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ピュリツァー賞は、ジャーナリストの質の向上を目指して、アメリカの新聞王、ジョゼフ・ピュリツァーにより創設された賞。ジャーナリズムだけでなく、文学や音楽の賞もある。
写真部門は1942年に設けられている。1968年以降は、速報性の高いものに与えられる「ニュース速報部門」と、社会の重要な側面を捉えた(場合によってはシリーズものの)写真に与えられる「特集写真部門」に分かれている。アメリカの新聞に掲載されたものが選考対象であり、委員会はコロンビア大学に置かれている。
本書は、写真部門創設以来、現在(2011年)までの70年分の受賞写真をまとめた1冊である。
本書に採られているのは一応すべての受賞作ではあり、本書自体、それなりの頁数ではある。だが、シリーズものなどはすべてが掲載されているわけではなく、また各写真に添えられた解説も写真が撮影された背景や撮影者の説明であって、写真自体の解説ではないものも多い。受賞作についてより深く知りたいのであれば、ピュリツァー賞のホームページ(英語)に当たるという手もあるだろう。
本書は全体の流れを知り、またインデックス的に使うのには最適と思う。
ピュリツァー賞の写真と言えば、衝撃的な重い写真が思い浮かぶ。
時代の1枚、ニュース性のある1枚というと、そういうものになりがちなのかもしれない。
ざっと見ていくと、日本の新聞にはまず載らなそうな残酷性の高いものも結構な頻度である。日本と米国の基準の違いについても考えさせられる。
戦場や紛争地帯の写真も多い。60~70年代、ベトナム戦争関連の写真が多く、アメリカにとってのベトナム戦争の大きさを感じさせる。
序文を興味深く読んだ。
シャッターを押す瞬間が大切というよりも、シャッターを押すべき瞬間にその「場」にいるということが大切であることは、一連の写真を見てなるほどその通りと思わせられる。
部門創設当初の写真は連写にはほど遠いものであったことを思えば、シャッターを押す緊張感は一層高かったことだろう。
個人的に印象深かったのは、1958年「チャイナタウンの男の子と警官」、1962年「孤独な2人」、1980年「峠のわが家」、1982年「ある男のシカゴ」、2006年「最後の敬礼」。2008年「日本人ジャーナリストの死」は記憶に新しい。1995年「ルワンダの死の村」の受賞者コメントも印象深い。
*本書では表記が「ピュリツァー」だが、個人的には「ピューリッツァー」と思っていた。特に表記が統一されている、というものでもないのかな。
*発行がナショナルジオグラフィック社なのはなぜなのか、わかるようなわからないような・・・?
*ピュリツァー賞の発表って、毎年どうやっているのかな? 何かの紙面に載ったりするようなものなんだろうか?
--というような話はまったく出てこなくて、よくわからなかった。大きい賞だけに、アメリカだと当然皆が知っているから触れられていなかった、のだろうか・・・?
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1942年から2011年までのピュリツァー賞受賞写真の記録。
かなり有名な写真もあるが、さすがにこれだけ長い年月を網羅していると、初めて目にするものが圧倒的多数。
輝かしい栄光の時や、事故などからの救出、何気ない日常のひとコマを捉えた写真もあるものの、そのほとんどが、目を覆いたくなるような悲惨な瞬間や事件、歴史の一瞬の写真だ。
たとえば事故などから救出される場面など何枚もあるが、もちろん見事に助かった人もいれば、努力空しく助けられなかった人も、救い出されても結局命を落としてしまった人も中にはいる。
歴史の流れの中で、群衆にリンチされ惨殺されてしまった人々、自然災害になすすべもなく命を奪われていく人々、今ここで写真として目にすると、なぜその瞬間がこんな風に写真として残ってしまっているのか、という憤りに似た思いを感じなくはない。
同じように、カメラを向けている間に、その瞬間の困難にある人を救えなかったのか、というジレンマに、少なからずカメラマンは陥るというがしかし、ジャーナリズムというのは「伝える」ことで初めて、その目的、存在意義を果たすことができる、ということなのだろう。
心が痛む写真が多いが、命を張ってその瞬間を撮影してきたカメラマン、ジャーナリストがいるからこそ、私たちは過去を振り返り、歴史を知り、そこから学ぶことができる。と、思いたい。
愚かな歴史を繰り返す、人間ばかりですからね…。
どうでもいいことかもしれないが、受賞作品の数枚が掲載され、それに対してひとまとめに解説が加えられているが、中にはその掲載写真が具体的に何なのか、解説を読む中ではわかりにくいものもある。できれば写真一つ一つに、キャプションが欲しかったな、という私のわがまま。
