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いつの時代においても、災害と流言・デマは密接な関係にある。事実、関東大震災の時にも「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という流言が広がり、多くの人々が殺されたという歴史が残されている。しかし、今回の東日本大震災の流言・デマは、情報技術が浸透して以降に起こったいう点に大きな違いがある。それゆえ、災害流言の拡散速度や規模が、これまでとは比較にならない大きなレベルのものであったのだ。
本書は今回の東日本大震災における流言やデマの実例を取り上げ、その対処法をまとめた一冊。流言やデマがなぜ起きるかというメカニズムに着目するのではなく、必ずデマは起きるということを前提に、その影響を最小化することを目的として書かれている点が、最大の特徴である。
◆本書の目次
序章 なぜ、今、流言研究か
1章 注意喚起として広まる流言・デマ
2章 救援を促すための流言・デマ
3章 救援を誇張する流言・デマ
4章 流言・デマの悪影響を最小化するために
厳密には、デマと流言は違うものであるそうだ。デマには何某かの意図があるのだが、流言にはそれがないのである。そういった意味で、本書で紹介されている事例には圧倒的に流言が多い。いったい何を狙いとしているのか、皆目見当のつかないものがあまりにも多いのだ。
◆本書で紹介されている流言・デマの一例
・有害物質の雨が降る?
・放射性物質にヒマワリが効く?
・トルコが日本に100億円の寄付?
・ヨウ素入りのうがい薬は放射性物質に効く?
・日本では物資の空中投下が認められていない?
流言・デマの最大の罪は、救命のためのチャンスロス(機会損失)を生むということにある。しかも、善意に基づく人をも、その悪事に加担させるという点で、罪は大きい。その被害を最小限におさえるものとして本書で紹介されているのが、「流言ワクチン」という考え方だ。
流言やデマについては、時代や国が変わっても、そのパターンにあまり変化のないことが分かっているという。それゆえ、あらかじめ過去の事例を知っておくということが、いざそれらに直面した時に既視感を抱きやすくするという対処法につながる。このワクチンの役割として、本書ではさまざまな事例が紹介されている。
もう一点興味深いのは、「検証屋」と呼ばれる人たちに関する論考である。流言が広がる過程において「うわさ屋」が存在する一方で、中和情報を対抗して流す「検証屋」としての役割を担う人たちも登場し、今回の震災でもその活躍は目立っていた。その際に、最も注意すべきなのは、常に検証屋であり続ける人はいないという事実を正しく認識することにある。ここを間違える人達が、「検証屋」に過剰な期待や偏見を抱き、やがて攻撃を仕掛け始めるという事態を引き起こすのだ。
「検証屋」にも得意、不得意があり、特定の分野に関しては能力を発揮できたとしても、それ以外に関しては不得意な可能性もある。そのバイアスを、情報の受け取り手がきちんと把握できるかどうか。情報の流れの多様化は、同時にリテラシーの多様化も求めるということなのである。
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震災からわずか数ヶ月のこの時期に、
ここまで完成度が高い本を出版されたことに
まず、拍手。
Twitterで「頑張ろう」「気をつけて」って言葉が氾濫していて
そのほとんどが善意だってわかっているけど
なんとなく感じていた、その一言の恐ろしさ。
その正体の意味がなんとなく、理解できた…気がする。
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震災後、ウェブ上に広がった流言・デマの真偽を検証していたブログの内容をもとにまとめられたもの。
流言の内容などブログですでに知っていたものが多かったけれど、検証内容が深まっていたり、その後の推移などが補足されていて、読み応えのある内容だった。
“善意(のつもり)の行動”、耳が痛かった。
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ツイッターをやらない自分でも
聴いたことのある情報がちらほらあった。
ボランティアに行きます、
と伝えたところ犯罪や暴力が蔓延しているらしいから
一人でうろつくな、とかも言われたが、
私の知る限りでは、事件は多発してはいなかった。
が、全く無かったのかどうかは、分からない。
実際にデマなのか流言なのか、
確認出来ないこともあるけど
流されないように自分がしかっりしないと
いけないんだろうなあ。
ひまわりを植えて〜、という情報は本当だったらいいなあ、
とは思ったけど。
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どんな情報もまずは情報源が何か?を常に意識して、今回の様々なデマの傾向を参考に、デマを発信しないよう、これ以上拡散させないような気持ちを常に持ち続けて、情報と向き合うことが大切だと感じた。
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タイトルどおり、東日本大震災後に流れたデマをまとめ、発生と拡散のメカニズムを分析するとともに、対処方法も提案している。
事例として取り上げられている流言の多くは、僕も実際にtwitterで目にしていたし、信じかけたものもある。
リテラシーの問題として終わらせない志向に素直に感心したよ。
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「ソースの有無だけでなく、ソースの質についても十分な注意が必要」
大震災の時に自分は情報に流されていなかったか、またどのくらいデマが広まっていたのか、振り返るのに最適な一冊である。大震災が起こった最中、twitterを眺めて、なんとなく正しそうな情報が流れてきたらRTしておく、実はたったこれだけのことがデマを広げることになっていた可能性があるということ、みんなはわかってやっていただろうか?改めてWEBリテラシーを問い直し、災害時に情報による二次災害を防いでいかなければならないと痛感した。
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東日本震災直後、不安や情報不足から流言(うわさ)だけではなく、意図的なデマまでが拡散していった。
現在は、TwitterやSNSなどで情報が簡単に共有でき、広がるのも早くなった。
流言・デマを広げないためには、「止める、調べる、注意する」
・ソースの有無の確認、ソース情報の確かさの確認。
・Twiiter等の場合、グーグルリアルタイム検索で情報源を調べる。
・チェーメールや拡散ツイットした人に忠告してあげる。
下の噂は、震災直後流れてきたな~
・日本では物質の空中投下が認められていない?
