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ディケンズ晩年の代表作。
新訳は、とても訳がこなれていて読みやすい。
ちょうど150年前に書かれた小説なのに、読んでいて今日的な印象を受ける。訳のせいもあるのだろうが、描写がヴィヴィッドで、登場人物のキャラクターも生き生きとしている。19世紀の小説にありがちな、古色蒼然としたところがない。
おそらく、産業革命で貧富の差が大きく拡大した当時のイギリスと、よく似た時代の変り目に我々が生きているからだろう。
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読み応えたっぷり。上下巻をヒトツキくらいかけて読んでしまった。これからこの映画を観ようと思う。複雑な話だけど教訓の多い話。
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読み終わると、胸がいっぱいになった。
生きる活力、人生の寂しさ、人が人に与える幸福。
ディケンズが描く人々は、どれもはちきれんばかりにぎっしりと重たく、それでいて軽妙で、ぐいぐいと読者を引っ張ってくれる。
どのエピソードも素晴らしく、いちいち言っていてはキリがないが、私はやはり、主人公・ピップが寄せるエステラへの思いにもっとも打たれた。
望みのない、ひたすらにみじめな恋。相手は自分をないがしろにし、自分は相手をどこまでも敬う。こう言うとまるで「マゾ?」と思われるかもしれないが、それは違う。この二人の抱えるもの、それは意思の不通なのである。大切なものの違い、自分の生き方に対する価値観の違い、と言ってもいいかもしれない。
一方は誇り高く、感情に冷めた美女。もう一方は人生に迷いつつも、豊かな感情を失わず傷つきもがく主人公。
このどちらもが、自分の大切なものを守るため、自分の人生のためにあがいている。二人は全く正反対の存在ながらも、お互いを認めたいと思って相剋し、自分の人生につまづくのだ。
その二人の性格、そしてそれがゆえの擦れ違いを描くディケンズの筆は素晴らしかった。
そしてこれはこの二人の関係だけでなく、全編に通しても言える。それぞれの立場、それぞれの物の考え方、その「違う」からこそ生まれる豊かで厚みのある世界観とストーリーが、この世のしがらみを吹き飛ばしねじ伏せる勢いで読者を魅了するのだ。
世界は一つではない。そして、人生も一人ではない。
ディケンズの描く世界はどこまでも雑多で、賑やかで、そして温かい。
最初の80ページほどは、「一体いつ話が進むんだろう・・・?」と思ってうんざりしつつ読んでいたのだが、一度勢いがつけばあとはまっしぐら。様々な要素が詰まった魅力的なストーリーと愛嬌ある登場人物たちに魅了されっぱなしだった。
面白かった!!!
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面白かった。遺産をもらえる相手がわかってから一気に面白くなる。
3日たったけどまだ余韻に浸ってる感じ。
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読み終わってしまた、また一つ心の大事なもの箱にこの本が追加されました。
訳者解説でも指摘されている通り、これまで読んだディケンズの作品と一線を画すのが、主人公ピップが恐らく老年になって過去を振り返る形で物語が語られるところにあります。そしてそれによって、主人公はその時自分がどれだけ愚かだったのか、醜い卑しい考えを持っていたのかということを包み隠さず教えてくれます。外面上ピップは遺産をもらいジェントルマンになり地位は上昇していくのですが、内面上では子どもの頃の純な心を失い、昔仲良くしていた人に恥の感覚を覚えたり自分の保身やプライドを守るために立ち回ることが多くなります。こういうのって…私じゃん…私…あぁ…私です…泣、ってなりましたね…
ジェントルマンの定義が、この時代の社会で定められていたように「もともとお金持ちの生まれか、もしくは裁判官とかなんかそういう偉い仕事してる人」ではなく、gentle(やさしく)あることならば、ピップは最終的にやっと真のジェントルマンになれたのだということができ、外面上は好きな人と結ばれずお金持ちにもなれなかったけれど、内面的には立派に成長していてハッピーエンドだなと思いました。ひとりの人間が、最初はみんな純粋なのに恋愛したり陰謀に巻き込まれたり社会で揉まれて、なんやかんやあったけど本当の自分を見つけるという意味ではこれ以上ないくらいの教養文学だとも感じました。
そういう意味では『感情教育』や『魔の山』を思い出します。あれらの小説とも通じているのが、主人公の恋愛が決して実らないということです。これは人生の真理なのでしょうか…!うまく言えないのですが、やはり恋愛感情というのは嘘ではないのだけど、長続きする類のものではないし、たとえ永遠に愛しているとしても結婚したり一緒に暮らせるようになるのとはまた違うことなのだろうなと思います。もちろん愛し合って結婚できる人もいると思うけど、実際には身分が違ったりタイミングが合わなかったり住んでいる場所が遠かったり、そのような実質的な問題で、人と人は離れてしまうのだと思います。でも、大事なのはたぶんその思い出とかあの頃感じていた愛は別になくならないし偽りではない…!ということなのかもしれません…。
いんやぁ〜それにしてもだな、これはあれだな、なんていうか上出来さな!俺にはこんな言葉遣い何年生きたってできっこないよ。わかるか、ピップ?つまりだな、ディケンズって人の頭の中いっぺんパカっと開いてみて、覗き込んでみたいもんだね。もしかしたらそこら中に辞書やらなんやらあんのかもしんねえな。(ジョー風言葉遣い)