それから、下世話なことかもしれないけれど、救出され助かった人が今どうしているのか、なんてことがちょっと気になったりして。彼らのその後、みたいな説明はほとんどないので…バラエティ番組の見すぎかな。
そんな趣旨の本じゃないもんね、すみません…。
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現代史を一望できる超一流の報道写真の写真集。正直、目を背けたくなるような、胸を抉るような強烈な写真が多く、一枚一枚が与えるメッセージがきつい。これだけの現実があって今があると思うと、今の普通の生活が凄く貴重に思えてくる。戦争、暗殺、難民、テロ、災害・・・と苦しく辛い写真が大半だけれど、その写真が撮られた経緯やエピソード、カメラマンの苦悩がまた凄い。奇跡の救出や、家族の再会という感動的な写真もあり、人間の裏表が強烈に見える本でした。
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1942年から2011年までの写真部門受賞作品を収録。アメリカの新聞報道で使われた写真ということで,偏りもあるが,歴史的瞬間を見事に記録した写真が集まってて圧巻。
94年受賞の「ハゲワシと少女」を始め,ショッキングで何度も引用される写真が多い。日本ではあまり取り上げられない残酷な場面を写した写真も。76年バンコクの左翼学生と右翼学生の抗争,80年リベリアのクーデタでの旧指導層の処刑,93年ソマリアで引き回される米兵の遺体,04年イラクでの米軍事会社社員の焼死体,など。もちろん,相当の危険を冒さなければこういった写真は撮れない。そこへあえて飛び込んでいくカメラマン。すごい。
歴史的事件の写真だけでなく,レスキューの瞬間や日常風景を切り取った写真,オリンピックの写真なんかも。
カメラ機材の変遷にも注目。初期の受賞作は,大きくて手間のかかる4×5スピードグラフィック。連写とかできないのにこれで決定的瞬間を撮るなんて…。次第に機動性が高い35ミリが増え,モータードライブで秒間十コマ撮影が可になり,デジタル化まで。カラー化が枝葉に見える進化。
伝送技術の進展も,速報性に寄与した。昔は,フィルムの現物を運ばなくちゃならなかったんだから,大変だったんだな。カメラも通信技術も進歩して,ますます印象的な写真が,迅速に届けられるようになった。今年のピュリツァー賞では,東日本大震災の写真の受賞があるんだろうか?
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1枚の写真がこれほどメッセージ性をもつものかといったことを、連続して見ることに興味ある方にお勧めです。
それにしても、圧倒される写真ばかりでした。当たり前のことなのかもしれませんが。
偶然のものもあれば、記録したものと、その1枚、1枚の持つストーリーも大変興味深いものでした。
ある従軍カメラマンのエピソードも驚きでした。戦争の取材で生き残るための方法が書いてありました。
ある空間の一部分を切り取るといったことと、戦争全体を俯瞰して、判断する能力は、ある意味、共通した能力なのではないかと感じました。
どの写真も印象に残りますが、沢田 教一さんの1枚、そして、高校生の時、衝撃を受けた『テロルの決算』の題材なっている浅沼稲次郎暗殺事件の1枚が、強く目に焼きついて残りました。
誰もがカメラを持ち歩く時代だからこそ、報道カメラマンの持つ、洞察力、行動力をテーマにそった撮影というのを教育の中に取り入れたいとあらためて強く感じました。
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報道写真というとやっぱり悲惨な物が多いですね。数々の有名な写真と、その写真にまつわる背景を記した文章で構成されています。
中には心安らぐ写真もあり、救われた気がしますが、全体的に、重い気持ちになってしまいます。
お酒を呑む気も無くなってしまいました。でも、現実から目を背けてはいけないんです。
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ピュリツァー賞の受賞写真を1942年の賞創設以来の受賞作品を紹介する。
写真のテクノロジーの進化、受賞者のその後の生涯などが紹介されている。
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過去に受賞された全写真が掲載されています。ピュリツァー賞に関して、こちら(Wikipedia)
さらに、情勢やなぜか使用したカメラのメーカーやレンズなどの情報も記載されています。
文章読むより、写真だけで世界情勢が伝わってくるのは素晴らしいです。
しかし、よく見ていくとデジタルカメラが導入されたであろう前は、社会問題がメインだったのにデジタルカメラ化後は自然災害も多くなってきたのかな?
