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20世紀の巨頭の一人、103歳での逝去、アメリカに置き、大学教授の地位を持ちつつ、文学への愛を語り続けっというだけで、アヤラの内なるものが猛然と湧き上がってくる。
内戦の「日常的な情景」を彼独特の「「記憶の断片をつなぎ合わせて行くこと」によって昇華された全体像が浮かび上がらせた傑作。
中世~近世 世界の雄たる大国の一角を担ったスペイン・・世界中に吹き荒れたファシズムの嵐はこの国でも惨状を呈させていった。
左派連合の人民戦線政府VS反乱軍(後の国民戦線)
指揮を執ったフランコは内戦終了後から軍事独裁政権を36年も敷いた。その悲劇の情景はピカソ描くところの「ゲルニカ」でつとに有名。
昨日の友が今日の敵となり、文字通りの「血で血を洗う日常の戦場」
概略しか知らなかった経緯を描いた傑作とされた今作をかねて読みたいと思っていた。
「言伝」「タホ川」「帰還」「仔羊の頭」「名誉の為なら命も」5つの短編が入っている。
アヤラはリアルタイムで、身内の死も経験し、内戦時、重要なポイントであった地を舞台にした「切り取ったその時間」を綴っている。
何れもとてつもないパッションが伝わるが、文は淡々とした一見、何処にでも見られる風景と会話・・しかし。
個人的に「仔羊の頭」が最高熱量。
舞台はアンダルシアの都市グラナダ モロッコの親戚一家を商用で訪れた際の一こま・・・互いに、来し方を語る内、自分自身にダークな記憶で沈殿していたあるものがもや~っと沸き上がり・・出された仔羊の頭を食するうち・・食あたりを起こし 夜半までのたうち回る⇒当たったのは料理ではなく、おのれに内在する或るものが反乱を起こしたというもの。
解説を読んで仔羊=内戦で犠牲となった「多数の従順な人々」
を意味している事を知り脳天が沸騰させられた想いだった。