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エロ爺いとの縁談を壊すためかかれたフィクションにパリ中が熱狂し……。大満足。侯爵の養女の恋に夢中になり、"醜聞"に一喜一憂するパリ市民の姿にニヤニヤするうち、それが現代の自分たちと相似形であることに気付かされる。軽快な物語に隠された辛辣な皮肉で人間の本質をえぐり出す傑作。
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弁護士事務所のサラリーマンがペン一本で、噂を武器に大貴族と渡り合う。
それはそれだけでなかなか胸がすくけれど、清純な美少女が好色狒狒爺に捉まらないかとハラハラもするけれど、最後はもっと勧善懲悪であって欲しかったな・・・・。
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日常を想起させるものを受け付けにくい気分の時もある。今がそういう気分の時であることは敢えて断るまでもないだろうけれど。では現実から逃れるつもりなのかと問われてみると、それを明確に否定するだけのはっきりとした感情もない。しかしどこかから聞こえてくる。Life is going on. 自分はいつもと変わらないように仕事をし、そしてやはり本を読む。これまでと同じ日常を繰り返すことで変わってしまったことをなかったことにできるとでも思っているのだろうかと、自分でも少し訝しく思いつつ。
佐藤亜紀は、自分の知る限り、現実逃避をしているという責苦を負わずに現実の世界と遠く隔たった世界を歩き回らせてくれる数少ない作家であると思う。非現実的な世界を(時にそれは現実の世界に瓜二つであったりもするけれど)面白く読ませてくれる作家は他にもたくさんいると思うけれど、今この時点の現実の世界からは遥かに遠く隔たった世界であることは明らかなのに作り物のような胡散臭さが漂ってこないという点で、佐藤亜紀のエンターテイメント性は割と素直に受け入れることができる。現実の世界ではないけれども、現実的でない世界という訳ではない。
それは随分と緻密な計算と息の流れを滞らせることのない文章によるところが大きいのだと思う。「醜聞の作法」は佐藤亜紀のそんな文章術のようなものを、巧みに作中人物の言で語らせようとする小説だと思える。一般大衆という、誰もが自分のことではないと思いつつも実はしっかりとそのカテゴリに分類されてしまうだろう人々。彼らに対して文章を為すということの意味を、皮肉とさえ思える形で描いてみせた巧みな本でもある。
人の心とはなんて操られ易いものなのか。そして操っていると思っていた者もまた、そのプロットに振り回されてしまう定めなのだということが、読む者に突きつけられる。ああ、現実を思い起こさせるものを受け付けないなどと言ってみても、やはりどこかで今の現実と本の中の言葉は勝手に結びついてしまう。恐らく言葉というものは「絶対的な意味」のような固定した何かを示すことが叶わないものなのだ。そういう思いが強くなる。
言葉に乗せられないように。話に釣られないように。佐藤亜紀のこしらえる精巧な作り物に対して拒絶反応が起こらないのは、ひょっとするとそんなメッセージが意識下に伝わってくるからなのかも知れない。Life is going on, whatever things happen to you. Listen to only what your heart will tell.
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かなり年上の好色な金持ちの男と意に染まない結婚をさせられそうになったうら若い女性。その結婚から逃れるためにパリ中に噂を流す…という粗筋を見て、面白そうだと手に取りました。
書簡形式でさくさく読めるし、実際面白かったです。
ただ、なんか物足りないというか。両手のひらに乗る大きさのガラス細工の完璧な球体みたいな、綺麗でキラキラしてて繊細で完璧なんだけど、あくまで両手の中におさまるサイズでひねりがない。
次はこうなるんだろうな、と思うとおりに進んでいって、とても綺麗にまとまった話だなぁと。
意外な黒幕を作るとか、動機に一捻り加えるとか、そういうカタルシスを期待して、期待が消化されないまま終わったのが残念でした。
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●・・・・・・・さとうせんせいはなにか改心でもされたんでしょうか。
噂で人々をコントロールする物語と書くとすごーく底意地悪そうなのに、なんだかたわいもないお話だぞ? いやいや佐藤亜紀がこんな素直な小説を書くわけがない、ちゃんと読めばきっとどこかにえげつない毒が!
でもなんと言うことでしょう、これなら古典を好む上品な50代にも勧められるわってあら??