ピュリツァーと言えば社会問題をテーマとしたものだと思っていたけど、いろいろな部門があることもびっくり。
なんでしょう、ピュリツァー賞っていうのは、本当はあってはほしくない社会情勢を表しているような気がします。
世界に社会問題を提示するという上では、ジャーナリズムは大事だけども、受賞することが名誉なのか複雑なところですね。
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本書には、ピュリツァー賞の写真部門が創設された1942年から2011年までにピュリツァー賞を受賞した写真が掲載されている。それぞれの写真には、撮影に至った経緯や撮影の瞬間の気持ちといった写真家の背景や、写真が撮られた場面の説明が加えられている。前半の受賞写真はすべてモノクロで、後半ではカラーが多く登場する。
米国の日刊紙に発表された写真の中から選ばれるというピュリツァー賞の性質として、日本ではあまり馴染みがない写真(写真が伝える事件や出来事)も多い。それでも、写真が伝えるインパクトは十分に感じられた。
動画が伝える情報量は一枚の写真よりもはるかに多い。テレビだけでなく、YouTubeにアクセスすればたくさんの重大なニュース映像をいつでも観られる。そのため、現在では静止画(写真)の重要性は低くなっていると感じられるかもしれない。しかし、本書を読むと、それは大きな間違いであることに気付かされる。一枚の写真は、その写真が伝える瞬間が永遠に留められているために印象的で、長く記憶に残る。911の事件当時、飛行機が貿易センタービルに激突する動画を何度も繰り返し観て衝撃を受けたが、いまでも覚えているのは「世界貿易センターへのテロ攻撃」の二枚の写真だ(ビルに飛行機が追突する寸前の写真と膨張したビルが爆発している写真)。
私は、まず写真をじっと観て、それから写真に添えられた解説を一つひとつ読みながらページをゆっくりと繰っていくという方法で本書を読んだが、ピュリツァー賞受賞写真の写真集として写真をぱらぱらと眺めていくだけでも本書は楽しめると思う。
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1942年の受賞作から2011年の作品まで。
こころ暖まる写真もあるが、圧倒的に多い戦争と暴力と貧困!
多くを占めるモノクロ写真が、なぜか悲惨さを強調する。
人間って、いったい何をしてきたのだろうと考えさせる。
カメラはライカとコニカ、そしてフィルムは圧倒的にコダックが多かった。
そんなところにも時代の流れを感じる。
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この国では、現代史は自ら継続的に学ばないといけない。
あくまで一面であり全てではないが、強烈な基礎資料、基礎教養である一冊。
読後はお笑い動画でも見て気分転換し、引きずられないようにするべし。
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1917年、アメリカの新聞王だったジョゼフ・ピュリツァーの遺言により
ジャーナリストの質の向上の為に設けられたのがピュリツァー賞だ。
報道写真部門が設けられたのは1942年。その初年から2011年までの
受賞写真を収録したのが本書である。
購入するのに1ヵ月ほど悩んだ。ただでさえ我が家には写真集が多く
ある。専用棚は既に飽和状態。それなのに何をやってくれるのだろう、
ナショナルジオグラフィックは。それでも新刊書店のから手招く誘惑
には抗しきれず、購入してしまった。うぅ…本棚、買わなきゃ。
子供の頃、祖母が購読していたグラフ雑誌で目にしたが日本人初の
受賞作となった「浅沼社会党委員長の暗殺」だった。撮影者は毎日
新聞のカメラマンだった長尾靖。あの頃は受賞作だとは知らずに
眺めていた。
後年、ノンフィクション(ジャーナリズムという言葉はまだ知らなかった)
に興味を持って写真も多くを目にするようになった。長尾氏以外には
日本人ではふたりの受賞者がいる。
その作品は共にヴェトナム戦争で生まれた。川の流れに首まで浸かり
ながら危険な場所から逃げるヴェトナム人一家を撮った沢田教一の
「安全への逃避」。降りしきる雨の中、ポンチョをまとい束の間の休息
を得ようとするアメリカ兵を写した酒井淑夫「より良きころの夢」。
過去の出来事が、写真を通して現代に甦る。そこには時空を超えた
「瞬間」が存在している。
報道写真なので戦争や内乱、事件、事故が多いのは致し方ないが、
オリンピックやアメリカ大統領選挙、家族の再会などの作品もある。
撮影時の状況が物議を醸した「ハゲワシと少女」はそのインパクトも
さるものながら、撮影者ケビン・カーターのその後に思いを馳せると
切なさが一段と胸に迫る。
その写真が撮影された時の状況、撮影データなども記されており
読み物としても役に立つ。
ファインダーを通し、悲しみや喜びを切り取り、世に残そうとして
来たすべてのカメラマンに感謝を。そして、彼らの感じたであろう
痛みを、少しでも理解出来るよう。
彼らがそこにいて、ファインダーを覗いていたのは、偶然に過ぎない
のだから。ほんの少し、何かが違っていれば別の誰かがそこにいた
かも知れないのだから。
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ああ、神様と言いたくなる。
戦争の現実、事故の悲惨さ、難民の悲しさ・・・
命を危険にさらしながら撮られた写真が真実を教えてくれる。
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当然「良い報道写真」に贈られるピューリッツァー賞だが、
その「良い」という基準はハッピーになれるというものではなく
瞬間的な事実とその周縁までを捉えられたものを
良い写真というようだ。
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一枚一枚の写真からメッセージ性を強く感じられる作品集。各写真の背景やその写真を撮った写真家のその後までバックグラウンドまで掲載されているので、写真展のよう。これらの作品が存在する意味を私達は学ばなければならないと思う。