・辻村議員が自衛隊の救護活動を非難した
・黒い雨が降ってくる
等々。。。
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■概要
コスモ石油コンビナート火災による有毒物質拡散など、東日本大震災の後に流れたいくつかの有名なデマの発生、拡散、沈静化の過程を紹介しながら、デマの影響を最小化する方策を検討する。
デマは、情報の 重要さ×曖昧さ に比例して拡散する。
大災害時には命に関わるような重要な情報が、誰もが混乱し、正確な情報を把握していないような曖昧さの中で急速に、広範に拡散する。
その上、被災地外の人も高揚状態になり、曖昧な情報であっても、拡散することで、役に立っているつもりになりたい心理が働くことや、そもそも愉快犯が混ざることで、デマはより増大する。
これらのデマは、緊急対応に当たる機関のリソースを無駄にしてしまうことで、救える可能性のある命を救えなくする害悪である。
多くの人の命が危険に晒される大災害時に、情報の重要さを下げることはできない。情報の曖昧さを下げることが肝要という視点で、公共機関や、渦中の企業に対しては、迅速、正確な公式情報の発信で情報不足を解消することを、個人に対しては、典型的なデマのパターンを知ることで、そもそも情報を疑える素養を身につけること、ネットやメディアを活用し、情報を検証することなどを推奨する。
■感想
「全ての人の情報リテラシーを上げることが大切」などとといっても無理なことを前提に、デマが広がらない方策を検討しようとしているが、予めデマのパターンについて知っておき、疑えるようにすることや、不確実な情報を検証することをすすめるにとどまっており、それは情報リテラシーを上げることとほぼ同義だろう。やはり銀の弾丸はないということか。
あの大混乱の中で起こっていたことの一面を振り返るという点で、興味深い資料である。中には明らかに悪意を持って、目的不明の情報を流す人間もいるといるということは、心しておきたい事実である。
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2011年5月発行。震災直後の「サーバーラック転倒」とか「コスモ石油爆発」などの、ネット上でのデマの拡散についての検証です。拡散によるインフラやタイムラインの圧迫、そして複数からの通報による警察等の業務の障害についても落ち着いて触れられています。事例は震災のものなので、タイトルには「東日本大震災の」とありますが、「ネット上での」と読み替えてもよいでしょう。
社会では、流言・デマから、虚偽・隠匿に興味が移っています。デマとはいえなくても、SNSではいまも反射的ともいえるシェア・RTがたくさんあります。自分が発信しようとする情報に対して、内在的チェック、外在的チェックを行い、興奮や反射だけでない対応が必要です。
何を言って、何を黙っているかを考えさせられました。
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前に受けたとある論述試験で、災害時の情報提供がテーマになっていた。その時は全然知識なんてなくて、ただ思い付いたアイデアなんかを書きつづって終わったけど(もちろん落ちた…)、今の情報社会に生きてる一人として、知っておきたい分野だなと思って読んでみました。
流言についてケース別に構成・説明されている。社会心理学とかヒトの行動心理の分析も合わせてなされていて最後まで興味深く読めた。
デマを頭から信じない、「流言ワクチン」を持つこと。こういう考え方を学校とかで教えていかなきゃいけない時代なのかもしれない。
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3.11直後に主にツイッター上で拡散したデマ情報を取り上げ、どのようなことが起こったのか、実際はどうだったのかを紹介する本。こういった心理の移り変わりを記録するのは今しかできないことなので、資料的意味で非常に価値がある本だと思う。
結局のところ、流言・デマに対抗するにはソースの確認を行うという地味で地道な作業が必要になる。でも、そんな面倒くさいことをやる人(検証屋)がいなくなったらどうなってしまうのだろう。
内容としては、悪意を持ったデマを作る心理と、検証屋が受けるレッテル貼りへの対処が抜け落ちていたので、ここが気になります。
しかし、流言研究って面白そうなジャンルですね。今後のネット社会に重要な観点だと思いますので、今後も発掘していきたいです。
