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出版時、話題になっていたのが気になりながら、ちょっと避けてました。
読んで良かった。
震災当時、「復興」「チャリティ」などという言葉を冠に頂いた事業、商品がたくさん、数え切れないほど、今までのはいったい何だったんだ、言葉一つ付属されるだけで、中身がそんなに崇高なものに変わるのか、と疑問に感じたほどたくさん出現したよな・・・ということを思い出しました。
放送禁止用語だらけのチャリティAV撮影のメイキングに挟まれた、「震災文学論」。
正しくて美しい言葉ではなく、今のリアル(とされている世界)で切り捨てられてしまう言葉たちが詰まっています。
「不謹慎」って、何よ?「自粛」って何よ?何に対しての謹慎で、何に対しての自粛なのか。その対象や、そこに向かう意味も知らずに謹慎や自粛だけをする方が、罪深いのかもしれないな。なんてことを考えました。
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原発をテーマにしたAV監督の苦悩?
重い事件をAV監督の苦悩に落とし込んでいてコメディーになっているけどテーマはしっかりしていて、監督を取り巻く状況がセカイのそれと同じであって、たださわいでいる。
震災文学論にはまだ読んでいない作品がたくさんあってどれも面白そう。
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東日本大震災のチャリティーAVを撮るよう命じられた男の苦悩と葛藤を描いた小説。
ちょっと前に著者が東浩紀のネット番組にゲストで出た際、主に原発に関して「それまで安全安心と盲信していたのに事が起きた途端に手のひらを返したように避難する。こんな馬鹿馬鹿しいことはない」というようなことを言っていた。
チャリティーAVも相当馬鹿馬鹿しいが、現実の方が何倍も馬鹿馬鹿しいだろというわけだ。
深刻な現実を馬鹿馬鹿しく描き出した作品としては『ジョン・レノン対火星人』が挙げられるだろう。
僕はこの作品や『さようなら、ギャングたち』など著者の初期作品が好きで、前述のネット番組で東浩紀が「『恋する原発』は高橋さんの中でも好きな作品で、読んだとき『ジョン・レノン対火星人』や『さようなら、ギャングたち』のときの高橋さんが戻ってきたような印象を受けた」と言っていたので本作にはかなり期待していた。
結果的には僕の好きな2作品の奔放さが見られたのは3割くらいで、残りの7割はわりと普通の小説小説していた。
だから★ひとつ減らして4つ★とした。
ただ、その3割がとてつもなく面白い。
具体的にどこかというと、セリフだけで構成されているところ。
地の文が全くなく、それどころか「」すらついていない。
それでもそれが誰のセリフかわかるのだ。
以前ライトノベル好きの友人がこんなことを言っていた。
「ライトノベルはセリフ中心だから読者はセリフのリズムで文章を追っていくのだが、その際、どうしても地の文のところでそのリズムが狂ってしまう。今後の課題はリズムを狂わせない地の文をどう書くかで、その先にライトノベルの進化があるんじゃないか」と。
僕はその友人の言っていたライトノベルの新たな地平を前述の3割に見た気がした。
いや、ライトノベルに限らず、これは文学の新たな地平のひとつでもあるんじゃないか。
もちろんあの3割の記述方法だけで全体を構成しようとすると、イメージを広げやすい反面、広げた風呂敷たためない問題が出てくるのは否めない。
それでもそれだけの価値があの3割にはあるような気がする。
高橋源一郎はやっぱり面白い。
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個人的にはアリだったし、軽やかな文が含む痛烈な毒が心地よかった。
不謹慎の極みである。まったくだ。チャリティーAVなど!(褒めてます)
ただ、震災後、一息に書かれたであろう本作は明確な意図の下に書かれているのではないか。書き散らしたというと印象が悪いが、情報は膨大だった。そこを目がせいて仕方なかった。著者のいいたいことをもっともっとと。
途中の震災文学論も面白かった。引用されている作品はいずれ読んでみたい。とりあえず、ナウシカを引っ張り出さなければ。
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キュートなタイトルに反して震災チャリティーを目的にしたAVという設定の破天荒な作品。低俗、猥雑、俗悪、非常識、そして不謹慎といった言葉でかたづけることもできるが、悲惨な事実をエンターテインメントに昇華させてしまっていることが何より凄い。文中に挿入された様々なAVタイトルについ声を出して笑わされたのも事実。
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なんと形容していいのか分からない・・・
小説パートはハチャメチャな展開と毒で笑えた。往時のテキストサイトを読んでいる気分。全編にわたり卑猥な単語がゴシック体太字で散りばめられているので電車の中では読めない。
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ちょっとバカっぽい内容・・
嫌いじゃないわ~。こういうの。笑
楽しく読めた。
後半の「震災文学論」。なかなか読み応え有り。
P228 【おそらく震災はいたるところで起こっていたのだ。わたしたちは、そのことにずっと気づいていなかっただけなのである】同感です!!
