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「原発は安全でクリーンなエネルギー、しかもコストも安く、無尽蔵だ」
こんな宣伝文句で、政府や電力会社が進めてきた原発政策を、単なる「神話」に過ぎないとして、ひとつひとつ片付けていく。
おそらく聞き書きを本にしたのだろう。ときおりデータも掲載するが、議論はそれほど厳密ではない。啓蒙をメインにした本。
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東日本大震災後に様々な原発関連の書籍を読んだが、これが一番わかりやすい。一般の人にもわかるように書かれている。
他の本と併せて読むと尚いっそうわかるはず。
おすすめです。
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原発素人の私にもすごくわかりやすい本だった。
10年前に書かれた本だということがすごい。
この本を読んでいると、原発にはデメリットしかないように思える。
それなのになぜこんなに止めることができないのか、結局誰が悪いのかと、考え込んでしまう。
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3.11による福島第一原子力発電所の事故で、わたしは恥ずかしながら初めて原子力発電の意義、その成り立ちなど諸々のことを知ることになった。
危険性と脅威にばかり目を向けるのではなく、何故、原子力発電なのか、日本にとって必要なエネルギーであるのか、そもそも原子力発電とはどういうメカニズムなのかを知る必要があると思い、なにか一冊原子力発電関係の本を読もうと思った。
わたしは武田邦彦氏や小出裕章氏の本をまだ読んでない。
いつかは読みたいと思っているが、その前に、もう既に10年以上前から、あたかも今回のふくいちの事故を予言するかのように、物理学者として原子力の研究を専門としていた高木氏(故人)の存在を知った時、この本をまず読みたい!読まなくては!と思い、手にすることにした。
前置きが長くなったが、
この本では、まず最初に原子力の構造をわかりやすく、中学生でもわかるように丁寧に解説している。
それによると、原子核の中身である核子は非常に強い力で結びついている。しかし、それに人工的に粒子を叩き込むことで、核子に対して不安定化を起こし、核子の結合を崩すことになる。
この結合を崩す時に膨大なエネルギーが発生する。これが原子力の基本的メカニズムなのである。
ここまで読んで既に文系の(要するに論理的思考が貧困である)わたしは、
「随分、不自然なことじゃないか」と思ってしまった。
(だって、せっかく結びついている核を無理矢理かち割るなんて・・・。)
このように得た膨大なエネルギーは、実は、これがすぐに電力に結びつくものではない。
このエネルギーは、火力発電と同じように、タービンを回し、そこで発電機を回して電気を作るしかないのだという。
この事実を知らなかった私にとっては驚きであった。
なぜこんな古典的な方法でしか得られない電力にしがみつこうとする人が多いのいか。。。
エネルギーの転換率からいったら火力より劣るというのに。。。
原子力が安上がりなエネルギーというのは事実ではないのではないだろうかという思いにとらわれた。
このほかにも、原子力発電のウリである
「クリーンなエネルギーである」ということと、
「核燃料はリサイクルできる」ということについては、
この本によれば、まったくそんなことはなく、
むしろ、二酸化炭素の放出を助長したり、MOX燃料も結局は核のゴミ(使用済み燃料)を生むことになり、その置き場に困ることになるのだという。
折りしも、アメリカと日本が組み、モンゴルにこの核のゴミを捨てる交渉が進んでいるというニュースが最近耳にした。
さんざんいい思いをして、原子力の恩恵に授かったのに、ゴミは他国の、言葉は悪いが先進国ではない国に押し付けるのか?という印象が否めない。
MOX燃料を専門とし大きな国際研究をし、レポートを書いている高木氏であるからこそ、原子力の長所も短所も十分に理解しているはずである。
その高木氏が、結局はこのような要素から、<原子力が安全で無限で安い電力を供給する>のはただの神話であり、現実とは異なり、また、原子力は斜陽の学問であることも明らかにしている。
原子力を知り尽くした彼のこの真実は誰も覆すことはできないだろう。
