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2021.2.20市立図書館 →2021.3.5購入
安楽死、子どもの医療、精子バンク、中絶、動物の命、結合双生児の分離手術といった専門家(医療者、法律家、哲学者)でも議論が分かれるケース(モラル・ジレンマ)について具体的に考えながら、人の生死や治療の決定権がだれにあるのか考えさせてくれる入門書。
「生命倫理」というととっつきにくそうだけれど、とても読みやすい。内外で実際に裁判になったものや「ブラック・ジャック」のような身近な作品にでてくるエピソードを軸に、著者が考えるヒント・論点を整理してくれるので、順を追って自分なりに考えることができる。
かんたんに答えがでない(唯一の正解というものがないかもしれない)問題ばかりだけれど、そのことを知っているということがまず大事だろうし、自分や家族の生老病死をめぐってだれもが避けては通れず、なんらかの判断、決断を迫られる局面について、どんな論点があるのかあらかじめ知っているだけでも、いざというときにちょっとは落ち着いて考えられるかもしれない。
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生命倫理に関心があったり、実際にジレンマを感じていたりする人が、最初に手にする本として、とても良いのではないかと思いました。
医療原則については言及していますが、その原則の歴史や、他の規範倫理(義務論とか功利主義とか)の説明は出てきません。倫理を履修したことはないけれど、死ぬ権利や延命治療、意思決定、中絶などに関心がある人に向けて書かれているように思います。
数ある「入門」倫理書に比べて、かなり噛み砕いて、分かりやすく表現しているので、実際にジレンマを言語化するときのヒントにもなりそうです。
また、ブラック・ジャックを読みたくなります。
ボリュームは物足りないので、参考文献やその他の本と合わせて読むことをおすすめします。
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医療にかかわる科学技術の発展は、病気の治療に画期的な成果をもたらした反面、さまざまな倫理的問題を提起してきました。この本はそうした生命倫理の問題について、小説や漫画などを題材にしながら分かりやすく解説しています。
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生命倫理に興味はあるけど難しそうだと感じて手が出せずにいたが、わかりやすい例を多用して問題提起してくれているので読みやすかった。
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命の価値を考えるヒントとなった。ブラックジャックなどの例もあり、読みやすい。生活の質のQOLや、判断能力のコンピテンスという考えも理解しやすかった。
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正解のない、いのちに対する難しい問いを事例で考える
自分の判断能力がなくなったとき、自分はどうしたいか?
子ども、親の代わりに判断をする場合、最善の利益を考え行動できるか?
直面したときに悩むと思うけれど、真剣に考えていきたい。
祖母はボケたら死にたいと言っていたけど、胃ろうで生かされている。私たちのエゴのために生かされているのではないか?最善の利益になっているか、
子どもはある意味親のエゴで生まれてきた。子どもが生まれてきてよかったと思ってもらえるよう、育てていきたい。
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読みながら色んなことを考えた。
自分が、家族が苦しみから解放されたいと願うときに、自分がで下せるのか?とか…。
昔見た「ミリオンダラーベイビー」の場面が思い浮かんだ。
死について、誕生について、また医療を受けること、動物や結合双生児など、さまざまな議論を紹介する。
国によっても考え方や法律が違う。
また、宗教によっても意見が分かれる。
考えても考えても、正解がないことだと思う。
生命倫理について、枠組みから考えるってことや、これまで考えたことがあまりなかったことについても考えられた。
これまでは私自身、中絶は認められるし、安楽死も賛成、動物は好きだけど命の優先順位や人間と同じに扱うのはどうかな…っていう考えだった。
そんな自分の考えを揺るがされるような問いかけがたくさんあり、たくさんのことを考えられた。
ブラックジャックは倫理観も養えるすごい作品なんだな…。
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なかなか考えさせる話題で、読みやすくてスラスラ読めた。
結局生命とは誰がどうやって決めるんだろうね。本書では問題提起に対して最後は読者に問いかける感じで終わってるけど、実際自分にこの問題が起こっあらなあなあにする訳には行かない。
