紙の本
宿命を負った二人の中学生が紡ぎ出す感動の協奏曲
2015/11/08 05:04
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投稿者:garuhi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある宿命を背負って生きている桑原サトルは「(ひとり)ぼっち状態」を甘んじて受け入れている。もう一人の語り手仲村ナズナは幼い頃病気で母を失い、父は外に愛人をつくり捨てられるという辛い過去を引きずり異性への反発を強めている。そんな2人の中学生が、合唱サークル活動を通して「Nコン」で課題曲「一五歳への君へ」を合唱するまでを、交互に感情を抑えた口調で紡ぎ合う、まことに奇妙な雰囲気を漂わせている作品である。
「 勇気を失うな
くちびるに歌を持て
心に太陽を持て 」 フライシュレン 山本有三訳
もちろん、著者はこの抑えられた口調の背後に、この歌が通奏低音として流れ出していることを計算に入れているだろう。
ライトノベル出身の著者の独特の語り口と、現代の青春群像が醸し出す雰囲気が微妙に・巧妙にマッチしているのだろう。そうでなければ、マンガの原作にもなり、映画にもなるという本書の人気を説明できない。
現代若者気質というものを肌感覚として感じさせられた一作であった。
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すっごい読むのに時間がかかった。
中田永一さんの本は好きで全部手にとってますが、中田永一さん名義では初の長編ですね。
五島列島の合唱部のお話。
まず方言に慣れなかったからか読みづらかった。
エピローグでのサトルくんのお兄さんに感動。
でも全体的におとなしくなあなあで盛り上がりにいまいちかける。
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【長崎県五島列島のある中学合唱部が物語の舞台。合唱部顧問の松山先生は産休に入るため、中学時代の同級生で東京の音大に進んだ、元神童で自称ニートの美しすぎる臨時教員・柏木に、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。
それまでは、女子合唱部員しかいなかったが、美人の柏木先生に魅せられ、男子生徒が多数入部。ほどなくして練習にまじめに打ち込まない男子部員と女子部員の対立が激化する。夏のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)県大会出場に向け、女子は、これまで通りの女子のみでのエントリーを強く望んだが、柏木先生は、男子との混声での出場を決めてしまう。
一方で、柏木先生は、Nコンの課題曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課していた。提出は義務づけていなかったこともあり、彼らの書いた手紙には、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた--。
】
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合唱を通して、また一つ成長する中学生たちの姿が読んでいて清々しかった。
昔の自分はどうだったかなと思いながら、読んだ。
みんな様々な家庭環境を抱えていたり、苦い恋を経験したり。
男女の対立があって、なかなかみんなが一つになれない時もあり。
そんないろいろなことを乗り越えてみんなで歌った合唱には、
人の心を確かに打つのではないか。
読後が非常に爽やかだった。
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長崎の五島の中学校を舞台に、合唱部の特別な一年をつづった物語。それぞれのキャラクタの悲喜こもごもなエピソードに笑わされたり切なくさせられたりされながら、最後の最後の「合唱」でのひとつになった想いの純粋なうつくしさに、涙涙、でした。方言や情景の効果もあって、どこか懐かしさを感じる、じんわりとあたたかくなる作品でした。
サトルのキャラが特に秀逸だなと思いました。ぼっちマスターな描写は作者の定番的なものですが、どこか悟ったふうだったのがわかる手紙を読んだうえで振り返って考えると、意味があっての「ぼっち」だったんではないかと思えて…切なくさせられました。せめてあの子と幸せが続いて欲しいなと、願います。
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好きな作家さんです。第3作目。
皆さんのレビューで知ったのですが、乙一さんの別名義やったとは…!
山白朝子さんも乙一さんの別名義なんすねー。びっくりびっくり。
そういえば乙一さんの小説、まだ全部読んでへんような。読もう。
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エンディングで思わず泣いてしまった。
物語としては、現実離れした事故や事件が起きるわけではなく、淡々と進んでいく。どこにでもありそうな中学生の青春ストーリーだが、読後感は爽やかだ。
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何かに熱中できたあの頃…。
まぶしい思いで読みました。
さとるくんが切なくて、子どもの強さと親のエゴとを、身に染みるなぁ、と本当にせつなかった。
良かったです
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九州の離島の中学生の合唱部の話。久々によい青春小説に出会えた気がする。物語にひきこまれ一気読みを余儀なくされた。合唱は他人と力を併せて成果をだす行動で、そういったところが、家族、友達、恋愛など他の物事に対しても重要なかかわりをもつ。いい話
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方言がいい雰囲気を醸し出していた。いいね青春、いいね合唱。中田永一らしい青春小説だった、ひと味違う。
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中田永一さん名義の初の長編作品。長崎の離島を舞台に合唱に打ち込む中学生の姿を描く。
何て心が温かくなる小説なのだろう。歌声が頭の中一杯に鳴り響く。読み進めるにつれ、心が熱くなり涙が溢れてくる。この余韻にいつまでも浸っていたい。いつまでも大切にしたい小説です。
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三省堂書店有楽町店(@yrakch_sanseido)さんに感謝。
何人かの持ち回りの一人称で進む話のどこがよいのか、最初は分からなかった。
ただ読みやすくてつらつら読んでいくうち、終盤(特にエピローグ)にぐわっときた。
八方うまく収まっちゃって出来過ぎな気もするけど、よかった、が上回っています。
一読の価値あり。
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あぁ、久しぶりに合唱したいなぁ。最近は歌うっていってもカラオケで歌うくらいしかしてないし。
読みながら、合唱してた頃を少し思い出した。
桑原くんの孤独とか悲しさとか、合唱を通して少しずつなくなっていくのが嬉しかった。
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『くちびるに歌を持て、勇気を失うな。心に太陽を持て。』どんなに苦しいときでも、つらいときでも、不幸なときでも、迷ったときでも、かなしいときでも、だいじょうぶ。私たちは涙をぬぐって、いつだって笑顔になれる。
タイトルも、その意味も、ストーリーも、登場人物の描写や会話も、全部絶妙なバランスで上手いなと思いました。
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歌は、いいですね。期待したような恋愛小説とは違ったけど、これはこれで好き。青春は、せつなく、楽しい。命も、運命も、この小説の中にあっては、すがすがしい。