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回送先:府中市立紅葉丘図書館
東京という都市をめぐる議論というのは、時として世代による視野の狭さを露呈させることがある(評者が都市社会学の知見を時として邪険にするのは、自らの属していると考える世代の大いなるひけらかしに成り下がったからというのもある)。
そうしたなかで、本書は東京という都市のごくごくありふれた街角を切り取ることで、何を見つけることができ得るのかについて仔細な検討を試みた一冊だといえる。確かに姜尚中のネームバリューが大きくなりすぎているがために、そのような検討を詳細に追いかけるのは困難であるかもしれない。しかし、姜自身が言うように「都市では誰もが異邦人(あるいはジャック・アタリになぞらえて遊牧民と言ってもいいだろう)」であり、その巨大な病院である東京という都市の観点から眺めたとき、見えてくるものがあるかもしれない。
そう、東京は巨大な入院病棟なのだ。本書では登場しないがコミケ参加者が有明の癌研有明病院を見る視線はそっくりそのまま姜尚中の言葉に意訳され、なおかつ中和された格好で私たちをも捕らえ直しているということになるともいえるのだ。
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最後の章の「基本的に東京では住民が『消費者』として扱われているからです。私達もその役割にすっかり慣れきっていますが、そこから一歩踏み出す事が必要なのではないでしょうか。」が印象的。東京を切り口に、現代社会のアレコレを考える本。発想とか、参考になる部分多し。
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個人的に、観光地としての「東京」は評価していない。
というの都心に代表されるように高層ビルが立ち並ぶ景観に文化的な価値を感じ無いし、例えばパリの凱旋門を見たような圧倒感に立たされることもないからだと思う。
しかし姜さんはこのような僕が全く興味が沸かない場所に赴いて、そこの歴史や文化的側面から現代の人々や国家の言行に繋げることで登場する所々の価値や存在の意味を問き、考察している。
これこそが「知的な」街の歩き方なんだな、と。こういう風に観光をすればただその場所を訪れ、歩くよりも何倍も有意義な時間を過ごすことができるしそこから得られることも多い。
そしてそこから自分達が生きる「現在の世界」を見直すことができるのだろう。
無性に東京を歩きたくなった。僕がこう思えただけ、この本には価値があるということだろう。
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谷崎潤一郎の「秘密」という作品。
「知らないと思った町が実は自分が住み慣れた町のすぐ近くだった」というオチが物語の中で使われている。
この物語の舞台も東京なんだよ。
風景や町並ですぐに分かりそうだと思うよね。
けど、東京の町は数多くの人の欲望や思惑などをコンクリートや木材に練り込んで建築物を作り、コラージュしている。だから通りや川を一つ越えただけで世界が丸っ切り変わってしまう事も有り得る。
この本は姜尚中さんのフィールドワークを基に書かれている。
しながわ水族館からみる監視社会、猫カフェにみる脱欲望化の社会…東京の中に増え続ける新世界からトーキョーを読み解こうとする、姜尚中という異邦人。
だが、読んでいるうちに果たして姜尚中が異邦人なのか、読んでいる自分が異邦人なのか、分からなくなって来る。
新しい発見に富んだ本で面白かったです。1300円でこんな体験が出来るなら安いもんです。
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姜尚中が東京のスポットを巡りながら日本に想いを馳せる大人な感じの本。
自分自身を鳥瞰するには、自分をも引いて見ることができる精神的な幅が必要。つまり「大人」として自分が引き受けたものと一定の距離をおくのが必要だそうだ。深ェ~!
