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歴史の教科書では遣唐使や日宋貿易、勘合貿易などが記載されているものの、その実態までは詳しく描写されていません。
極論すると、昔は中国と貿易していた、誰それは中国との貿易を始めた、というだけで終わっています。
古代から中世にかけての日本と大陸との貿易で、どのような商品が取引されたのか?
本書は「モノ」の視点から、日本と大陸との貿易史を描いています。
中国からは香料、織物、陶磁器、漢籍、銅銭などが輸入され、日本からは木材、硫黄、紙、刀剣、砂金、工芸品などを輸出。
室町幕府にとっての勘合貿易が重要な収入源であり、幕府だけでなく細川氏や大内氏などの有力大名らも大陸との交易を行っていた実態が描かれています。
特に勘合貿易は十年に一回だけと教わったので、朝貢使節のやり取りだけで大した商売でもないように思っていましたが、実はそれに便乗した交易や密貿易が多かったのは驚きです!
また中国だけでなく、朝鮮半島との交易も、取引された商品を中心に述べられています。
著者はドイツ人の歴史家ですが、主にフランスで研究活動を行っており、80年代には東京大学大学院にも留学していました。
日本史の理解はもちろんですが、日本の文学や芸術への造詣も深く、また中国など大陸諸国の実情まで正確に捉えて論究しているのには感嘆させられます。
日本と大陸諸国との交易に関して、西洋人という「第三者」の客観的な視点で描かれ、それでいて日中双方の文化にも踏み込んだ解説は見事です。
海を渡った「モノ」のカラー写真も豊富にあり、交易史についてより理解を深められる一冊です。
10円玉を手に取る時、「銅銭」だと意識するようになりましたねw
ニン、トン♪