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当時はちょうど家にいて、TVとtwitterを同時にみることができる状況で、この本に紹介されているデマの多くを見ていたためよくわかる話。こういう時は無責任な善意ほど迷惑なものはない。静岡のガン○ム倒壊コラ画像は見たことなかった。
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様々な流言に予め触れ、どんなものがあるか知っておくだけでも、自分が広げる側にならない為のひとつの対策になる、ということで、
注意喚起を促すもの、救援を促すもの、救援を誇張するもの、支援活動を論難するもの
を具体例を交えて紹介してある。
自分自身もツイッター上でそうした情報が渦巻く渦中にいた自覚があったので、そのとき自分が考えていたことでも、反省させられることもしばしば。
マスコミを志す者として、非常時の流言に対しても迅速に情報の真偽を確かめ、ソースを提供していくことも、マスコミの役割として今後必要になるのではないかと思う。
現在事実関係を確認中だという形での報道も、非常時には必要なのかなとも思った。
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昔,吉村昭の『関東大震災』を読んだ。当時は,デマに惑わされる人々の過剰反応で,人命が失われる悲劇があちこちで現出。だいぶ様相は異なるものの,今回の震災でもやはり一時的にデマが広がり問題となった。
著者はブログで震災デマの検証をやってたそうだ。流言やデマが広がる集団心理や情報環境に注目して,デマに強い社会を目指すにはどうすればよいか探る。デマには基本的パターンがあるので,そういうのに既視感を抱いて盲信してしまうことのないように耐性をつけるのが肝要。
情報が人から人へ伝えられる連鎖的コミュニケーションでは,情報の一部だけが強調されたり,一部が削られたり,人々の思いに沿うよう変形されていく。コスモ石油流言も,後から時系列で並べたりして分析してみると,その傾向が濃厚。
デマの多くは,ソースが挙げられていない。「友人の関係者の話では…」とかいう曖昧な権威付けがなされ,「メディアでは取り上げられないが…」として,情報の稀少性,伝え手の優位性を匂わせる。これだけでかなりデマの可能性が高いとみてよい。
メディアで取り上げられないのは,裏が取れない,そもそも事実無根,という可能性があるのだが,それは無視して「メディアに都合が悪いから隠蔽してるんだ」,「メディアは知らないのだ」と解釈することを好む人が多い。政府やマスコミといった権威への不信感が,このバイアスを助長する。
報道機関は,当事者の話を鵜呑みにせず,記憶違い・誇張を排除するため裏を取り,事実を伝えることが使命。現地入りしたボランティアなど,自分が渦中にいるという高揚感で,自分は重要な情報を持っている,それを伝えたいと思うあまり,デマの発信源になってしまうこともある。
関東大震災では,朝鮮人が井戸に毒を入れた等のデマで,自警団により無実の人が殺されるというようなことが起こった。今回の震災ではそこまでの事例はないが,善意から始まった流言が,情報を錯綜させ,現地のリソースに負荷を与えることで,間接的には人命に関わることも。
「放射性物質にヒマワリが効く」という流言があったが,これは16年前の研究報告を取り上げた,数年前のバラエティ番組(匿名リサーチ200X)の内容を,紹介したあるブログが発信源になっていた。内容を吟味せずに多くの人がこういうのに飛びつくと,有害なデマが拡散してしまう。
また辻元議員に関するデマが種々拡散したが,こういう政治的なデマは,当事者が否定したとしても「隠してる」「ウソついてる」として,受け入れられない場合が多い。特定の人物を叩きたい人に対して,そのデマをいくら否定しても,たいてい聞く耳を持たない。
受け取った情報を虚心坦懐に見つめないとデマかどうかの判断は難しい。内容的な矛盾はないか(内在性チェック),確かな証拠はあるか(外在性チェック)のダブルチェックを行なうことが重要。このことは,1938年の米ラジオドラマ『宇宙戦争』パニックに関してキャントリルが指摘。
それでも自分が流言拡散をしてることを認めない人がいる。この現象を理解するには非行研究の概念「漂流理論」が参考になる。自己の責任・加害を否定し,被害者の��任を主張して,「皆信じてた」「緊急時には許される」「信頼されてない政府が悪い」などと言い訳をする。
結局,全員のリテラシーを上げることは不可能。情報が不足し渇望される災害時に,デマが出現してしまうのもある程度は仕方ない。素早く広く拡散するデマは,インターネットを介して流布していくから,技術的にそれが広がりにくくする工夫も考えられる。