この本はもし原子力事故が起きたらこうなるだろう、という予測もたてているが、今回のふくいちの事故のことを言い当てたようなところもあり、予言していたかのようだ、と言う人もいる。
原子力発電を賛成、反対にするにかかわらず、この本は是非読むべき、特に大学生から社会人なりたての人達にとってのマスト本であるとわたしは思う。
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まさかTVのドキュメンタリーで彼と再開するとは思ってもみませんでした。
わずか10数年前にまるで隠れキリシタンのように私は反原発論者でしたが、まわりの誰からも嘲笑され無視され、その結果、測り知れない無力感を抱いていたものでした。
7月3日(日)朝10時からのテレビ朝日系列、サンデー・フロントラインという報道番組で、これは悦ちゃんこと小宮悦子がメインキャスターですが、ここでこの本の著者の、原子力という学問の官制科学者から脱却して孤立無援の市民科学者として歩んだ反原発運動の全貌を紹介していました。
存命ならこの7月18日で73歳の高木仁三郎ですが、残念ながら大腸癌で62歳で惜しくも亡くなってすでに11年も経ちます。
彼との運命的な出会いは、中2のときに福井県美浜町へ蟹料理を食べに家族旅行へ行ったことに始まります。普段からカニ大好き人間ですが、なかなか高価で食べられない、ならば現地格安ツアーなるものを企画して実行ということで行ったものの、お刺身から蟹すきまでお腹いっぱい食べた次の日、すぐ近くの美浜原発を見学したときです、一見平和な穏やかな風景に突如として亀裂が生じる感じがするやいなや、数ヶ月前に社会科の研究発表で誰かがレポートした核や原子力や原子力発電所の内容は、あれはひょっとして、ほとんど官製の美辞麗句と嘘で固めたものをそのまま鵜呑みにしたものだったのでは? と疑問に感じて帰路についたのでした。
そして、美浜原発を後にして一番最初に見つけた書店で、彼の『プルトニウムの未来 2041年からのメッセージ』という岩波新書に出会いました。その後、特に高木仁三郎と広瀬隆のすべての著作を貪り読みました。現代書館の『反原発事典1』(1978年)と『反原発事典2』(1979年)の2冊も、総網羅的によくまとめられた本として繰り返し読んだものです。
この本は、原子力の世界的な研究者としての彼の最後の著書です。
第1章:原子力発電の本質と困難さ
第2章:原子力は無限のエネルギー源という神話
第3章:原子力は石油危機を克服するという神話
第4章:原子力の平和利用という神話
第5章:原子力は安全という神話
第6章:原子力は安い電力を提供するという神話
第7章:原発は地域振興に寄与するという神話
第8章:原子力はクリーンなエネルギーという神話
第9章:核燃料はリサイクルできるという神話
第10章:日本の原子力技術は優秀という神話
第11章:原子力問題の現在とこれから
本書は2000年に光文社から上梓された本で、高校生になった私が喝采を叫んだ、つまり俗流ハウトゥものが主流のカッパブックスで出ることは逆にいいことだと、ひとり納得した本ですが、電力会社や自民党政府や専門家と呼ばれる人たちが言っていることが、ことごとく虚偽インチキ隠蔽だということが良くわかる内容の、まさに高木仁三郎の面目躍如の本です。
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おそらく相当な裏づけがあるんだろうけど、この本ではそういうデータの提示は一切なしで、原発はこんなにいいんですよ、という神話9個のウソを政治的、経済的、科学的な観点から淡々と暴く内容。
全体としては広く浅くといった印象。
より突っ込んだ原発の問題点を指摘する本のベースはだいたいここにあるといっても過言ではない。
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市民科学者として、反原発運動の理論的指導者であった高木仁三郎氏が、JCOの事故後に執筆したのがこの本である。高木氏はこの本の出版の2ヶ月後に逝去されている。ここでレビューしているのは、福島原発事故後に出版された文庫版である。
9つの神話として原子力に関する誤りについて解説しているが、非常にわかりやすくかつ内容の深い本である。10年前に書かれた本であるが、老朽化した原発が大事故を起こす危険性を指摘している。現在31基ある稼働後30年経過した老朽原発の即時停止、使用済み核燃料の再処理施設の即時停止が重要だ。特に再処理工場の危険性、プルサーマルのでたらめ、原子力産業の斜陽産業化は最近の報道にはない重要な指摘だ。安全性、経済性の神話も10年前に崩壊していたことがわかった。
