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2011年、各々がそれぞれの1年を振り返るには、
程よい作品だったと思います。
主人公は、東京で生活する
祖父、父母、中学男子、小学女子のどこにでもある家族。
今の日本で見られる普通の家族の普通の生活を描いています。
震災後、多くの人々が悩み、考え、生活してきた半年間を、
震災後の様々な出来事を冷静に整理し、物語として組立て、
脚色も加えつつ、飾ることなく等身大に描いています。
その時その時を振り返りながら読み進めると、
当時の自分自身の想いや立ち位置、行動を、
主人公の家族を媒介者として、見つめ直すことができました。
好感が持てる部分は、押付けのべき論を述べていない点。
今後、テレビで流された地震や津波、被災地や避難所の様子、
本屋に並ぶ脱原発関連本から拾い集めた情報をつなげただけの
自己満の啓蒙的な小説もたくさん刊行されるでしょうが、
本書は、そのような体裁に落ち込んでいない点に、好感を持てます。
最後の章は、
著者の福井さんご自身の未来への想いを代弁でしたものであり、
その内容を、議論する必要はないでしょう。
大切なことは、本書を読み終えた後、
読者それぞれが、自分自身の未来への想いを見つめ直し、
2012年以降、どのように行動し、実現させていくかだと思います。
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終戦のローレライ、亡国のイージスなど日本の国防を中心に日本の在り方を問う作品を届けてきた著者が、「震災後」を基軸に日本の未来を問う。
読んでる間中、「日本に告ぐ!日本に告ぐ!」そんな警鐘を発してるような感覚を覚えた。
クライマックスの主人公野田の言葉はそのまま福井の言葉と思えてならない。
他人ごとではいられない。でも何かできるわけでもない。国民挙げても数十年のスパンじゃ原発はなくならない。不景気も高齢化も止まらない。それでも絶望も諦観もする必要はない。希望はある。未来もある。いままで通りコツコツ積み上げてこう。
やや冗長で説教くさくも感じた野田の演説を聞き、素直にそう思えました。
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震災や原発報道を見ていて常々疑問に思っていたことに付き、小説ではあるものの考えさせられた一冊。
それは「今の時代においては我々は被災国の人間かも知れないが、後世の日本人に対しては立派な加害者である」ということ。
後代に原発の不始末を押し付け、政治パフォーマンスに乗り、夢ある日本の未来を示すことが出来ない、自分を含む今の日本を担う大人たちがいかに罪深いか、反省することしきりの読後感であった。
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震災後、絶えず人間の無力を感じ、物語の中で語られる闇に囚われていた気がします。
闇の中から顔を上げ、光を探す、ひとつのモデルを垣間見た気がします。
未来へ向かいましょう。
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内容(「BOOK」データベースより)
祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語ー。未来を見失ったすべての人たちに贈る、傷ついた魂の再生と挑戦の旅路。著者渾身のリアルタイム・フィクション。
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「否定するだけではなにも生まれない。人間はいつだって゛結果゛を生きているのではなく、゛過程゛を生きているのだから。」
タイトル通り3/11以降の東京に住むある家族の話。
真山仁「コラプティオ」は震災を題材にした物語であったが
今作はよりリアルな苦悩や葛藤を描いている。
特に被災地の状況はきちんと取材されていると感じ、胸が熱くなった。
後半の演説は工夫を凝らしてはいるがやはり冗長。
それでも今、なるべく多くの人に読んでほしい作品。
【図書館・初読・11/16読了】
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サブタイトルは「こんな時だけど、そろそろ未来の話をしようか」。実に素敵な言葉です。この度の震災でとてつもなく大きな負債を抱え、これから先の長い人生をその返済に費やさなければならない子供達に送る著者のメッセージだと俺は捉えました。何の根拠もないくせに、ただ闇雲に原発廃止を叫ぶぼんくらどもに是非読んでもらいたい一冊です。
