紙の本
プロットはともかく、作家の文章ではない
2011/01/25 17:41
16人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
生活に窮し、未来に絶望して死にたくなった若者ヤスオが、デパートの屋上庭園から飛び降り自殺を試みたが、たまたま居合わせた医療法人全日本ドナー・レシピエント協会の特別コーディネーター京谷に一命を救われる。
そして京谷は、どうせ死ぬならわが協会に全部の臓器を寄付してから死ねば、死後に大金が振り込まれるといってヤスオを説得する。
さまざまな紆余曲折を経てその契約が実際に遂行されるわけだが、その短かった生涯の最後の日に、若者は恋を知り、人を愛することの素晴らしさのめざめ、命の大切さに改めて気付き、……。
というプロット自体は、かなり平凡だとしても、それほど悪いものではない。しかし問題は、この物語を演奏する奏者と楽器の凡庸さと無個性に尽きるということになるだろう。
いやしくも一篇の中間小説を物語ろうとするなら、他の作者と鋭く一線を画するそれなりに個性的な演奏法、つまり文体の独自性というものが必要だろうが、それらは236頁の全文のどこにも、かけらすらない。
これは私の勘で言うのだが、この小説はプロット自体は著者自身のものだとしても、それを実際に文章化したのは複数の手練れのライターではないだろうか。そうでなければたった一時間で読了できる、まるで漫画かテレビドラマのシナリオのように超フラットな文章が、こうも延々と続くわけがない。
かてて加えて、驚いたことには232頁の3行目に致命的な誤植があり、その活字の上から正しい固有名詞を記した白いシールが平然と張り付けてある。卑しくもれっきとした名のある出版社なら、即刻全本回収して刷り直した新本を提供すべきものではないだろうか。
7年間細々続きし仕事なれど絶えてしまえばいと寂し 茫洋
紙の本
テーマは命なのか、それとも人間の愛なのか
2010/12/15 12:56
91人中、83人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Keiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直読んでかなりがっかりしました。
そもそもこの小説のテーマが見えてきません。
内容としてもミステリー小説や謎解きによくあるような物で、これが大賞を受賞するような作品なのか考えてしまいました。
主人公は自分の生き様に嫌になり、命すら軽んじているぐらいの絶望感に駆られているしがない40代と言う感じです。
一人の黒尽くめの男に会ってからの話が、やたらとダラダラ長く感じて先に進んでいない感じ。
途中で読むのが疲れてきます。
途中途中でギャグ交じりな文面が見られますが、そこは要らないなぁと思う事しばしば・・・。
簡単に言ってしまえば、芸能人が書いた本=素人であり、その点を考慮すればこんなものなのかな?と納得できるかと思います。
ただこれも人それぞれで、私自身はライトノベル感覚でしか読めませんでした。
タイトル負けしている内容で、本当にそこら辺にあるようなミステリー系の小説+ちょっとギャグ入れてみました・・・的なお粗末なものだと感じましたね。
それこそ、今はネット上でも自作小説活動している方のほうが文面的にも素晴らしく、物語もしっかりしている内容が多いので、それに比べればこの本は大賞を取るべきものではありません。
あっさり、軽く読み終えてしまい、結局最終的に私の中に残ったこの本の感想は、「これが大賞作品?」「何がテーマ?何が書きたかったの?」と・・・。
特に際立って文学的な言葉もなく、読み返す気にもなりません。
起承転結、物語に対しての厚みをもっと持たせられるよう努力してから小説家として転身して欲しいです。
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評価があまりにひどいので逆に興味があって読んだ。なんか、Amazonであれだけボロカスにされるほどではないと思う。最後まで読めたし、そこそこ面白かった!命の大切さを著者が訴えたいのはわかるけど、テーマにしては全体に軽い感じがするかな。
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レビューで酷評されているほどは悪くはなかったが、大賞受賞するほどの作品とは思えない。
命の大切さを描きたかったというわりには、内容が軽すぎ。ヤスオではなく、キョウヤの視点から見た方が話に重さが出たのではないだろうか。
児童書かと思ったくらいの文字の大きさ、行間の広さに加え、用紙の立派さ。これを普通の書籍ばりにしたら、きっと1/3くらいの厚さになるのでは・・。これもポプラ社の商魂だろうか
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もうすっかりこの本の話題も収まった今になって、ようやく図書館からの予約の順番が回ってきました。
出来レースだなんだと騒ぎになっていましたが、まぁ一応ね、読んでからじゃないとなんともいえないよね、というわけで、読んでみてからの感想は・・・。
ははん、出来レースだな!!
