができるのでる。トータルな経済規模で考えていくと、円高にメリットがあります。
もうひとつの理由として、円安だと今度人民元が自由化されたときに円資産の流出を止
められなくなってしまうということがある。また、円安は輸入インフレを通じて所得減
をもたらすので、生活水準を引き下げるだけです。
* 国家など必要ないといわれていた金融資本主義も結局は国家なしでは成り立たなかっ
た。社会の中で国家だけが市場の論理を超えて税金という形でお金を調達することがで
きる。市場とは別の論理に立脚しているからこそ、市場の矛盾は国家によって肩代わり
できる。
* 日本はオイルショックを省エネ技術で何とか克服。こうした事態を考えると、国家によ
る規制と市場での競争との関係を問い直すことが、おそらく低成長時代における経済戦
略をかんがえるときの1 つの切り口になるかと思います。環境規制によって、技術の市
場価値を高め、新しい利益の領域を作り出していくことは必須の課題です。先進国では、
ゼロ成長が続いても、今度世界的にも規制強化されてくる環境の分野でアドバンテージ
をもつことができれば、そこにプラスアルファの利益を獲得することができるでしょう
きあら、そういう点でも環境規制による産業の育成は重要です。
* ルール設定がいかに富をもたらすのかという資本主義の基本に立ち返る必要がある。ち
ょうど環境規制が特定の技術に市場価値を与えるように、市場のルールというのは技術
なり知識なりを生かす知的フレームです。
* 国の役割も公共投資によって需要を喚起することが資本主義における国家の役割でし
た。しかしこれからは、規制によって市場に新しい市場を創出するという役割が国家に
求められるようになるでしょう。
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哲学者の萱野稔人氏とエコノミストの水野和夫氏のこれからの世界経済がどうなるのかについて、資本主義500年の歴史、覇権国家の移り変わり(スペイン→オランダ→イギリス→アメリカ)の流れを追いながら今後の展望を語り合っています。
印象的なのが、覇権国家が斜陽に向かうときは、実体経済から金融経済化していくということでした。そういった意味ではアメリカも完全に金融経済化しているということで、今後崩れいく予兆なのかと思わせるものでした。
また、日本で今も続いているデフレについて、たとえば森永卓郎氏や勝間和代氏は、いわゆる紙幣をどんどんする量的緩和で乗り切ることを主張していますが、この本の二人の対談で、大きな流れで見ていくと、そもそもの体制を大きく変える(パラダイムチェンジ)をしないとこのデフレを克服することは難しいというもので、2011年元日の朝生で、森永氏・勝間氏と池田信夫氏がデフレ対策について激論になっていましたが、改めて、この4者でデフレについて議論し合ったらどうなるんだろうと思いながら読み進めました。
今の日本のデフレ状況や世界経済の展望を、近視眼的に、今見える現象だけでなく、資本主義の500年の歴史から今後を見るという”超マクロ”で考える。新たな視点を得るという意味でお勧めです。
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「アダム・スミス以降、経済学というのはすべて国民国家体系を組み立てられた経済学です。」とあった。グローバリゼーションによって資本が国際的に移動するようになると経済理論の多くは役に立たないとのことです。うーむ、そうだったのか、こりゃ迷走するのも当然ですね。
終章に環境規制などで市場を作るとありますが、これもグローバリゼーションで考えると日本国内だけの規制ではあまり意味が無さそう、中国がやインドが自分たちの成長を鈍化させてまで乗ってくるとは思えないのだが。
暗い現実には納得感があり、明るい展望には懐疑的になる本書、うーん。。。
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読後備忘録
1970年代前半より、先進国の交易条件が悪化し、
実物経済レベルでリターンが低下。
原油価格の高騰等、資源を安価に仕入れることができなくなった。
実物経済から金融経済へ。
アメリカは石油の金融商品化、ドルの基軸通貨体制に基づき
金融帝国を築く。金融によりリターンを得る。
イラク戦争はドル基軸通貨を守るための戦争
(イラクが石油の決済をユーロで行うとしたため)
軍事力は経済システムの維持のために利用
利子率の低下は経済システムの限界
今回の金融危機は歴史的な構造転換
(新興国でのバブルがまだある)
経済成長の流れ
実物経済の発展⇒飽和化、成長の限界⇒金融経済の発展、バブル
⇒バブル崩壊、利子率の低下⇒構造転換
中世ヨーロッパ、イタリア等の発展、飽和化
⇒新興国オランダへ投資
⇒チューリップバブル、スペインへの貸付
⇒スペインの債務不履行
⇒陸から海へ(空間革命) 海の覇者が覇権国へ
⇒イギリス、東インド会社設立⇒…
⇒空の覇者が覇権国へ
⇒アメリカへ
⇒金融危機
⇒次の覇権国は?
