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琵琶奏者、鶴田錦史の伝記。(並行して武満徹の随筆を読んでますが)武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を演奏した人です。すごい人です。少女時に天才琵琶奏者として名を馳せ、20代に夫と別れ子を捨て、琵琶を捨て実業界で成功し、更に女を捨て男として生き、そして再度、琵琶奏者として琵琶の新たな地平を開いて行く。キース・ジャレットと共演したこともあるようです。そのときのCDないのかな、、、
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武満徹のルポでノヴェンバーステップスの琵琶奏者として登場して気になった人物だったので読んでみた。
鶴田本人の価値軸として美醜が重要でそれがコンプレックスになっているらしいとはいえ、著者の書き方や冒頭の写真の置き方も人の容貌に焦点があたりすぎていて古臭いしつらい。芸能人は人気商売だから女性なら容姿がモノを言うのは止むなく、美人の師匠の二番手に甘んじ無ければならなかった不本意さがこの人のパワーになっている。とは言えテレビはなかったのだから今よりは芸の道でやりようはあったと思うのだが。美人の師匠も当時ならではの悲惨な境遇ながら、魅力的な人物として描かれており、その面でも勝てない気持ちだったかも。
ホンキで事にあたることの素晴らしさを実感させてくれる人物。
戦前の日本の音楽状況が戦後とまるきり違うことが発見でき意外だった。
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「ノヴェンバー・ステップス」と言えば、作曲家・武満徹の代表作であり、日本の現代音楽の大傑作でもある。
1967年にニューヨーク・フィルの委嘱により作曲された琵琶・尺八・オーケストラのための楽曲で、琵琶奏者・鶴田錦史、尺八奏者・横山勝也、指揮・小澤征爾によって初演された。
サントリーホールでこの3人(+新日本フィル)の演奏を聴いた時は、琵琶の鶴田錦史という人は男性だと単純に思ったが、割と最近この曲について調べていて初めて女性であることを知った。驚いた。しかしいでたちは紋付き袴であり、どう見ても男装である。これはどういうことなのか。気になってさらに調べてみると、この本に行き当たった。
琵琶の天才少女と言われながら、やがて運命に弄ばれるようにして子らを捨て、琵琶を捨て、女であることも捨てた。強面の親分さんのような風体を身に纏い、後半生を「男」として過ごしたのである。新興喫茶やナイトクラブのような事業を次々と成功させ、財をなした。その後、琵琶に戻るとその再興を期して奔走した。そして武満と出合い、オーケストラと競演し、世界的評価を得るに至る。その火の出るような生き様ゆえに、紡ぎ出される音にも凄まじいものがあった・・・そんな物語が綿々と綴られていくのである。
「さわり」とは琵琶独特の音質をつくるものであり、弦が棹に「触る」ことだと思うが、「障り」に通じるともいう。例えばギターのような「ポーン」という音ではなく、「ビーン」という音、すなわち耳に障るようないわば雑音をわざと含ませることにより、複雑でより自然の奥深い響きを作り出すのだという。この辺も、前に読んだ「密息」の本に出て来る尺八の音作り、ひいては日本古来の感受性にもつながる話であり、面白い。
なお、琵琶という楽器が昭和初年の芸能の主役であったことや、その後人気奏者の死や戦後の洋楽の席巻などによって急速に衰退していく風景も興味深かった。
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天才琵琶史「鶴田錦史」の生涯についての紹介本。
写真からすると、すんごいおっさん。
が、女性(!)と聞いてビックリ、驚愕、え!?って感じ。
バーンスタイン、小澤征爾、武満徹ともからみ、天才奏者でありながら、実際は一度挫折して実業界で名を成してから、また戻ってくるという、とても数奇な人生。
いやーこういう日本人がいたんだな、という点では面白かったが、なんでか兎に角読みにくかった。
興味としては★4つだが、読みずらくてマイナス★2という感じ。