まず字の大きさに驚き。これ書店で立ち読みできるレベルじゃん!。
これで賞金一千万か~、一文字当たりいくらだよ、おい。
と、下世話な勘定をしそうになるワタクシ。
イマドキのおじさまたちも吐かないようなギャグにも萎えるし、ものを描き慣れない人が一生懸命書きました的な稚拙なレトリックにももだえるわぁ。
命を中心にしたテーマは悪くなかったんですが・・・。
後半も、ちょっと描き方もこなれてきたかな~と思ったんですけどね。
「まさかラストはこーんな感じで終わらないでしょうねぇ」と危惧していた通りの終わり方でまたも萎え。
ここは期待を裏切ってほしかったよ!!
これが他の作品を抑えての大賞受賞作というなら、ポプラ社大賞の賞自体のレベルが低いと言わざるを得ないでしょう。
第一回の受賞作品は、荒削りながらその設定の面白さである程度読ませることのできるものだっただけに、(話題性はあるにせよ)このレベルダウンは本を愛する人間にとっての幻滅を引き起こすだけのものだった気がします。
ただこれは結構いいな、と思えるようなフレーズがあった事も確かなので、今後も作家業を続けるつもりなら今後に期待します。
斎藤さんは普通の新人として何冊か上梓した後、もう少しいい作品が書けるといいですね。
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リストラにあい多重債務を抱える主人公の男性がビルの屋上から
飛び降りようとするところを止められ、全身を移植するという話。
受賞作とは思えないし、命の大切さが伝わってこなかった。
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つまらなくはない。
面白い。
今まで受賞作のレベルは知らないが、「大賞取るほどなのか?」といったら、大人の影が見える。
作品自体はシンプルな内容。
善くも悪くも、ストーリーは分かりやすく、読みやすい。
命をテーマに書いていると聞いていたので勝手に先入観で、えぐみが強いのかなと思っていた。
あの手触り感は狙っていたのか?
もし狙っていたとするなら、僕には意図が読めなかったな。
あと、キャラ設定が甘い。
無難すぎる。
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第5回ポプラ社小説大賞受賞作。
『KAGEROU』――儚く不確かなもの。
廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。
「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。
そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。
命の十字路で二人は、ある契約を交わす。
肉体と魂を分かつものとは何か? 人を人たらしめているものは何か?
深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。
そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、
かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。
水嶋ヒロの処女作、
哀切かつ峻烈な「命」の物語。
俳優・水嶋ヒロを念頭に読んだ。
なので、実のところ「ミーハー」なノリだったことは否めない。
冒頭から、ひきつけられるうえ、
非常に読みやすい文章にまず驚いた。
職業柄もあるのだろう、描写も映像を浮かべられるようで、
サクサク読めた。
内容についても、すんなりと受止められるものだったし、
確かに「命」について提唱されておりながらも、
重々しさを前面に押出されているわけではない。
時にはふき出してしまうような会話や、
心和む場面、ちょっとしたミステリーを含むなど、
処女作とは思えぬ「盛りだくさん」さがあった。
心に残る作品か?