最近あちこちに溢れてるような「男の作法」的な本よりはずっと役に立ちそう。
ただ、読んでるとどうしてもあのウィスパーボイスを思い出して眠気が襲ってくるため、ページが全然進まない。
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姜尚中が、東京のあちこちを訪れて語る連載をまとめたもの。あの声で再現される文章。ネコカフェで猫に囲まれているのが、はげしくうらやましい。
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東京について独特な視点で語られている点が面白かった。
東京の明るい部分、暗い部分。イキイキした部分、そうでない部分。いろいろ見えてくる。
いろいろ問題点に鋭い指摘が気持ちよかった。
・みんなが自信をもちたいはみんなが不安を抱えていること
・これほど情報化による消費社会化が進むとハレとケの区別というものが曖昧になる
・かつて私たちは世界がグローバル化すればいろいろな制約を超えられてみんながハッピーになれると信じてました。
・すでに物質的に満たされているし、文化的にも出尽くしてしまって、それを焼きなおしするか反復するだけ。
・今までの生き方やライフスタイルに多くの人が疑問を持っている
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トーキョーの街を訪れながら、そこから姜尚中さんが思うことをエッセイにした本です。社会的なことが多くてちょっと硬い印象ですが、フォーシーズンズホテルのページでは、旅は映画や絵画を見る感覚とは違った、純粋に「見る人」になることで、普段見えないものが見えてくる、といった視点で書かれたものもありなかなか楽しめました。
それとは別に、どんな場所でも彼の飄々とた様子の写真が載っていてこれも楽しめました(笑)
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姜尚中が好きなので買いました。
ちょうど東京に進出して日が浅かった自分には興味のある一冊でした。
姜尚中の世界観で東京を捉えられていて新鮮でした。
昔から東京に住んでいる方が読まれても、新しい東京が見えてきて面白いと思います。
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東京の町々を舞台に話題を展開。東京に住んでいる方。東京に住んでいた方、必読です。でも、なかなか言葉が難しい・・・。
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姜さんが東京の街を探訪しながら思索するエッセイ。
国会議事堂を訪れての、「家業を継ぐはずだった長男(自民党)がダメになったから、急に次男(民主党)に・・・といっても、今まで何の訓練もしていなかったら難しいのと同じようなもの」「新しい政権を育てていくという胆力が、国民にも必要」との指摘には、全く同感。
(ただし、これが書かれたのは1、2年前のことなので、現在はもう少し逼迫した状況ではあると思うが)
どこぞの市長が大人気だけど、「強い力を持った指導者が、一気に何もかも変えてくれる」と思うのは幻想であり、また非常に危険なことでもあると思う。
猫カフェを訪れた姜さんの周りに、猫たちがぞろぞろと集まっている写真が、何とも微笑ましい。
猫は「甲高い声」より、「低い声」が好きなんだそうで。納得。
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著者は本当に社会を深く分析する人である。
彼のように冷静に客観的に、しかし暖かい目でもって社会を見つめられる人が日本で活躍しているというのは、とてもいいことだと思う。
本にも書かれているが、今は、多くの人が物事を損得で見ようとする時代であるが、それだけではとても寂しい社会になってしまう。そして長い目で見ると未来もない。
少し日常に疲れたら、読んでみたい本である。
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ミーハー根性で姜尚中のサイン本ゲット。
女性誌のバイラに連載されていたコラムとあって、現代思想のバックグランドがない人にも簡単に読める。
なぜ東京は人を集めるのか?
という直球のクエスチョンに、姜尚中が実際に各エリアを訪れ、ポストモダニズム的観点から分析。
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だいすきな姜尚中さんの東京探訪記。
これが雑誌BAILAの連載だったとは。意外。
そういえば以前、女性誌で悩み相談の連載を
持たれていたのを読んで、姜さんに好感をもった
んだった。
文章だけの読み物とは趣が違ってよかった。
取材後記みたいなのからも姜さんの人となりが
伝わってきて。
それにしても姜尚中さんてフォトジェニック!
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アイデンティティとは、簡単に言うと自分は何者であるかということ。
大切なことはステレオタイプ化された幸福感ではなくて、自分が肯定できる人生の意味を見出すこと。そしてそれにはやはり悩む力が必要。
社会における大学の役割が変化したことも大学の在り方を変えた。即戦力を求める流に従って、大学の学問はすぐに役立つ実学を重んじるようになった。具体的には高額、エンジニアリング、土木工学、応用技術化学など。
そもそも生きる目的や目指す社会が名になのかわからなければ、豊な社会は築けない。だから広い意味での教養、人文学のしっかりした土台が必要。たとえ正解にたどりつけなくても、意味や目的について関gなえる思考回路を学ぶことは非常に重要。そしてそれこそが智の共同体であるUniversityの本来の役目。
文学を読んだら知性が高まるとか人間性がよくなるというわけではない。むしろ文学を読まば読むほど悩んでしまうところがある。ではなぜ文学を読むのか。それはおそらく本と対話することで、肥大化した自己から、もう一人の自己を発見していくことができるからでしょう。自分の抱え込んでいる両義性について考えたり、自分の存在理由について思索を深めることで、幾重にも自分を発見することができる。そのきっかけを文学は与えてくれる。