投稿元:
レビューを見る
昔,吉村昭の『関東大震災』を読んだ。当時は,デマに惑わされる人々の過剰反応で,人命が失われる悲劇があちこちで現出。だいぶ様相は異なるものの,今回の震災でもやはり一時的にデマが広がり問題となった。
著者はブログで震災デマの検証をやってたそうだ。流言やデマが広がる集団心理や情報環境に注目して,デマに強い社会を目指すにはどうすればよいか探る。デマには基本的パターンがあるので,そういうのに既視感を抱いて盲信してしまうことのないように耐性をつけるのが肝要。
情報が人から人へ伝えられる連鎖的コミュニケーションでは,情報の一部だけが強調されたり,一部が削られたり,人々の思いに沿うよう変形されていく。コスモ石油流言も,後から時系列で並べたりして分析してみると,その傾向が濃厚。
デマの多くは,ソースが挙げられていない。「友人の関係者の話では…」とかいう曖昧な権威付けがなされ,「メディアでは取り上げられないが…」として,情報の稀少性,伝え手の優位性を匂わせる。これだけでかなりデマの可能性が高いとみてよい。
メディアで取り上げられないのは,裏が取れない,そもそも事実無根,という可能性があるのだが,それは無視して「メディアに都合が悪いから隠蔽してるんだ」,「メディアは知らないのだ」と解釈することを好む人が多い。政府やマスコミといった権威への不信感が,このバイアスを助長する。
報道機関は,当事者の話を鵜呑みにせず,記憶違い・誇張を排除するため裏を取り,事実を伝えることが使命。現地入りしたボランティアなど,自分が渦中にいるという高揚感で,自分は重要な情報を持っている,それを伝えたいと思うあまり,デマの発信源になってしまうこともある。
関東大震災では,朝鮮人が井戸に毒を入れた等のデマで,自警団により無実の人が殺されるというようなことが起こった。今回の震災ではそこまでの事例はないが,善意から始まった流言が,情報を錯綜させ,現地のリソースに負荷を与えることで,間接的には人命に関わることも。
「放射性物質にヒマワリが効く」という流言があったが,これは16年前の研究報告を取り上げた,数年前のバラエティ番組(匿名リサーチ200X)の内容を,紹介したあるブログが発信源になっていた。内容を吟味せずに多くの人がこういうのに飛びつくと,有害なデマが拡散してしまう。
また辻元議員に関するデマが種々拡散したが,こういう政治的なデマは,当事者が否定したとしても「隠してる」「ウソついてる」として,受け入れられない場合が多い。特定の人物を叩きたい人に対して,そのデマをいくら否定しても,たいてい聞く耳を持たない。
受け取った情報を虚心坦懐に見つめないとデマかどうかの判断は難しい。内容的な矛盾はないか(内在性チェック),確かな証拠はあるか(外在性チェック)のダブルチェックを行なうことが重要。このことは,1938年の米ラジオドラマ『宇宙戦争』パニックに関してキャントリルが指摘。
それでも自分が流言拡散をしてることを認めない人がいる。この現象を理解するには非行研究の概念「漂流理論」が参考になる。自己の責任・加害を否定し,被害者の��任を主張して,「皆信じてた」「緊急時には許される」「信頼されてない政府が悪い」などと言い訳をする。
結局,全員のリテラシーを上げることは不可能。情報が不足し渇望される災害時に,デマが出現してしまうのもある程度は仕方ない。素早く広く拡散するデマは,インターネットを介して流布していくから,技術的にそれが広がりにくくする工夫も考えられる。
投稿元:
レビューを見る
荻上チキの本を読んでみたかったので、
本屋で見つけたこれを読む。
仕事柄、結構デマに惑わされないようにとよく言っているのに、
感覚的なところで言っていただけだったので、
自分自身の納得も得られてよかった。
実用篇があながち実用的ではないものが多い中で、
誠実な作りというか、聞きたいことに答えてもらった感のあるつくりなのも良かった。
他の本も探してみようかな。
投稿元:
レビューを見る
『検証 大震災の予言・陰謀論』を読み始めたので、再読。セットで読んだほうがいいでしょう。
Twitterやっていたら、当時はすごく混乱しただろうなと思う。停電していて、TVから情報得られなかったし。