多くの人に読んでいただきたい本である。
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この本の著者の本は今回初めて読みましたが、反原発運動をされていて2000年に亡くなった高木氏により書かれて2000年8月に出版された本です。
原子力にまつわる9つの神話について、解説されていますが、今回の地震を契機とした原発事故の影響度を考えると、彼の主張は説得力のあるものだと思います。
そろそろ我々も今まで言われ続けてきてなんとなく信じている「原子力はクリーン」だとか「発電コストが安い」等、本当にクリーンで安全なのか、発電所の建造、廃棄まで考えて本当に経済的かの観点から、原子力の必要性の是非を考える時期に来ていると思いました。
以下は気になったポイントです。
・JCOの臨界事故(350メートル圏内:避難、10キロ圏内:自宅待機)は、元になった核分裂反応は、1ミリグラムのウランが燃えただけの反応であった、広島原爆はその100万倍の1キロのウランが燃えた(p39)
・核エネルギーは、核分裂片の運動エネルギーになり、これが熱エネルギーになって水を温めて蒸気に変える、さらに蒸気の機械的エネルギーとしてタービンを回して発電機が回転して、電気エネルギーとなる回りくどい発電方法となる、これ以外は放射能の問題が障害となって他には使えなかった(p50、52)
・原子力船「むつ」、高速増殖炉「もんじゅ」、JCOの事故にしても、根底に政治的思惑で始まったために技術的基盤が弱かったので成功しなかったのかもしれない(p83)
・戦後、GDQにより財閥が解体されていったなかで、旧財閥系列が集まってグループ化した一つのきっかけとして、原子力があった(p84)
・平成10年現在では、日本の一次エネルギー供給に占めるエネルギー源の割合は、原子力を国産(13%)とすると、輸入81(石油:53、石炭:17、天然ガス:11)である(p101)
・石油はパイプラインでどこでも簡単に運べるし、多くの成分にわけて様々な用途で発電や自動車の燃料、化学繊維等、多くの用途がある、現代社会は石油を基盤にして成り立っている(p103)
・アメリカで原発のキャンセルが続いたのは、事故の影響もあるが、経済的に成り立たないということが大きかった(p161)
・原子力のコストを計算するときの前提として、原発耐用年数を40年に変更(東海原発の32年が今のところ最長)、稼働率も70から80%へ上昇、有利になるような計算方法を用いている(p173)
・原子力発電のメリットとして、当初は巨額の固定資産税が落ちるが、問題としては、地場産業の振興等の本来的な意味での効果は全くないことが後に判明した、一度受け入れると町を維持できないので原発が集中してしまう(p193、197)
・プルサーマルとは、使用済み核燃料を化学処理(再処理)してプルトニウムを取り出し、それとウランを混ぜて酸化物にしたもの(MOX)を燃料にして軽水炉で燃やす計画を言う(p223)
・ウラン燃料は1年分で30トン程度で使用済み燃料もその程度は排出される、それを再処理してできるプルトニウムは300キロ程度、そのうちで燃える成分(プルトニウム239、241)は200キロ程度、全体の1%程度、これをリサイクルと言っている(p227)
・いままでの実績では、16年くらいではトラブルは少ないが、20年を経過するとトラブルが見られる(p257)
・濃度の低い放射線物質(95%)は一般産業廃棄物並みに処分してよいとすれば、解体廃棄物にかかるコストは、6320億円(原子力資料情報室試算)が263億円(政府試算)になる(p285)
・日本はすでに30トン以上のプルトニウムをかかえている、核兵器は1本:8キロ程度でできるので、日本には4000発の原爆が作れる量を持っているといっても過言ではない(p293)
2011年10月23日作成
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原子力で得られるエネルギーの総量が意外に少なく、それが頼りになる時代は短いだろうということがわかった。知らなかった。
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生活にも産業にも必要な電気を如何に得るか.原子力はひとつの対応技術であるが,2011年以来多くの人がその問題点を切迫した問題として考えるようになりました.
