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前に『人間の尊厳と800メートル』を読んだとき、ミステリ的な驚きというよりは、謎に満ちた雰囲気で魅せる作風なのかなと勝手に思い込み、その雰囲気はすごく良かったのですが、何となく読むのを後回しにしていた1冊。
しかし、いざ読んでみるとやっていることは本格ミステリそのもの。雰囲気ですら古き良き時代のものを感じました。
芸術に関する蘊蓄も、リーダビリティを損なうことなく、門外漢のぼくにも興味を抱かせるようなもので、作者の教養の高さが伺えます。
事件自体は地味ながら、ダミーの解決ですら伏線が張られているなど、丁寧に作られている印象。犯人については、当て推量で見当がついてしまう向きもないではないですが、犯人の思いが昇華したようなトリックや、庭師の自殺の真相など、胸を締め付けるものがありました。
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作者のデビュー・・じゃない、2作目か。なんというか、そういう粗削りっぽい感じはするものの非常にまとまりがよく楽しく読めました。美術論みたいなものが間に挟まりそれがちゃんと内容にリンクしていたり逆に示唆していたり、と。そういう分野に疎い自分でも面白く読めました。先日読んだのが「いちいち長々した説明を挟む」一冊だったので対比的な意味でも面白く感じてしまった。
しかしここから探偵役である神泉寺瞬一郎だったり、破天荒な大癋見警部がスピンオフしていくことを思うと、非常に濃いメンツ揃いのお話だったんだな、ともw
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エコール・ド・パリについて美術の教養の無い私のような読者にも興味深くまた分かった気にさせる絶妙なバランスの作中作の筆致が好きだ。最後まで読み終えて登場人物に嫌いなヤツが一人もいないの、凄いです。
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エコール・ド・パリとは著者そのもの
エコール・ド・パリ ー 名前は聞いたことがあっても、明確な定義があるわけではない彼らについて知る人は少ないでしょう。モディリアーニや、シャガールなどの作品は実際見たことがありますが、華やかな印象派の画家たちと比べるとあまり好きな画風ではありませんでした。
作品についてですが、作中作に当てはまる「呪われた芸術家たち」という美術論を筆頭に、美術ミステリとしてこれ以上ない水準だといえます。反対に、個人的にはフェアだとも巧妙だとも思えない読者を誘導させる例のアレや、よく分からないミスリード、真相諸々、あまり好みでない要素が多かったです。あまりにも浮いている警部の存在もさることながら、オーソドックスに見せかけて一筋縄ではいかない内容です。
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『美人薄命』で魂を射抜かれた(と言っては大げさか)作家。それで著作を大人買いしたのに、その次に読んだ『言霊たちの反乱』はイマイチ、いやイマサンぐらいでガクッ。この「芸術ミステリシリーズ」には手を出せずにいましたが、数日前に西宮大谷記念美術館で開催中の藤田嗣治展に行き、読むなら今しかないでしょうということで。
エコール・ド・パリブームをつくったともいうべき、有名画廊のオーナーが刺殺される。いわゆる密室殺人事件。豪邸に居合わせたのは、何十年も仕える執事、被害者の妻子、知的障害のある作男のみ。
450頁超のボリュームのうち、こりゃ要らんやろと思う部分多数。推理する登場人物が皆、能書き薀蓄垂れで勿体つけすぎの感あり。誰にも共感できず、特に悪態つくのが仕事と公言してはばからない警部には怖気が走ります(笑)。画家の名前が出るたびにやらかすボケはまったく笑えず、しばいたろかと思うほど。とはいえ、このボリュームを一応は飽きずに最後まで読ませてくれます。ミステリーとしてはどうなんだと思うものの、エコール・ド・パリについてわかりやすく書かれているところはとても良い。
「日本人全体がエコール・ド・パリになるべき」、すなわち一人一派となるべきだと。一理あり。
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芸術とミステリの融合といってるように、エコールドパリの知識が付くっていうお得感あふれるミステリ。
瞬一郎の生き方「ゲリラ・ランダム・アメーバー」いいなと思う。
警察の面々がキャラが濃すぎてバカミス的な印象を受けるけど、まさかの犯人で面白かった。
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芸術探偵・神泉寺瞬一郎シリーズの一作目。 エコール・ド・パリの画家に魅了された画廊の屋敷での密室殺人を描く。
目を惹くのはあちこちに散りばめられた芸術論だろう、この絵画にまつわるエピソードを楽しめるかにどうかが問題だ。 そして芸術家ゆえに展開される推理劇は芸術に興味なくても瞠目することだろう。 深水作品は殺人事件、高度な蘊蓄も堅苦しくなくて良い。