紙の本
オトナになった少女たちのミステリアス少女小説。
2011/12/10 20:38
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
「秘密の花園」であり「トムは真夜中の庭で」であり「オリヴァー・ツイスト」でもあり「レベッカ」でもある。
1913年、オーストラリアの港に1人取り残されていた少女、から、お話は始まる。
小さな白皮のトランク。トランクの中には身の回りの品と本が1冊。充分に魅力的な幕開けである。
謎、秘密の匂い、ゴシック。
3つの時代といくつかの場所を、コラージュのように貼り合わせた複雑な構成で、4つの世代を解きほどいていく。
それを「あ、これ確かさっき…」と記憶がつないでいく仕掛けが、うまい。何度も螺旋のように巡りながら、次第に秘密の核心へと近づいていく。
大きなストーリーの展開もさることながら、細かい心の糸の震え(見つからない歯ブラシのくだりなど)などの小技も効いていて、サスペンスフル。
キャラクターは男性はいささか弱い気がするけれど、女性は誰もよく描けているのではないか。
一見不必要かとも思える設定も、後になってみると必要だったと思われるし、小道具も作中作も魅力的。
正統ゴシックの香り漂う、オトナになった少女たちのミステリアス少女小説。
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三世代に渡ってのストーリーが入り混じって進むため、最初は頭を整理しながら、我慢して読み進める。
と、気づいたらツボにはまって、やめられなくなる!こんなにガッツリ目が離せなくなる本は、久しぶり。
雰囲気たっぷりのイギリスの情景が、ありありと目に浮かぶ。
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1900年、1970年代、現代、の3つの時代で3つの世代の物語が並行して進む。
親も素性もわからないまま港に置き去りにされた一人の女の子が長じて自分の出自を探る、その旅をきっかけに物語が豊かに広がっていく。
オーソドックスな「お話」の魅力にあふれた作品。下巻も楽しみ。
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1913年、イギリスからオーストラリアの港に着いた客船。
人々がいなくなった後、小さな少女が取り残されていた。
小さな白いトランクを持っているだけで、自分の名前も覚えていない。
港の事務所に勤めていた男性が少女をとりあえず引き取り、ネルと名付けて、長女として育てることに。
妹二人も生まれて、幸せに成長したが。
21歳の誕生日に、父が本当のことを打ち明けると、ネルの世界は崩壊する。
父の死後、トランクを渡されて、記憶がよみがえり始める。
トランクの中にあった絵本の「絵のおばさま」に待っているようにと言われたのだ…
ネルは自分の身元を調べ始めたが…?
2005年、ネルを看取った孫のカサンドラは、イギリスに家が遺されていることを知る。コーンウォールのコテージは美しい地帯にあったが、寂れ果てていた。
カサンドラは初めて、いくつかの事実を知り…
子供向けの作家だったイライザ・メイクピース。
短い活躍の後は消息不明のまま、忘れられた作家だった。
そのイライザの幼い頃は、ロンドンの下町でのどん底の暮らし。
母ジョージーナは名家の出だったが、駆け落ちしていたのだ。
なんだかディケンズや小公女を思い出すような面白さ。
イギリスでの過去の出来事が少しずつ繋がり、ネルの視点、カサンドラ、ネルの父、イライザ、イライザの伯母、イライザの従姉妹ローズの視点などで、次々に語られ、興味は尽きません。
著者は1976年オーストラリア生まれ。三人姉妹の長女。
2006年「リヴァトン館」でデビュー。本作は2作目。
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オーストラリアに住んでいたお祖母さんが、自分の本当の親が誰なのかを捜しにイギリスに行く小説。
お祖母さんの親の代のシーン、お祖母さんのシーン、お祖母さんの孫のシーンの3つのシーンが交互に出てきて、映画にするとおもしろいかも知れない。
登場人物一覧がついていると、もっと読みやすかったかも。
カタカナの名前って誰がどの人だったかだんだん分からなくなってくるので。
オーストラリアの大地のおおらかで気だるい感じとイギリスのちょっと湿っぽい暗い感じが良く出ているのが、良かった。
イギリスの登場人物に親切でおせっかいな人が多いのが、私としてはちょっと意外でした。
あと、紅茶を淹れる場面が好き。やかんがのお湯が沸くところや、お茶の時間だといって話しを切り上げたり、大事な話しをする前にお茶を淹れたりする場面がところどころにちりばめられていて、紅茶好きとしては、うれしくなります。
オーストラリアでもお茶の時間は紅茶が定番なのかな~と、この小説を読んで初めて知りました。
久しぶりに小説をよんだのですが、ハウツー本やお勉強系の新書はなかなか読み終わらないのに、小説はどうしてこんなに「もっと読みたい。続きが知りたい・・・」と自然に本に手が伸びてしまうのだろうと思ってしまいました。
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オーストラリアの港にロンドンからの船が着き、人々が立ち去ったあとに取り残された少女が1人。トランクには御伽噺の本が1冊。
自らの過去を探る女性と、彼女の跡を引き継ぐ女性の話。