一度事故が起こると広範囲に影響し,しかも有事の際に収束させる技術の用意がない(バックエンドが無い),さらに再稼働にも廃炉にも巨費と長い時間がかかる,などと言う点で幅広く実用して良い技術か否か.代替はどれも却下されてしまうくらい原子力にはアドバンテージがあるのか,と言った疑問はかなりの人が持っているのではないでしょうか.
目次で提起している問題点,検討項目自体は良く整理されているように思います.一部,著者の想像で書かれているところがあるようですが,よく言われる利権の問題の他,「使用済み核燃料の処理や廃炉なども含めたときに本当に安い電源なのか」「結局発電機を回しているだけで,核反応から電気を直接取り出すような技術ではない」と言った話は将来のエネルギー技術のあるべき姿について考えさせられます.
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今日(2000年10月9日)、著者の訃報を新聞で知った。62才、大腸ガンだったらしい。まだまだこれから活躍してほしい人だっただけに残念でならない。著者は市民科学者という立場で、長年、理論的に、冷静に原子力政策に対して批判を続けてこられた。私自身、原発は良くないと思い続けてきたが、なぜそう言えるのかということを深く考えずにいた。でも、それでは人を説得することはできない。きっちり何がどういけないのか、そしてこれだけ良くないといわれ続けても、なぜ無くならないのか、その辺のことを知りたいと思っていた。そんな折りに本書が出版された。著者は実はこのような本を書くつもりではなかったらしい。ところが1999年、まだ記憶に新しい東海村JCOウラン加工工場の臨界事故が起こってしまった。そして、日本では原発関連の事故としては初めて犠牲者を出してしまった。このようなことを見聞きしてしまって、だまってすますわけには行かなくなったのだろう。ひょっとすると著者は本書が最後になることを、自分自身分かっていたのかも知れない。そういう意味でもたくさんの人に読んでほしい1冊となった。本書では、なぜこれほど世界が反原発の方向に動いているのにかかわらず、日本政府が原発にこだわるのか、自治体がなぜ原発を誘致したがったのか、そしてなぜ簡単にやめてしまうわけに行かないのか、などが1つ1つていねいに解説されています。およそ30年くらいの間に、日本の原子力政策がどのような方向で動いてきたのか、世界は今どういう方向に向かっており、我々は一市民として原発に対してどうふるまっていけばよいのか、というようなことが本書を読むことによって理解できると思います。もちろん専門的な細かい内容も含まれています。が、本当に自分たちにかかわる問題として本書を読んでほしいと思います。著者の常に冷静な言葉遣いには非常に好感が持てます。もっとキツク書いてもいいのに、と思うこともいくらかはありましたが。ご冥福をお祈りします。(3.11以降、何かが変わっただろうか)
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考えれば考えるほどおかしい。日本政府もここまでひどいとは思わなんだ。
大抵、どの社会問題でも賛成派と反対派の両方の意見を聞くべきだと思うがこれに関してはどんなメリットがあれどデメリットを勝るようなことはほぼなさそうだし、科学的な部分はいくらでも一般人を言いくるめられそうなので聞かない方が良いだろう。
正直、こんなんなら、日本にずっと住んでていいのか本気で考えるよな。