その時に備えて自分なりに考えておかないとね
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「医療が高度に発達した現在、自分の生命の決定権を持つのは、自分自身?医療者?家族?それとも法律?生命倫理学が積み重ねてきた、いのちの判断をめぐる「対話」に、あなたも参加してみませんか。」
目次
第1章 いのちの「終わり」は誰が決めるのか
第2章 子どもの医療は誰が決めるのか
第3章 判断能力は誰が決めるのか
第4章 いのちの「質」は誰が決めるのか
第5章 双子の生死は誰が決めるのか
第6章 いのちの「優先順位」は誰が決めるのか
第7章 いのちの「始まり」は誰が決めるのか
著者等紹介
小林亜津子[コバヤシアツコ]
東京都生まれ。北里大学一般教育部准教授。京都大学大学院文学研究科修了。文学博士。専門は、ヘーゲル哲学、生命倫理学
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この本を読んで、いのちのあり方はそれぞれの価値観によって大きく変わり、いのちの所有権などの「権利」が深く関わっていると感じた。
どちらのいのちが優先か?などのテーマが面白かった。双子の分離手術の話も読んでいて自分だったらどうするだろう、と自分に置き換えて読むことが出来、今まで考えてこなかった生命倫理について考えるきっかけをくれた。
いのちの質、という話も興味深くその質は誰から見た質なのか?その質が劣っていたら価値のない人なのか?など倫理的な問題も知ることができ勉強になった。
こういった問題を考えるのはとても難しいし、答えをひとつに決めるのはもっと難しい。しかし知っておくことで固定観念に流されず自分の価値観で自分のいのちを判断する事ができるならと感じた。
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医学生が生命倫理を学ぶって当たり前だが、意外と一般人は知らないんじゃないかと思う。私も法学や心理学などは学ぶだろうなと思っていたが、「生命倫理学」という学問があることも知らなかったくらいだ。
そして、この本を読むと、医師は患者とその家族の命や生き方に(時にはかなり深く)関わるのだから、医師になる前にこれを学ぶのは絶対に必要だということがわかる。そして私たちは本書を読むことで、「いのち」という概念がいかにあやふやなものであるかを知る。
人間はいつから人間なのか?という問に、受精の瞬間と考える人もいれば、着床した時(受精しても着床するのは20%というのは初めて知った。)と考える人もいる。胎内で人の形になったら人だという人もいれば、胎児には「潜在的人格」はあるが、「現実の人格」とは言えないと考える人もいる。胎児は母親の一部だと考えれば、妊娠中絶は許される(プロ・チョイス)。しかし人と考えるなら中絶は殺人である(プロ・ライフ)。これはどちらが正しいとは言えない問題である。
妊娠中絶は女性の権利である、と聞くとその通りだな、昔、生みたくなくても(レイプでできた子どもでも、自分の命が危うくなっても、避妊方法がなく既に子沢山で貧しくても)産まなくてはいけなかった時代のことを考えると、それが進歩だ、と考えていた。しかし、出産を楽しみにしていた妊娠中の女性が交通事故にあって胎児が死んだら、胎児に対して「致死罪」を認められないということに納得はできないだろう。しかし、これは両立できないのである。
そこまで考えたことがなかった。
結合双生児のケースもそうだ。
分離手術をしなければ二人とも死ぬ、すれば一人が死ぬという場合、どちらが正しいのがで、大きな議論となった。(両親がカトリックで、神から授かったいのちに、人間が手を加えるべきでないと考えていたため、さらに議論を呼んだ。)
同じ結合双生児でもインドのラクシュミと呼ばれた少女は、結合している片方には頭がなかったため、分離手術に反対するような議論は起こらなかった。
しかし、頭がなければ殺しても良いのなら、脳が全く機能していない(恐怖も痛みも感じない)人にも同じことができるのか。
この議論に「正解」はなく、家族、医療者、法学者、ありとあらゆる人々が話し合い、着地点をケースごとに見つけるものだ。そのために必要なのが「生命倫理学」であるということがよくわかった。
これまでアメリカなどの妊娠中絶反対運動が報道されてもどこか他人事だったが、これは胎児の問題にとどまるものではなく、「いのち」という途方もなく大切なもののどこに線を引くかということなのだから、大きな運動になるのは当然だと思うようになった。
新しい視点を得られる本は素晴らしい。
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〈いのち〉に対して過度なまでに干渉できるようになってしまった現代だからこそ、その〈いのち〉についてじっくりと考えることが必要だと思った。
生命倫理の問題は、誰しもが直面するものだ。
自分はどんな選択をするのだろう。