投稿元:
レビューを見る
9.11と恋。人間臭くて気持ち良く感じた。パキスタン人作家が、9.11とアメリカについて書いているところも、注目されているところだと思う。ラストの縮まらない距離感もそう。
投稿元:
レビューを見る
動物寓話を思い出させるタイトル。
コウモリ。
二人のアイデンティティーの揺らぎ。
見えない聞き手の正体…
引き込まれる物語だった。
投稿元:
レビューを見る
これを恋愛小説とみると、「できの悪いノルウェーの森」でしかないと思う。
でも、この時代の空気感。
たった数年前の人には有り得ない感情、たった数年後の人には平和ボケした資本主義社会。
この瞬間だから切り取れた、この2カ国間だから有り得ない、この断面を見せてもらったことに、著者への畏敬の気持ちを持ちました。
英語の本題「ためらいがちな原理主義者」から、どうしてこの邦題がつけられたのか、謎です。
投稿元:
レビューを見る
パキスタンの街角で話しかけられる。
「失礼ですが、何かお手伝いしましょうか」
そのままカフェの席へ。
話しかけられた男から語られる、アメリカでの生活。
アメリカのエリートが謳歌する華麗なる日々。
そして、911以降変わりゆくアメリカを描く。
恋愛を軸にして、そこから見えるバラ色の世界。
失恋による反転した世界。
終盤の不穏な雰囲気が、今後の世界に対する不透明な時代に対する警鐘を鳴らしていて、いい意味で後味が悪い。
読了後も様々に考えさせられる作品である。
投稿元:
レビューを見る
動物の死骸が炭で焼かれる香ばしいにおいに囲まれながら、花が繁殖のために発する香りを愛でることができるなんて、たしかに人間は大したものですね。そう、僕たちは大した生きものなんです。
投稿元:
レビューを見る
自分的「中東文化に触れてみよう作品」第一弾
パキスタン人作家で米名門大学卒業後、某有名コンサルティング会社に勤務中に書き上げた作品。
9.11後アメリカ人に話しかけるとアラブ系という理由だけで怖がられるところから物語ははじまる。
物語では途中、米国人なら忘れられぬあの悲惨なイベントが起こり、主人公の生活が変わっていく姿を冷静かつ秘めた感情と共に露わにされていく。
外国人にとっては常に前進し、抗いたいが抗えぬアメリカという親分、アニキの姿が徐々に崩壊して行く。
物語は主人公が旅人に語るスタイルで、同時に読者にも話しかけている感覚を味あわせる。
内容は自分が大学〜会社勤務時代に見たアメリカの姿のはなし。そこにはエリートが集う企業への入社、その中のライバルや上司、そしてもっとも印象付ける闇を抱えながらも周囲に輝きを放つ、想いを寄せる女性が登場する。憧れを持ちながらも距離を置いて行く彼女への対応は主人公のアメリカへの視線と通じるかもしれない。
そして章の合間には自らの故郷の説明もユーモアを交えながらはなす。それは日常の人々の生活で、美女に興味を持ち、見つめ続ける男性とバザールの人々の関係や警察と悪ガキの逃走など
中東に行ったことがない人はこんなに彼らがなんにでも関心を持ち、お喋りだという印象を持たないかもしれない。
しかし彼らは本当によくしゃべる。自分のことを話すのが好きなのか、自分の商売に引き込む雑談のためなのかはわからないが、お茶に誘いながらいろいろなことを語り、よく喋る。
中東の人々は寡黙で宗教に熱心で、テロのことしか考えてないと思われるかもしれないが、現地の人にあったらそんなのは一瞬でなくなる。
アメリカの名門大学の構造もリアルに語られる。自国民が多数、留学生は学力レベルだけでなく、人となりもチェックされて入学、国の代表という意識から勉学に励む。そのため通常の学生より成績がいい
「きっちり50分あげるから仕事が欲しければ私を説得してみなさい」
エリート企業の面接シーンの緊迫感はスリルがある。しゃべろうとするが自分を見透かされない様に言葉を選ぶ主人公と厳しいジャッジをする面接官のやりとりの張り詰めた雰囲気が読者にも感じ取れる。
全編通して、就活生が読むのは面白いかも。エリート企業の構造、意識、外資系コンサルや金融機関に通じる泥臭さとミッションを達成した時の充実感なんかは伝わってくる(そんなとこで働いたことないからわからんけど!)
投稿元:
レビューを見る
9.11 を描く小説は多いのだろうか?あるいはまだ世界はこの歴史的事件を語るに際しては混迷の只中に過ぎるのか?
著者自身がパキスタン人だが、アメリカの大学を卒業し、名のあるコンサルティング会社に籍を置いた経歴の持ち主である。人も羨む成功を体現し資本主義の権化としてあさましく功名を求める姿も作者の投影であろう。
9.11を契機に主人公の男も、その恋人も価値の大転換に襲われる。自身の経歴を嫌悪しアメリカ的なものを敵視してゆく変化が生々しく描かれる。
面白いのは、「敵か味方か」というブッシュ的な価値のシーソーに堕していないこと。著者にとってのアメリカは愛憎の対照であり割り切れていない。その思いの象徴としてアメリカ人の恋人との悲恋が描かれる。
これ以後、9.11が変えた世界を描く小説に出会うことはあるだろう。まだ見ぬ小説との比較対象のベースとして、本書はなかなか固い芯を有している。