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タワーマニアのタワーマニアによるタワーマニアのための本。
タワーおたくにはたまらない。タワーおたくじゃない人には、「へー」で終わる本。
いやぁしかし、出版に踏み切ってくれてありがとうございます、中公新書さん\(^o^)/(笑)
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タワー好きにはたまらない一冊(⌒▽⌒)
タワー好きじゃない人も東京スカイツリー開業に便乗して是非とも読んで欲しい(笑)
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今年5月、墨田区に東京スカイツリーがオープンし、ニュースではその映像がしきりに流された。こういう高い建物がどうも気になる僕は早くツリーに登ってみたくてしょうがないのだけど、しばらくは観光客がどっと押し寄せて混雑しそうだ。のんびりと見物できるようになるには時間がかかりそう。
僕自身はタワー好きというより「巨大建造物好き」なのだけど、世の中にはタワー愛好家というのも存在する。この本の著者もそんなタワー好きの一人で、趣味が高じて「タワー評論家」を名乗るようになってしまった。もちろん評論家を名乗るくらいだからタワーについてはとても詳しいのだが、そのスタンスは非常に大らかだ。
何かのマニアが集まると大抵議論になるのが「定義」について。タワー好きも例にもれず「何をもって『タワー』と定義するか?」という事で紛糾する。確かにサンシャイン60や東京都庁は高くて細長い建物だが、あれをタワーと呼ぶかというと首をかしげてしまう。東京タワーのイメージが強く定着している僕らにとって、「タワー」というと鉄塔然としたものを想像してしまうからだ。
そんな風に、何をもってタワーとするか難しいところだが、この本の著者は非常にゆるくそこらへんを捉えている。自身で「実は私には全く定義らしい定義がない」と言っているくらいだ。ただ、「見上げた時、元気が出る存在」とタワーを位置づけていて、要は見上げるような高い建物、見上げていて楽しくなる建造物は何だってタワーでいいじゃないかと考えているらしい。この姿勢はまったく正しい。定義なんか何だっていいじゃないか、というスタンスがタワーの旅を豊かに彩ってくれるのだ。
このように、著者はタワーの「見た目」を重要視していて、そのタワーの見た目の事を「塔見」と呼んでいる。それは「花見」のようなものらしく、塔のある街が近付くと「塔見」が楽しみでしょうがないそうだ(この本の帯に書かれた『さあ、「塔見」の旅に出掛けよう』というキャッチコピーは秀逸だと思う)。
そんな訳で本書では、スカイツリーや東京タワーはもちろん、五重塔や太陽の塔、横浜マリンタワー、オリンピック記念塔まで、様々なジャンルのタワー・名塔・珍塔を紹介しており、日本全国の「こんなタワーがあったのか!」という驚きを教えてくれる。スカイツリーで盛り上がる今だからこそ、あえてスカイツリー以外のタワーに目を向けてみるのも意義深いだろう。
この本では日本中のタワーを紹介しているが、その中で個人的に意表を衝かれた塔がある。それが僕の住んでいる沖縄から紹介されている「ひめゆりの塔」だ。
「わずか数十センチメートルにも満たない塔だが、この塔がわれわれに語りかける物語はあまりにも辛く重い。(中略)初めて塔の前に立った時、異様な感覚を持った。思ったよりもずっと小さい。塔は見上げてこそ塔なわけだ。鎮魂のために作った塔でさえ小さくせざるをえなかった、沖縄の戦後史に思いを馳せた」
お前は足元を見ているのかと頭をガツンと殴られたような気がした。「沖縄には巨大建造物はないから」とか知ったかぶりして吹聴していたが、大きさなんかではない、もっと重要な塔が目の前にあったのだ。
また著者がこんな所にまで目を配っていることに驚いた。塔の後ろにある洞穴を覗きこんだ著者は語る。「「ひめゆりの塔」とは、地上から見上げるものではなく、穴の底から見上げた時に、初めてその意味がわかる鎮魂の塔なのだと思う」
沖縄県内には、ひめゆりの塔だけでなく鎮魂・慰霊の塔が多数存在している。これら1つ1つが大きな意味を持った塔だ。慰霊の日、戦没者たちの魂に祈りをささげつつ、僕は自分の不明を恥じた。
それにしても、著者のタワーに対する情熱は目をみはるものがある。「どうして塔のような、ただ高いだけのものを作ろうとしたのだろう。そのころから私は「不条理」という言葉では片づけられない、日本人の心の奥にある、塔に対する“精神性”を感じるようになった」というだけあって、その好奇心はもはや「崇拝」とか「信仰」に近いものがある。
タワーに神を感じるというのは巨大なものを畏怖するという人間の性質からすればもしかしたら当然のことなのかもしれない。
例えば1991年に倒壊したという高さ646.38メートルのワルシャワ・ラジオタワー(スカイツリーより高いタワーが倒壊したのだ!)など、これだけでも様々なドラマがありそうだが、少し触れられている程度だ。もっとタワーの世界は奥深い。
ただ、著者がタワー偏愛者であるため、徹頭徹尾タワー万歳で終わってしまっているのは少し残念。現代社会において高い建物を造るという事の意味、コストの問題(こういうのは得てして無駄遣いという批判を浴びる)など、タワーの持つ負の側面も取り上げて欲しかったがさすがにそれは叶わないか。