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この本を読んでからもう5年以上たつ。片付けやミニマリズムに関する本は、それなりに読んできて、右から左へ流れていってしまったような気がするけれど、この本のディテールが、今けっこう自分の暮らしの中にあることに気づく。
たとえば、食器をすすぐ時の水はえんぴつの太さ程度でいい、ということ。つい習慣で蛇口をひねってしまい、かなり威勢のいい水流のもとで流してしまいがちで、かつ「どうせ集合住宅なのだから水道量はほぼ一定だし」などと思わずに、基本的に「あるものを大切につかう」という心がけのもとに使う。ものを大事にすることは「ケチ」ではなく、逆にこうした「ゆとり」があればこそ生まれるということがなあんとなく伝わってくる習慣だ。
それから服にブラシをきちんとかけてほこりを落とすこと。服につく汚れのほとんどがほこりであり、それさえきちんと取っておけば、洗濯に使う洗剤の量、洗濯の頻度もずっと少なくて済む。洗濯をすることは繊維を荒らすことでもあるわけだから(だから着物はめったに洗わないでしょ)、これも「大切」意識のもとにある行為だ。
こうした「大切」につながる「節約」から生まれた余裕のようなものを、著者はこんなふうに描く。
「年をかさねるたびに、荷を持つことにためらいをおぼえるようになり、身軽がどんどん好きになってゆく。それは、暮らしそのものに対しても、同じだ。暮らしの身軽さが余地を生む。
少し手を(からだを)空けておきたい。
空けた手で、咄嗟のことに応じたい。
空けた手で、できるだけ自分のことを自分でしたい。
空けた手で、誰かの小さな助けをしたい。」
この本、既に手放してしまったようなのだけれど、やっぱり手元に置いておきたいと思い直している。