上記二人に加えて御伽噺の作者の生涯も語られ、3人の物語が交差していく。
章が変わるたびに主人公も時代も変わるのだけど、それほど混乱なく読める。
上巻はまだ謎を提示している段階なので、これが後半どうなっていくか楽しみ。
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いかにもバーネットの「秘密の花園」を思い起こさせるタイトルで、ファンタジーぽい印象を与えるのだが、中味は純粋なミステリ仕立てのクロニクル。巻頭に置かれた「ブラックハースト荘の敷地見取り図(1913年当時)」が期待を盛り上げる。
話の発端は1913年末のロンドン。テムズ川から一隻の客船が出航しようとしているところ。その甲板に置かれた樽のすき間に一人の幼い少女がゲームだからと言われて隠れて潜んだところから始まる。
そして船は少女を乗せたまま航海を続け、オーストラリアの港・メアリーバラに到着するのだが、客船からすべての乗客が去った後に、その少女が取り残されていた。白い小さな革のトランクににお伽噺の本を一冊携えて、、、
およそ100年にわたる3つの物語が同時並行的に展開していく構造。さらには冒頭にも引用されているイライザ・メイクピース名義のお伽噺が何話か挿入されていて、さらに物語に複雑さを加えている。
読み進めるのには実に根気がいる。特に冒頭の100ページを乗り越えるまでが難所だ。次から次へと繰り出される断片的な物語がどうつながっていくのか想像もつかないので、途方にくれそうになるのだ。さらに言えば、どの話も明るい展望を持つ話でないだけに、読み手は辛抱を強いられる。
オーストラリアで養い親に育てられた身元不明の幼女・ネルの物語とその孫・カサンドラの物語。そして、19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリス・コーンウォールのブラックハースト荘に暮らした人々の物語が、行きつ戻りつ展開していく。
上巻は第一部、第二部の構成で、数奇な運命をたどるお伽噺作者のイライザがブラックハースト荘に引き取られるまでを描く。
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三世代のストーリーが行ったり来たりして進むため、最初は少し戸惑いながら読んでいた。結末を想像するのを楽しむには良い作品。
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○バイアット『抱擁』を思い出す(訳者あとがきにもあった)。
○『抱擁』からペダンティックな部分を削った、「ゴシック・ロマンス」ならぬ「ゴシップ・ロマンス」(?)。
○バイアットをはじめ、ゴダードやルース・レンデルの同趣向の作品と比べてしまうと、粗く感じる。
○神の視点を乱用せず、カサンドラの知り得たこと=読者の知り得たこと、で処理して欲しかった。
○20世紀初頭のロンドン下町の情景描写に借り物臭がする。
○ミスリードを意図した部分が、その役割を果たしきれていない。
○いらんことまで説明しすぎ。イライザの内面とか、カサンドラが過去を清算して未来に進む云々とか。
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山崎まどかさんが書いていた通り、まさに「大人のための少女小説」。長らく忘れていた感覚が呼び起こされて至福のひとときを過ごした。下巻を読むのがもったいないなあ。すぐに読んじゃうに決まってるんだけど。
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3人の女性と3つの時間の流れを経巡り、ひとつの秘密を探っていく、クラシックな物語。次々とやってくる波を乗りかえ乗りかえ、見えてくる世界は少しずつ広がり、パズルのピースが嵌っていく。終着はまだまだ全く見えない。
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なんとなく“In the Country of the Young”の雰囲気を感じます。感想は下巻にまとめます。
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わーすごい物語を読んでいる充足感で胸が一杯。
字体や装丁も愛されている本ですとすごく訴えている。すごい。
3人の女性のいろんな時代が断片的に入り乱れているのにすごく読みやすい。
好きー!!
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三人の女性の人生をたどりながら、一人の女性が抱える過去についての秘密を解き明かしていく話です。
クラシカルな仕掛け絵本みたいで面白かったです。古風な雰囲気が好き。
上巻はわりと淡々としていたので、下巻でこれがどうなるかたのしみです。
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このミスで知った作品で気になって図書館で借りてきました。
読み始めて数行で予感がした。“これ、絶対おもしろくなる!”と。
実際、読み始めるとほぼ一気読みでした。三人の女性の視点で、三つの時代が入り混じりながらお話は進んでいくのに、ちっとも頭がごちゃごちゃにならなず、むしろ本の世界に入り込んでしまう世界観と文章力。見えてくる世界が少しずつ広がって、交わり一つの線になっていく。上では一つの線にはならないけど、きっとなっていってくれるんだろうな。あー、早く下巻が読みたい!一気に読みたい!