1年たってからの第2弾が望まれる。
投稿元:
レビューを見る
良著。目からウロコのような非常時のデマに対する処世術、などは(恐らく存在し)無いが、非常時だからこそ、専門家でもない人々は、冷静に、情報を受け取り、必要最低限を発信しなければいけない。
投稿元:
レビューを見る
止める、調べる、注意する だね。
この震災でコミュニケーション基盤は広く浸透したけど、使う側のリテラシーを強くしていかないと、白痴に武器持たせるようなことになりかねんよね。次に311クラスの社会的な事件があった時に悪い方に振り切れないよう喚起しないといけませんね。
投稿元:
レビューを見る
ツイッターとかで目にする「拡散希望」とかに覚える気持ち悪さの正体がつかめたらと思えて読んだ。
「善行へのスタンバイ状態」。そんな、みんな世間の役に立ちたいか。参加したいか。
テレビよりツイッターの情報が早くて確実、って安易やな、と改めて思うし、東日本大震災の後のデマ、流言のまとめを見ると、今やから言えるんかもしれんけど、滑稽や。
誰だって情報を発信できる世の中っていいことばかりではないし、むしろ悪いことが最近は目立ってる気がする。
投稿元:
レビューを見る
恐ろしい。
流言やデマが流されることが、ではない。自分がそういったデマを流す側になってしまう可能性があることだ。
この本のデマのいくつかは、僕もTwitter上で見かけた。
○○で爆発が起きた。○○で助けを求めている。被災地で犯罪が多発している・・・。
RTはしなかったと思うが、いくつかは、信じていた。何も考えずにRTすることは、デマを広め人の命を奪う可能性もあるということだ。
デマを広めないためには、
情報を疑うことが必要。
不確かな情報にも関わらず、拡散を希望するような内容や、マスコミが報じていないが、などの枕詞があるものにも注意、とのこと。
東日本大震災を同じ日本の当事者として、もう一度振り返る一冊。オススメです。
投稿元:
レビューを見る
何もしない善意より、何かする偽善の方がよいという言葉に対し、震災の様な有事の場合、何かするのなら結果につながらなければ意味がない的なことを著者が発言していた。
この本でも震災の様な非常時には、デマは人を殺すことがあるというスタンスがとられている。
限られた物資しかないのに、それがデマによって間違った所に届けられたりなど。
意外とその当時ネットを見ていなかった自分としては、そんなの信じるか?というのも多いのだが、やはりその状況だったら信じてしまうのだろうか?
普段から情報のソースの確認や少し考えてみることが重要だと思わされる一冊。
投稿元:
レビューを見る
非常に面白い視点からの研究で、大変ためになった。もともと荻上チキさんはテレビ・ラジオ等で好きだったが、この本ですごい人なんだなぁと再認識させられた。自分はそれほどヘビーなネットユーザーでもないし、SNSも閲覧専門だが、そんな自分でも情報を鵜呑みにしないということが重要なことがよくわかった。
投稿元:
レビューを見る
201204読了
<概要>
・いかにして流言やデマによる悪影響を最小化するのか、災害時の重要な課題
・単に「間違った情報を鵜呑みにしてしまうと恥ずかしい」という話で済まず
・時間や物資、連絡手段などの限られる非常時には、救援活動を遅らせ、被災者などの不安感情をより拡大してしまうことにもなりかねない。
・流言やデマへの実践的な対処法についてフォーカス
<『デマの心理学』オルポート×ポストマン>
・流言=重要さ×曖昧さ
・重要さか曖昧さを減らさなければならない。災害時に重要なのは後者つまり「情報の適切な共有」をして曖昧さを減らすこと。
<東日本大震災のデマの特徴>
東日本大震災の特徴
①被害範囲が甚大だったこと
→不安を抱く人、情報が不足する人が多かった
②情報技術が浸透して以降の大震災
→インターネットを通じて災害流言の拡散速度や規模が変化
③原発事故という要素
→復興に移行できず。専門知識がなければ否定できない。
<第1章 注意喚起として広まるデマ>
・コスモ石油の黒い雨
情報が人から人へと伝えられていく「連鎖的コミュニケーション」の中で
強調 情報の一部が強調される