日本の経済は先進国を先行している。
バブル崩壊、デフレ、低成長率、低利子率
アメリカより、早くバブルが起きたのは
資本の蓄積が国内あったため。
アメリカは資本の蓄積がなかったため、
強いドル政策により、国内に資金を流入させていた。
日本の財政は低成長率を前提に予算を組む必要がある
人民元自由化までに立て直す必要がある。
資金流出して、資金を集めるためには金利の引上が必要があるが、
金利を引き上げたら利払いが困難になる
円安は資源高と合わせて輸入インフレを起こす可能性
円安、金利上昇のワンセットで財政を崩壊させかねない
原油価格と日本の大企業製造業の売上高変動費率の推移は
ほぼ一致
低成長時代の経済戦略(構造転換?)として、
環境政策等の国家による規制が考えられる。
一人あたりGDP2万ドル(2:1)が先進国と対等関係の目安
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サウジアラビアとアメリカのあいだにはアメリカ軍がサウド家を守るという公然の密約がある。その変わりサウジアラビアはアメリカの国益に貢献する。
ヘゲモニーが移動した国では利潤率が高い。スペイン、オランダ、イギリス、アメリカとヘゲモニーは移動してきた。
かつて世界を制するのは陸、それが海になりオランダ、イギリスが台頭してきた。そのあと空を制するアメリカがでてきた。
軍事力以外にヘゲモニーを握るのは情報。アメリカがまだ握っていくだろう。中国はそういう意味ではまだヘゲモニーは握れない。単に生産拠点が移っただけ。
レーガン政権はソビエトと軍拡競争をしていてその財政を日本の生保が負担していた。これはかつての16世紀のスペインとイタリアの関係に似ている。スペインの財政はイタリアが支えていた。オランダの独立を阻止することができなかったスペインはオランダとの戦争で積み上げた借金を返済できずにそのたびにイタリアの銀行家に借りていたが、そのイタリアも結局耐えきれずに没落していく。
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歴史を絡めて経済を分析する手法を展開する書籍が欲しかったので購入。
新書にしてはかなりハイレベルで参考になった。これまでにない分析の切り口を得ることが出来た。
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成長を前提とした経済システムは限界を迎えており、それに固執する先進国は財政破綻の危機に瀕している。
著者によると、この現象は、中世封建社会から近代資本主義社会への転換に対応できず、旧システムに固執したことにより財政破綻した16世紀のスペインの姿によく似ているという。
500年に及ぶ資本主義の歴史が語られ、オランダ、イギリス、アメリカがどのように世界経済の覇権を握り、失っていった(いく)かが俯瞰されている。歴史が、現代の諸問題を考える示唆に満ちていることを改めて教えられた。
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資本主義の誕生からこれまでの歴史を踏まえて、現在の世界経済危機を捉え、今後の資本主義、今後の世界経済のあり方を展望した本。
今世界は、400年に一度の、資本主義そのものの構造の大転換のタイミングを迎えていると主張。歴史的認識を踏まえてのこの考察は非常に説得力がある。
・資本主義が政治や戦争と切り離せないのはなぜか
・アメリカがイラク戦争を起こした本当の理由
・新興国台頭がグローバル経済に与える本質的なインパクト
・先進国経済における日本のバブルの先行性
・今後の日本経済復興のために日本政府が取り組むべき環境規制による市場の創出
などについて、非常に説得力を持って語られている。
また2名の学者・エコノミストの対談形式で、一方の複雑な説明を、一方が分かりやすくまとめてくれるというスタイルで書かれているため、難しいテーマや内容の割には、非常に分かりやすく読みやすい。
ここ数年読んだ本の中で、最もドッグイアが多い(最も多くページの角を折った)本となった。
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現在のデフレは一時的な不況のせいで起こっているものではないということ。構造的な問題である以上、金融政策でデフレを克服すれば不況も克服できるといったようなものではない。
【規制が新しいマーケットを創出する】
