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図書館で冒頭の文章にほれ込んで、著者のことを何も知らないままに借りたので、途中まで著者は写真家だと思っていた(よくよく読めば、もっと早くに気が付くはずなのだが……)。
けれど、それくらい著者と写真の関係が身近で、それでいて不思議な縁のようなものを感じたのだ。
淡々と、それこそ本当に古いアルバムを一枚一枚めくっていくように、文章が綴られている。それ自体は何も私たちに語りかけているわけではない。しかし、それを見る私たち、それを読む私たちが否応なしに、それらから「見る」ことや「読む」ことよりももっと多くのことを読み取るのだ。
本物が本物であることが、私たちの中で、確かな重みとなっている。一枚の写真、それが実際のもの(少なくとも、実際に「撮られた」もの)であることが、何よりも多くのことを語る。
気負いのない、それでいてどこか茶目っ気を含んだ、著者の語り口がとてもいい。
私はフランス文学にはなんとなく苦手意識を持っているのだが、フランス文学を読むと、一度フランス人になってみたいものだなぁ、と思う。
イギリス文学の方がずっと自分の好みに合うものが多いと思っているはずなのに、なぜか「イギリス人になってみたい」とは全く思わない。……あは。