ちなみに著者は、
1951年広島県生まれ。
◾︎内容(「BOOK」データベースより)
大震災チャリティーAVを作ろうと奮闘する
男たちの愛と冒険と魂の物語。 ← !!!
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もしもAVカントクが福島支援のチャリティビデオを作ったら? という設定で書かれている小説。面白くて一気読み。なんだけど、これは物語ではなく、小説の体裁を(いちおう)取っている評論であるように思えた。日本の文学作品を評論させたら右に出る言論人はいないんじゃないかというレベルの高橋源一郎氏が、この作品で切っているのは2011年の日本という国そのものだ。しかも表層的な現象を切り取っていのではなく、できるだけ命の根源に降りていった基本のところ、人間がやってきて帰ってゆく闇まで降りていって、そこから日本人を見上げている。
その意味でAVカントクと人形(ダッチワイフ)の取り合わせは興味深い。自分としては一瞬、押井版攻殻機動隊のラストシーンを思ったのだが、命の始まり、つまりセックスに関わる仕事をしているAVカントクが「死」を象徴している人形にエロスを感じているという点がね、面白いのよ。
途中、箸休めのようにマトモを装った評論が入るのだけど、その中でナウシカ(コミック版)のラスト近くの名セリフが長々と引用されていて、それがまるで違和感なく、フクシマ後の世界に一致していることに驚いた。だって、あの一連の台詞は20年前に書かれているのに。恐るべし、ミヤザキハヤオ、と心底思った。苦海浄土の引用も、命の闇を示す例として、とても良かった。
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AV監督である主人公が、東日本大震災のチャリティAVを作る話。
震災は物語のちょうど真ん中くらいで起こり、その後主人公はAV製作会社の社長にチャリティAVを作れと命じられる。震災の情景描写はほとんどない。ただ背後にほのめかされている。
冒頭にはこうある。「いうまでもないことだが、これは、完全なフィクションである。もし、一部分であれ、現実に似ているとしても、それは偶然にすぎない。そもそも、ここに書かれていることが、ほんの僅かでもら現実に起こりうると思ったとしたら、そりゃ、あんたの頭がおかしいからだ。」
これが結構ずしんと来た。
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トンデモなくエログロいのに面白く、そしてなんとなく知的。エキセントリックでアヴァンギャルドな作風の高橋源一郎の真骨頂。あんなバカらしいエンディングにホロリとさせられてしまうのは、「あの日」を経たせいなのかしら?
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アダルトヴィデオを原発事故のメタファーに見事に描き切った名作。アダルトヴィデオは著者の好きな?テーマの一つとはいえ、ここまで構成しきったことに敬意を表する。
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あなたは、この小説に、賛成ですか、反対ですか?