経済活動を阻害するものだと考えられていた規制が、逆に技術の市場価値を高めたり、新しい産業の育成、ビジネスチャンスに変わってきた。市場が飽和化した低成長時代における新しい市場のあり方、これからは産業界から規制強化を求める可能性もある。
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現代の経済を、ヘゲモニー(覇権)を切り口にして考察。グローバルな市場経済は突き詰めれば覇権国によるルールメイキングの方便である、という主張は面白い。今の状況はたんなる経済危機後の不況ではなく、歴史的な転換期にあるという要旨は一考の価値あり。
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読むに値する本です。
昔の人よりも劣っていること、
それは自分が生まれる前の出来事に対する知識。
日本という国の置かれる状況を鑑みて、
今後のマクロ経済の行く末を語る本です。
もう一度読みます。
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対談形式で読み口は軽いが内容は重い。
ちょっと陰謀論っぽいところがあるのは置いといて、大筋真実を突いているのではないか。
再読する価値あり。
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証券会社のエコノミストの水野さんと哲学博士号を持つ萱野さんの対談本。
基本的には貿易等の経済の歴史から、現在の経済状況を見て(「超マクロ展望」となっているのは、マクロ経済学と異なるマクロさを示してるからと推測)これからの予測をしている。
主なテーマとしては、
・先進国の成長を支えていたのは後進国との交易条件。
それがオイルショック以降、条件がイーブンに近づいている。
そのため実体経済で収益が出せない欧米は金融という別の空間を作った
・湾岸戦争の重要な要因の一つは、原油の決済をユーロにしようとしたイラクに対して、ドルを基軸とする国際石油市場のルールを守る意図があった
軍事力の行使目的が、領土の獲得から経済システムの管理へと変わっている
・実体経済で成長が鈍化すると金融化が起こるが、それは同時にそのヘゲモニーの元では生産がそれ以上出来ない事を意味しており、金融化の先にはバブル崩壊と次の覇権国への移管がある
・長期的にみると中国やインドの経済成長の牽引も数十年が限界。
耐久消費財がグローバルに行き渡った後でも利潤の最大化を志向するのであれば、食料やエネルギーを金融商品化してバブルと崩壊を繰り返す
・資本主義と市場経済はイコールではなく、市場経済のフレームを決定する非市場的な力関係(国家)の元ではじめて成立する
・経済成長が前提の制度はもはや現実的で無いが、低成長を前提の運営は困難。なぜなら受給者は自分たちが現役時代のモデルでの支給が当然だと考えるから
・リフレ派への対論としては、インフレは貨幣現象なのは国民国家経済の枠内でしか成り立たない
・市場が飽和化した低成長時代においては、環境がそうであるように規制が市場を作り出す可能性がある
という内容。
特に歴史上の「実体経済鈍化→経済金融化→バブル崩壊→ヘゲモニーの推移」は非常に納得感がある。
また、リフレ派の理論に対してここしばらく感じていた違和感を、経済のグローバル化を視野にいれていない国民国家経済の枠内と看破した事は、目が覚める思いだった。
帯に「今一番確かな視座」とあるが納得の一冊。
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歴史を通じての大きな経済の流れがわかる本。
最近の先進国で見られる実物経済から金融経済への転換と、その結果として生じた金融資本の国際流動性についての解説は、大前研一氏が「ホームレスマネー」と呼ぶものと同じものと感じられた。
この本でも、グローバル経済下では既存のマクロ経済学が通用しないということを問題として取り上げている。
個人的には、日本の銀行などの金融機関は国民の預金を利用して国債の購入に当てているために、国民に自覚がなかったとしも銀行に預金している人は間接的に国債を購入しているということ、また、国債の購入限はバブルのときに企業に貸していた資金が銀行に返済されることによって得られた現金が大半であり、これがもうすぐ返済され尽くしてしまうため、銀行が遠くない未来のうちに国債を購入できなくなってしまう可能性が高いだろうということなどが印象深かった。
一部の人にとっては常識なのであろうが、国債の発行がどれだけ簡単に許してはいけない行為なのかを理解していない国民、特に将来のツケを払わせられる若い人たちに、ぜひ読んで欲しいと思われた一冊。