と問われると、それほど印象的とはいえないが、
今後への期待はふくらんだ。
知名度除外での受賞も頷けるし、
何にせよ、この出版界大不況のなか、
話題性は抜群だ。
次作への期待のハードルはグンとあがったなぁ。
《2010年12月15日 読了》
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著者が水嶋ヒロじゃなかったら文庫にならないと買わなかった
と思うけど、ストーリーは面白かった。
文字の大きさが逆に読みにくかったです…。
発売前からの過剰な期待があっただけに酷評となってますね。
文章や表現力の未熟さは否めないけど、この年代の処女作品、
(しかも元人気俳優)と踏まえてあえてやさしい目線で読みました。
ドラマや映画など、映像の方が面白く見れそうなストーリー。
ベテラン作家でも微妙な本なんて多数ありますし…
これからの作品も読んでみたいな~と応援したくなりました!
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読解力が足りないからなのか、読後のもやもや感がなかなかぬぐえませんでした。
テーマは好きですし、内容も嫌いではないですけれどね。
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酷評されているのを知っていて読んだから、「言うほど酷くない、むしろ良い」という感想。
一般大衆ウケしそうな内容・構成なんだけど、そこに作者への嫉妬とか前評判が絡んでいるから賛否両論だと思う。
個人的に、あれだけイケメンで、作家デビューも騒がれていた上に内容が良い話過ぎるのが残念。頭の中を覗いてみたかったのに。もっとぶっ飛んだ、尖った作品(例えば本谷有希子みたいな)だったら一気にファンになってただろうな。笑
小説として一定のボーダーラインはクリアしていると思う。
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臓器移植の今後を扱った作品として小説的価値はあると思う。(大賞の価値があるかはわからないが)
題材としてはプラス。
ただ、表現の稚拙さはマイナス。全てを表現しすぎかな。
あと、オチのわかりにくさはマイナス。(実際、解釈が二手に別れてる)
最後の誤植が演出なら、素晴らしいと思う。
水嶋ヒロであることを公表しなければここまで叩かれずにすんだんじゃないかな。
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読みやすいし、つまらなくはない。
テーマ的には本多孝好っぽいかな。本多氏も最近なんだかな〜って感じだが、それ以上に薄味。自分的には売り方のあざとさにハードルを思いっ切り下げてたので、わりと普通に読めた。でも、俳優辞めて執筆に専念までしなくてもいいような、そんなありふれた小説。水嶋ヒロが書いたことが一番のウリだから、ファンクラブの会報に載っけとくくらいでいいんじゃないか。
ポプラ大賞→賞金辞退の経緯も正直?って感じだけど、どうせやるなら、ぱーっと印税寄付とかしてみたら。
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命は、体は、心は、誰のためにあってどんな価値があって、どこにある物なのか。
生きることも死ぬことも否定しない。ただ等しく重さを量りたい、伝えたい。
そのように感じました。ただ伝えたい気持ちが先走っていて、少しうるさいです。死にたい気持ちは生きたいという気持ちなのだということが一番に伝えたかった事なのかもしれない。だが、言葉を尽くして生死を語って来た割に、そこの論理展開が弱く、作者の思考停止がうかがえた。そのため唐突に感じられ、インパクトがない。最終的に落としどころが曖昧模糊としてしまった。
また、登場人物たちの背景や生き方がややテンプレートな感じがするのでもっとこだわってくれたら、感情移入しやすかったと思います。感情移入出来ないまま(私はこういうお涙ちょうだい系は特に感情移入しないように気を張って読む部分があるのですが)読み終えたので、最終的に伝えたいことに感情移入するタイミングを失ってしまいました。
こういうストレートな事をまっすぐ真摯に伝えようとする小説は少ないと思うので、もっともっと書いて才能を磨いていって欲しいと思います。
個人的にはメッセージ重視という点で好きなタイプの小説でしたので、さらにグレードアップした物をいつか読ませて頂きたいです。
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私には最後が感動だった。臓器移植、というテーマだからかな。人間はなぜ生きるのか、死んではいけないと言われているかが、説教じみてなく、自然とすとんと教えてもらった感じ。いい小説でした。