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関東に住む普通の(?)家族が震災後に生じた心の闇(どうせこのまま原発とつきあうしかないんだよな結局)と向き合った物語。
防衛省の官僚だったじいちゃんのくだりがなければ本当にどの家にも起こりうることだなあと。よくぞこのタイミングで書けた。
ネタバレだが太陽光発電衛星を打ち上げ、立ち入り制限地域を買い取って受電設備にあてる、はよくぞひねり出したアイデアだし、実現の可能性もきっとある。
我が子にもどうせ地震なんて起きたら何もかも意味ないんでしょ、なんていわずになんとか前向きに生きてほしいモノだ。
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作者から読者へのメッセージなのですかね。
少し前向きに慣れた気がします。
震災を題材にした小説がこうも早く出るものなのですね。
当時の自分の憤りなども思い出しつつ、登場人物たちに共感しながら読みました。
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この時期にフィクションでこうした「振り返り」ができるのはいろいろな意味でリスクもあり、よくまとめているというのが率直な感想。親子3世代にわたる家族の信頼感が柱となった「ニュース解説」風小説。後半はやや長いかも。。。
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野田一家が未曾有の震災、原発過から、未来を紡いでいきます。
国家が国民の生命と安全を守る原則を放棄したことから生じた”闇”を
個人や家族、地域社会や会社そして国家が祓うことができるかどうか。
といっても、主人公の野田さんは、ごく普通の人。こんな人ですから
いきなり大きなことはできません。
ですが、・・・プロット良し、力のこもった秀作です。
評価がそれほど高くないのは、単に好みの問題。
他の方にもお勧めできる作品であることは間違いない。
あの日以来、9ヶ月が経過。日々が過ぎる中で、明日へ踏み出した気に
なってたけど、解決するべき課題から目を背けていただけだってことに
気づかされました。
「未来」と「将来」の違いにも。
こんな時だけど、そろそろ未来の話を。
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震災後の日本に生きるある家族を描いた、ノンフィクションのようなフィクション。「人間はいつだって、結果ではなく過程を生きている」。この言葉が胸にしみた。
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震災後の無力感、原発推進論と廃止論に対して、福井氏らしい切り口での回答を提示。原発1基分で直径5kmのアンテナが要るといっておいて、それで全部がまかなえるような論旨に変わっているが怪しげだったり、静止衛星軌道にそんなに空きがあるのかとか、突っ込みどころはあるのだが、嘆いていても仕方ない、という点は同感。 クライマックスの講演シーンが、作者が狙うほど盛り上がらないのが惜しい。
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大震災発生後、怯え狼狽していた私。
この小説を読んで、こころの取り掛かりが見出せたように思う。
人生は結果を生きているわけでなく過程を生きているもの。
また、未来と将来は違うということを学んだ。
展開は3世代家族の物語だが普遍性もあり説得力もある。しかし未来展望図に納得しているわけではない。
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震災から半年以上経ったとはいえ、
福島原発への処置は進行中なので
読んでいて心がざわざわした。
野田家の中学生・弘人、父・圭介、祖父・輝夫の
3世代を中心とした話で圭介の視点から語られる。
が、父である圭介がやけに子供じみていて共感できない。
結末で「父親」像を際立たせるための幼さだったかと
納得したが、それにしてもひどい。
旧防衛庁勤務であった輝夫と平凡な一会社員の圭介では
言葉の重みが違う。
脱原発を反戦と同じ棚に置いてはいけない、
原発の代替を宇宙に求める具体案をJAXAが研究していたことなど、
興味深い話はあった。
終盤、「男にしか伝わらない話」とあって苦笑。
長女・千里だったらスルー?
震災後の未来というテーマと、野田一家の物語が
ちぐはぐな印象を受けた。
全体として会話文の主がわかりにくく、非常に読みづらかった。
福井氏の著書は初めてだが、すべてこんな感じなのだろうか。
「こんな時だけど、そろそろ未来の話をしようか」
という副題にひかれて本書を手に取った私も
まだまだ”闇”に囚われているのかもしれない。