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居酒屋「まつ」の主人・藤太のもとに、昔の親友が訪れた。
彼が伴ってきたのはかつて愛した少女・いづみの娘。
彼女を置いて去った親友はそのまま行方をくらませ、藤太は小学生のほずみと奇妙な共同生活をすることになる。
全てを忘れ、ただ移ろう日々とアルコールに身を任せていた藤太だったが、ほづみとの生活を続けるうちに、25年前の事件を掘り起こすことになり・・・。
『月桃夜』でむせかえるほど濃密な世界を描き出した遠田さん。
今回は打って変ったバリバリ現代もの。
救ってやりたいと思っていたのに救われていた男の慟哭が、哀しく響き渡ります。
タイトルにもあるアンチェルとは、ユダヤ人の指揮者の名前で、彼が振った「新世界から」は作品内でも重要な意味を持ちます。
羽化できぬ蝶の羽ばたきを強く強く望んだのは誰だったのか。
ラストまで読めばそれがわかる、はず。
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【ネタバレ】劣悪な環境で育った男を主人公に、その幼なじみの男女の昔と今が語られます。サスペンス度には何の不満もないのですけど、あまりにも鬼畜な行いとあまりにも救いのない結末に加えてかすかに「永遠の仔」が香るのが残念で★一つ減点。
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親からの虐待と抜け出せない劣悪な環境の中育まれた微かな希望の友情。時間の止まっていた男が、かつての親友が子供を預けに25年ぶりに現れ…。
諦めていたはずの未来、忘れようとしていたはずの過去と向き合うことに。虐待は救いがなく暗く重く人生を壊す。
「永遠の仔」を思い出す辛い小説だった。
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惰性で生きている主人公の元に現れた幼なじみ。子どもの時に起きた辛い出来事がよみがえってあわただしい日常になってくる。けっこう暗くてちょっと辛い話だった。
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居酒屋の主人・藤太の元に、25年ぶりに幼馴染みがやってきて・・・
読ませる事は読ませる。でも、虐待された子供とか、かわいそうな人とか出しとけば泣けるみたいなのは違うと思った。自己陶酔っぽい感じ。
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読後感、重い。
四十にもなる藤太と秋雄をしばるこども時代の出来事が気になってページをめくる手がとまらない。
一番ひどい日々だったはずのあのころが最高の日々だったと言った藤太と秋雄が悲しい。そして、一番つらかったであろういづみが、おそらく最後まで一番強い人だっただろう。
それがまた途方もなくせつなくて、泣けた。
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中年の純愛と悲惨な少年時代が交錯。特にヒロインの堕ち方が可哀想過ぎる。ミステリの要素は少ないけど、殺人もやむなしと思ってしまうほどの切羽詰まった動機が切ない。
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デビュー作以来、読み逃したくないと注目してきた遠田潤子さん。
読み始めると苦しくて、でも頭を支配されて止められない、そして読後のものすごい虚脱感と満足という謎の感覚が毎回味わえる。
という訳で読後、いつも感想を軽々しく書けないうちに日が経ってしまう。
読書記録を見返していて、読了したのに、またもや感想を書き忘れていたことに気づいた。
細かい筋のことはいい。
やっぱりすごかった。
そして、軽々しくお勧めすることは出来ないけれど、間違いなく力のある作家さんを知っているぞと密かな喜びに浸るという時期だったはず。
体力気力のある時でないと駄目だ、とまた思った。
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救いようのない大人たちに翻弄される主人公が救いようのない大人に成長する。親子二代で切り盛りする居酒屋『まつ』の常連客たちもまた救いようのない大人たちだ。ひとりの少女の出現がこの大人たちを変えていく。無垢な少女と薄汚れた大人たちと街とのコントラストがいい。なにげなしに図書館で手に取った著書だったが、めっけもんだった。
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一度、図書館で借りて読んでいたのを忘れていました。
読み始めてすぐに気が付きましたが、かなり忘れていたこともあり再読。
一気読みしました。
悲しい。
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子供の力ってスゴイ。不器用な上、ガッチガチに固まっていた藤太の心を少しずつ溶きほぐしてしまうんだから・・・。
どこまでも重い話で苦しくなる。家で暴れたり子供に暴力ふるったり、酒飲みでギャンブル狂いのろくでもない親のせいで子どもたちは・・・理性はないのか理性はっ!とにかく親たちがみっともなさすぎる。
いずみのお母さんが信じていた神様は何故いずみを助けてはくれないの?神様にこんなこと言うのは申し訳ないとは思うのですが、「神様どこ見てるんですか?」
ハンチングさんは秋雄やいずみ以外で、実は藤太のことを傍で長いこと見守ってくれていたのかもしれない。
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いづみの告白泣いた……。
これでもかこれでもかと重い……こんなにも救われたいおはなしがあっていいのか……。
ラストの藤太しんでないですよね…!!!?
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ブルーズや。この小説はブルーズやって。
大阪に憂歌団があるように、ブルーハーツが「弱いものたちが夕暮れ、更に弱い物を叩く」と加速すると歌ったように、遠田潤子は、この小説で、ブルーズを奏でてくれた。
それも、とてつもない憂いと哀しみと切なさを、湿度に乗せて。
良くあるドメスティックからの再生物語の構成をとりつつ、ザラにある初歩ミステリーの造形を装いつつ、バイオレンスやミステリーやエンタメという枠にはめ切れない、魂を揺さぶられる小説になっていて、無性に吠えたくなる。
後半の怒涛の展開は圧巻、それなのにおいてけぼりにされたようなラストもこれまたブルーズ。あとはただ、安治川の淀んだ水が大阪湾に流れ着くだけ。
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父親たちは最低最悪な奴ら。その子供達は結束が固い。お互いに心配を掛けまいと隠し事をした。隠し事は想像を遥かに越えたおぞましさだった。内容が重すぎて読むのがキツかった。藤太は生きているのか?藤太おじさんとほずみのその後は?心配は尽きない。
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遠田さんの作品は2作目ですが、この作品もなかなか重いです。哀しく切ないですね。ストーリー展開は上手いです。読み応えありです。