(翻訳すると)ディケンズの巧みな語り口や比喩には頭が吹っ飛びそうになりますね…物事をどう捉えるか、どう表現するか、ということ…しかもたぶん「そこにあるものを虚飾なくそのままにいう」ということをやっているからこそなのですね。ぎゃー、すごいよー…
ディケンズラブになりました♡
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すごい展開の数々。ご都合主義のような側面もあるけれども、どんなあり得ない展開(実際、読んでいてどのような分岐もとりうると思った。)が来ても納得させられるような説得力をディケンズは持っている。ディケンズの丁寧で正確な描写だからこそ成せるわざなのだと思った。ミステリーの部分では、その点と点が勢いよく線で繋がっていく様は、競馬で例えるなら、さながら大外から一気に抜き去る追い込みのようだった。ミステリーあり、サスペンスあり、ユーモアありと、色々なものが詰まっていて、ほんと剛腕といった感じだ。プロットが非常に複雑で、よくもまあこんな代物を週刊連載で書き上げたものだと感心した。人生の期待や諦観、愛、悔恨が詰まった名作だった。
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読者の予想を裏切る顛末で面白く読み進めることができた。
生活している階層の違いや、より上流へのあこがれなど、現在においても相通ずるテーマが盛り込まれているように思う。
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これまた良い出会いをした。
田舎に暮らす貧しい少年が、
謎の人物から遺産を継ぐことになり、
そこから大きく揺れ動く人生を描いた作品。
物語として、本当によく出来ている。
徐々に新たな真実が明るみになり、引き込まれていく展開設定、
絶望と希望の良い塩梅、入念な人間観察に基づいているであろう愛すべき個性的な登場人物たち、然るタイミングで然る展開が来る嬉しさ。
ピップ(と私たち)はいずれ帰るべきところに帰っていく、汚された気持ちは浄化されていく。
気づかなかった愛に気づき、
許せなかった人を許していく。
それが人生なんだと思って、
涙腺がどんどんゆるくなっていく。
赦し、信仰、恋愛、友愛、家族愛。
そして私たちの身近にある問題。
この作品が初めて世に出てから幾年も経ているが、
拝金主義で利己的な人間に溢れている世の中。
現代に生きる私たちもそんな社会に揉まれて、
人に裏切られ、裏切り、憎まれ、憎んで、
届かなかった愛や拒んだ愛も数えきれぬ程あるだろう。
そんな時に私たちに慰みと内省する時間を与えてくれるのが、こういった類の物語なのだろう。
物語に人生への、そして愛への礼賛を求めずして、
何を求めよう!
そんな気分に最近はなっているな。
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「大いなる遺産」が誰からの贈り物なのか、物語が展開していく。
友情、恋愛、ユーモア、ミステリなど、あらゆるテーマを内包していてかつ読みやすく、面白い。
テーマの豊富さに加えて、掌を返す人と変わらない人、都会と田舎、金持ちと貧乏、さまざまな対比が織り込まれていて、何を軸に読み進めるかによっても感じ方が変わるように思う。
あとはやっぱりキャラクターが立ってるなぁと思う。かなりの人数が登場するがみんなそれぞれに個性的で、好きな登場人物がわかれそうだなと思った。ウェミックが良い。
345
「今日は痛みはひどいですか?」
「文句は言わねぇよ、ピップ」
「ほんとに一度も言いませんね」
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下巻は一気読み。古典で一気に読めるなんて!ディケンズすごい!
なんていうかもう小説全体が英国流のシニカルな笑いに満ちている。
ヒップの本当の恩人が誰であるか分かったときもそう。自分が裏切ってきたと思っていた故郷の恩人に胸の内を打ち明け、新たなスタートを切ろうとしたときに、相手から幸せの仕返しを受けたときもそう。
一番好きなキャラクターはウェミック。シティ(ロンドンの仕事場)にいる時はカリスマ弁護士ジャガーズの有能な秘書として自分を出さずに淡々と仕事をこなしているのに、ウォルワースの城(郊外の自宅)へ帰ると全然違う。城の前に跳ね橋を付けたり、毎日決まった時間に大砲を打ち鳴らしたり、居間のドアに楽しい仕掛けをしたりして、シニア(父親)との穏やかでユーモアに満ちた生活を楽しんでいる。郵便ポストのような口を開けて食事をし、やることがミスター・ビーンみたいに面白い。「ちょっとした散歩に付き合って下さい」とヒップを連れて歩いた先にたまたまのように教会があって、その中にウェミックの花嫁が待っていた。この憎らしいくらい気の利いた演出の、でもささやかすぎる結婚式の数少ない参列者のなかにヒップを選んでくれた。弁護士事務所のクライアントであるヒップに私的にはそれくらい友情を抱いていたというところに心が温まる。
カリスマ弁護士ジャガーズもその強面と仕事での断固とした態度の裏には依頼人の人生について人知れず深く考えていて素敵。
英国人って恥ずかしがりやなんでしょうね。
そして、誰よりもヒップの本当の恩人…。人の価値は見かけや生まれや育ちで決まるものではないのですね。
「プライドには色んな種類があると思うの」という、上巻でのビディの言葉が印象的でした。
イギリスは階級による格差がはっきりしていると言うけれど、そこを超える冒険をしたヒップを通じて“本当の善とは何か”というのを考えさせられ、読者としても成長したと思います。
笑いもサスペンスも冒険も教育もあるエンターテインメント小説でした。