―表現の自由をかけた過激な言葉の羅列。原発事故がもたらした日本の混乱に鋭く切り込み、私たちが人間であるために、そして、人間である意味を問う、愛と悲しみの超エンターテインメント―
東日本大震災の被災者たちを救うため、チャリティAVを作ろうと制作スタッフが立ち上がった。その前に立ちはだかったのは現代ニッポンのモラルと言葉の厚い壁だ。制作会社の社長も、監督も、自分自身の人生と生活をかけて、プロジェクトに挑む。そして、元72歳のAV女優・ヨネさんの福島で行われた葬儀で、スタッフは姪のヨシコさんに再会する。郷里は放射能汚染で帰れない。
そこに、近所の小学生サオリちゃんがやってきた。ヨシコさんとサオリちゃんは愛の問答を開始する。
過激な表現のなかに優しい詩情が入りまじるストーリーと、想像を超えた美しい結末が感動を呼ぶ渾身の長篇小説。放射能に汚染された時代に、表現の自由をかけて挑んだ現代日本小説の勇気と愛!
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これはすごい。。。!さすが高橋源一郎、彼でなくては書けない小説。
後半のナウシカの引用は、あまりに現実とシンクロしていて戦慄した。大傑作。
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彼の文体にも慣れたが、本作ほどアナーキズムを感じたものは無かったような気がする。しかも、そこも通り越して、ただの照れ隠し。言いたい事をふざけながら主張するような、そんな技法なのかと思ってしまう。くだらない。くだらなさに、アーティスティックなものを感じたり、俺には分かります、という類の感情を得るのは自由だ。しかし、これはくだらなく、くだらないが故に、スーザンソンタグに感銘を受け、オマージュするためには、必要な技法だったのだろう。テロに対し、冷静さを呼びかけ、表現者としての自らの正義と自由を、人としての立場を選ばぬ公平さを選び、行動したスーザンに対し、最も気取らず、他人に唾棄される形を選ばざるを得なかったのだろうか。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB07870318
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『我々は、この作品の売り上げをすべて、
被災者の皆さんに寄付します
チャリティーAV
恋する原発』
『レンタルヴィデオ屋の隔離されたコーナーに
他人の目を気にしながら入りこみ
別に盗むわけでもないのに周りの視線を
気にしていた皆さん
この作品は堂々と借りてください
そして堂々とオナニーしてください
あなたの精液の一滴一滴が貴重な
義援金になるのです』
『まあ、そんなことは、どうでもいい。細かいことは、どうでもいい。世の中、たいていのことはどうでもいい。』
『おれは、ほんの少しの間、考えた。とりあえず、おれの頭は使い物になるかどうかを。
1+1=2。これなら、なんとか。』
「これこそ、AV業界を震撼させたシリーズ、
『恋するために生まれてきたの・大正生まれだけどいいですか?』の第一弾、
『稲元ヨネさん七十二歳・夫が戦死してから五十年ぶりのセックスなんです、冥土の土産にしたかった』の冒頭シーンなのだった…。」
『あのセックスはすごかった。二十二歳童貞のカネダと、七十二歳ヨネさんのセックスは。
あれは、セックスだったんだろうか?』
「おばちゃん、なにしてたの?」
「おばあちゃんの七回忌だったの。でも、さおりちゃんは知らないわよね。おばちゃんのおばちゃんが亡くなって六年目のお祝いよ」
「ええ? お祝い、じゃないでしょ、おばちゃん」
「いえ、お祝いよ。こんな世界から、とっととおさらばでしてよかったわね、というお祝いなのよ」
「ヴァイブをヴァギナに突っ込もうとしているの。でも、女の子が望んでいるからじゃないわよ。あの男は、ヴァギナを見ると、そこか、自分が生まれてきたことを思い出して、憎しみで一杯になるのよ! こんな世界に追いやりやがって、って! だから、ヴァギナを見ると、メチャクチャにしてやりたくなるわけ」
「おとなになったら、あたしのヴァギナにもヴァイブを入れられちゃうの? そんなの、イヤだあ!」
「だったら、戦うのね。自分のヴァギナは自分で守るしかないんだから」
『この世の中は、あたしたちのヴァギナとアヌスを狙う男どもで一杯なの。というか、男どもは全員、あたしたち女のヴァギナを狙ってるのよ! ちょっと優しくされて、ニッコリなんかしたら、さあ大変』
『大丈夫。
おれはまだ狂っちゃいない。おれの判断では。』