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長野の公立中学校の先生が書いた本。クラスの日常や行事、受験期で生徒の心に響く声かけはどういうものか、生徒のやる気を引き出す声かけや行動についての実践を述べたもの。
著者はTOSSの人で、言霊とか言い出して、しょっちゅう向山先生の言葉が出てくるので、賛否あるだろうし、毎日学級通信とか、日記に長いコメントとか、休んだら家庭訪問とか、一体この人はどういう授業準備をしているんだろうとか、一体この人にプライベートはあるのだろうかとか、あるいはスマホ、ネット中毒の今の実態とどれくらい合うのだろうかとか、こんだけやる担任がいたら周りの担任が大変とか、色々考えるところはあるのだろうけど、薄い本だし、つまみ食いするにはちょうど良い?感じ。という安易な姿勢で読むのは良くないのだろうけど、実際そう。
教員をやっていると、適切なタイミングで適切に心に響く話が出来るのかどうか、割と試されるが、なるほどと思う言葉かけの例がたくさん示されていて、中学生の指導にちょうど良いと思った。以下はそのメモ。「日常の学校生活が当たり前にできるから、イベントが成功する。毎日の学校生活の中で授業がまじめにできているか。(略)掃除は一生懸命やっているか。そのような当たり前のことができずにイベントだけ協力できるわけがないのだ」(p.15)、「失敗も失敗したままだったら、失敗のままで終わる。大事なのはその後。あやまちのあと、失敗のあとがその人を決める。」(p.16)、「目の前のことをただひたすらにやる。それが『生きる』ということなんじゃないか。」(p.17)、「担任が一〇〇パーセントで動いていると、学級の数名の生徒が五〇パーセントの動きを作る。その周りの生徒は二五パーセントの動きだ。その他は0(ゼロ)である。学級担任が一〇〇パーセントで動いていても学級集団はやる気で熱を帯びない。」(p.23)←んー、これはそうだろうなあ。でもこれをドンと構えるだけの心の余裕がおれにはないなあ。「ABCの法則」(p.32)、つまり「当たり前のことをバカみたいにちゃんとやる」、というのは分かりやすい。「廊下に落ちている小さなゴミを拾う。誰も見ていなくても小さなゴミを拾う。そのような教師の姿を生徒がたまたま見て学ぶことがある。(略)すぐに結果が出なくとも教師の姿が生徒の学びとなる。教師の行為が生徒への種まきである。すぐに芽を出すことはない。しかし、教師が何をしていたのかを生徒はわかっている。」(p.37)、「良い学年はすぐには「できない。学年八割の生徒が大事なのだ。八割の生徒が当たり前のことができるように語り続ける。何を語るのか。それは、学年集団が悪い状況で、個人の可能性がどうなるのか、クラスがどうなるのか、学年がどうなるのかを語る。」(p.48)、「家に帰ったらすぐに机に向かう。(略)これを毎日毎日続ける。はじめはうんと意識して意識して意識する。やがて習慣になるから。」(p.51)、「やる気はいつまでたっても起きない。(略)やる気なんていうものに左右されているとときを逃してしまう。親も『本人がやる気にならないことには…』とやる気になるのを待っているが、そのときにはもう手遅れである。やる気に頼らず自分で行動を起こせる王���励まし続ける。たとえわずかでも自分の力で机に向かって勉強ができた事実を一つまた一つと積み重ねられるように励まし続ける。」(p.53)、「人間は、悩むことが大事、悩むことは生きることに本気ということ。だがね、悩むことばかりに心を使ってはダメ。日常のやるべきこともとりあえずやること。この二つのバランスが大事なの。今の君が、やるべき日常のこととはとりあえず登校すること。そして悩むこと。この二つだと思う。」(p.55)、「問題が起こっているのに、何もしない教師や何も言わない教師を見ると、生徒は確実にやる気をなくし、自分の学級を良くしていこうという思いをあきらめていく」(p.67)、「自分のことを褒めてくれる人の話なら生徒も聞く耳を持つようになる」(p.71)、「生徒は『声をかけられる』ということを、自分のことに関心を持っていてくれると感じる。(略)自分のことを理解しようとしてくれる人と感じる。(略)自分と関係を作ろうとしている人なのだと感じる。」(p.83)←これがとっても重要だと思う、あとは生徒が良くないことを発言して指導したいときには、「もう一度言ってごらんなさい」(p.85)と言うらしい。怖い先生だなあ。「『このくらいはよいだろう』という考えを教師も生徒も捨てることだ。実はどんなに素晴らしいという学級でも、ほころびは、はじめから必ずあるのだ。そこをどのように対応するかがコツだ。教師が、気になったことは、そのときに全体に伝える。これが大事なコツだ。『あとで言おう』『もう少し様子を見よう』と思っているうちに大事なことを忘れてしまう。」(p.107)
以上が、つまみ食いした部分。毎年思うのだけど、今は春休みで、この時期にあらためてこういう本で、決意を固めないとな、と思う。ただ結局は、こういう発信をどういうエピソードと絡めて、どういうタイミングでどういう雰囲気で語るのか、という、時にはその場で即座に判断しないといけないこともあり、最後はそこが勝負なので、もう10年以上教員をやっていても、生徒と関わることは毎日緊張するよなあ、と思った。(23/03)