平均化 情報が削ぎ落とされる
同化 人々の思いにかなうような形に変形
・外国人の略奪、強姦
・性犯罪の増加
・埼玉の水を飲むな
・放射能にはうがい薬を飲めばいい
・メディア関係者、政府関係者、有識者がという肩書きにがあるがゆえに耳打ちされた情報が独り歩き
<第2章 救援を促すためのデマ>
・善意に基づいた拡散により、ニセ情報、不安を拡大する流言の拡大に加担
・ツイッターのリツイート
・SOS系デマ
「会社のサーバーラックに潰されてしまった」釣り
・「電力が足りない」関西・九州
・救援物資を呼びかける流言
意図に反して、現地自治体や物流に大きな負担をかけることになるため、非常に有害。
・放射性物質にヒマワリが効く
<第3章 救援を誇張する流言・デマ>
命に関わるデマ
→
素晴らしい支援を行った「神」を讃えるようなデマ
→
「敵」を攻撃するようなデマ
と時系列に推移
「神」を讃えるデマ
・オバマの演説、空母の写真
・未確認の義援金
・消防隊総括隊長のコメント
「敵」を攻撃するようなデマ
・ピースボートの物資横流し
・辻元議員、東電職員などに対するデマ
<第4章 流言・デマの悪影響を最小化するために>
<流言を鵜呑みにしないためには?>
ハードレイ・キャントリル『火星からの侵入』
・内在的チェック
受け取った情報の内容的な矛盾や妥当性を判断すること
・外在的チェック
それが確かだという証拠を探そうとすること
のダブルチェックが必要
<流言が広まるのを防ぐためには?>
デマを広める「うわさ屋」を減らすことは難しい
「検証屋」が中和情報を対抗して流すことがとても重要
流言を見抜くための内在チェック。
・NGワードに注意。拡散希望など
・再確認が困難な情報
・デマであることがわかっても非難モードではなく共有モードで。
<雑感>
2011年5月20日刊行。ということに驚いた。二ヶ月の間にこれだけ様々なデマが飛びかった。そしてここまで二ヶ月でまとめた荻上さん、スゴイ。
確かにこの震災、Twitterで色々とデマを信じかけた。善意でリツイートしているんだろうなとわかっていても結果的に社会に悪影響を及ぼしてしまう。情報共有に酔ってはいけない。だが、善意なのでなくすことは難しい。
内在的チェック外在的チェックのダブルチェックが処方箋というのはいかにも当たり前のようだが、人の噂がなくならないよに特効薬なんかない。メディアリテラシーを高めよう、と改めて思えた
投稿元:
レビューを見る
積んどいた本でした。流言・デマはこれからも増える一方でしょうから、受けるサイドがうまく対応するしかないでしょうね。限界あるとは思いますが
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災にまつわる、流言・デマの検証本。当時Twitterは相当見ていたので、大体知ってるけど、見なかったらデマにかかることもないのかなと。まあ、少なくとも無闇に拡散することだけは避けようと思う。
投稿元:
レビューを見る
出版されたのが2011年5月20日。震災発生から2ヶ月後という、かなり早い段階でこれぐらいの内容を本としてまとめて出版できたことそのものに対して、まずは評価すべきでしょう。内容はやや少なめながら、論そのものはそんなにペラくなく、しっかり読ませてくれます。
「流言やデマを信じた人たちの行動が「善意」に基づくものであっても、そえrが「善行」として機能せず、むしろ救命活動のためのチャンスロスを生んでしまう」という論はごもっとも。そういったことを理解し、自分自身で情報を咀嚼し、理解して吟味する必要を感じます。
震災発生直後は忙しかったからTwitterなんて全く見なかったから、この本を読んで改めて、地震発生直後のつぶやきのデタラメさにちょっと驚きました。
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災時のインターネット上に流れた流言・デマの広がりとその収束に関して書かれていて大変面白かった。
投稿元:
レビューを見る
昨年5月の時点で冷静な検証をされていることに感服。1年以上過ぎて、未だにデマ・捏造を振りまく上杉・岩上・木下あたりは何なのか…