●大衆の好みを読んで煽ってお望みどおりの世論をつくった上できっちりきれいに火消しする弁護士先生を、とかく炎上させるだけさせといて放置する昨今の方々は御見習い下さい。
なんか見落としてる気のするあまりうっかり再読しそうだがしない。
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読書が心地好い。
文章のテンポ、アイロニーの応酬がチャイコフスキーにすごく合う。BGMチャイコフスキーで読んでると最高に気分がいい。
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佐藤亜紀「醜聞の作法」読んだ。ゴシップとその仕掛け人と「真実」とメディアね、ふんふん、それにしても、なんかさらっとしてるなあ、と思いつつ読んでいったら…もう!なんなのこの人、やっぱりね!「作り話」はどこまで?おーもしろかった。さすが。読み終えてすぐまた読み返しちゃった。
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佐藤亜紀さんの作品は初めて読んだ。他の作品もこんな感じなのかな。私に読み解く力が無いからだけど、話の筋がよくわからんかった。虚構と現実の境目を徐々に見失って煙に巻かれたような感じ。まぁ、国や時代に関係なく、人はゴシップが大好物!というのはわかった。形は変わっても炎上という副産物が付くのも面白い。
出所不明な情報にお祭り気分で群がるのには暗い楽しさがあるものだけど、エスカレートした憶測で無関係の人が餌食になるのが怖い。ゴシップはゴシップとして楽しむだけにするのが良い。
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高知大学OPAC⇒ http://opac.iic.kochi-u.ac.jp/webopac/ctlsrh.do?isbn_issn=9784062166829
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初の作家さん。最初文体に戸惑ったがすぐ慣れた。噂話は世界共通、意図的にゴシップをバラまき、混乱と熱狂を起こす。でも落とし所をちゃんと考えてるので後味はスッキリ。
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醜聞を世間にまきちらし、状態を己の都合のいいように展開させる…技?
何と言うか、最初から最後まで
何かの劇を見ているようでした。
確かに、相手は見えない生活をしている身分の高い人達。
なので憶測でものを言っても、想像しても分からない人達。
とはいえ…中々すごい動かし方をするな、と。
それぐらいです。
面白かったか、と聞かれると、読めました、としか答えられません。
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よく出来た物語。
貴族文化真っ盛りのパリで、逃亡してきた友だち(故人)の娘をあずかった公爵夫人がおった。預かった娘はみるみるうつくしく成長し、クラヴサン(という鍵盤楽器があるらしい)の先生と恋に堕ちる。
んだけれども、公爵の友だちの金貸し(ヒヒオヤジ)がこの娘をものにしたがる。当然娘はウンと言わない、公爵は金貸しとの結婚を承諾するまで、娘を修道院に閉じ込めるが――さてどうなる、と、事実関係はこんなところかしら。これを、公爵夫人と、語り手である「私」との書簡のやりとりを中心に書いている、わけです。
三時間くらいあれば読めちゃうくらい流暢な文章。なので、ちゃんと読みこめば「ああ、面白かった」以上のものはあるんじゃないかなぁとは思うのです。そもそもこの「私」は誰なんだ? という疑問が残ったのです。
がしかし、ある事件の構造があって、その事件をどこからの光で照らすのか、とまぁ、設計図通りに組み立ててあって、ああ、設計図がしっかりしてるんだなぁ、面白いなぁ、と思って満足すればそれでおしまいな気もします。
現在の日本の世相に重ねるもよし、パリの貴族的な雰囲気を楽しむもよし。
なんかこう、試すすがめつしながら読むもんでもないのかなぁと思ったりしました。
娯楽作品です。
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いやー、面白かった。
映画か舞台を見ているようで。
フランス革命前後であろうパリが目に浮かんでくる。
貴族のきらびやかな衣装から、平民たちの生活、はたまた修道院の尼僧の清らかさまで。
この時代、市井の人達の噂話の情報源はパンフレットだった。
これを利用し、公爵夫人は養女と好色爺の縁談を壊すことを計画する。
公爵夫人と謎の仲介者の間のやりとりが書簡形式で展開されると同時に、パンフレットが覚え書きとして織り込まれる構成が見事。
養女の運命は一体どうなるのか。
執筆者ルフォンに降りかかる災難はどうなるのか。
あっちでハラハラ、こっちでドキドキ。
ただ全部読み終えてみると狐につままれたような気分。
一体どこまでが現実でどこまでが嘘なのか。
誰と誰が実在していたのか・・・。
これもまあ面白いところではあるけれど。
他のレビューでも指摘されるように、翻訳文を読んでるような錯覚に陥った。
なんとなく小田島さんのシェイクスピアのような。
ある意味、オリジナルでここまで書けるってすごい。
佐藤亜紀さん、他にも読んでみよう。
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富と権力を振りかざすある好色爺との縁談の計画を知った養女ジュリー。強引に話を進めようとする侯爵を横目に、彼女の育ての親である侯爵夫人は、ジュリーの真の婚約者とともに縁談を壊すため、ある計画を立てる。それは『醜聞』を流すこと。小さく始まった醜聞(ゴシップ)は人と人の間で囁かれ、次第に巨大化し、街全体を覆っていく。
18世紀末フランス版Twitter。現代でもある小さなトピックがインターネットを通して世界中に発信されることを考えると、当時の話という一言では片付けられない怖さと面白さがある。
醜聞を計画する者、執筆する者、広める者、面白おかしく囃し立てる者、踊らされる者、そして当事者たち。喜劇のようなストーリーは主に書簡のやりとりで進み最初は少し読みにくさを感じたが、各々の思惑が絡み合い始めた中盤くらいから先が気になり止まらなくなった。最後はすっきりする落としどころ。
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小洒落てる!中世フランスが舞台。「いつの世も、人は醜聞(ゴシップ)がないと生きてゆけない。」人の口に戸は立てられないよね、わかる。