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序文 あなたの遺伝子がまとっているもの
第1章 おばあちゃんの影響
第2章 遺伝という舞台の監督と役者
第3章 ステロイドの恐怖
第4章 遺伝子は世の中から影響を受ける
第5章 フライドチキンと肥満遺伝子
第6章 世代を超えて社会的に遺伝するもの
第7章 シューアル・ライトの功績
第8章 Xウィメン
第9章 ウマロバ
第10章 ウニはおいしいだけじゃない
第11章 デビルに幸あれ
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エピジェネティクスというと三毛猫の例ぐらいしか知らなかったのだが、ラバ(雄ロバと雌ウマ)とケッティ(雄ウマと雌ロバ)が見た目も性格も全く異なっていることもエピジェネティクスの例なんだそうだ。遺伝子構造は全く同じなのに、どちらの母体で大きくなったかによって遺伝子の発現が異なってくる。
遺伝子が全てを決定するのではない。「DNA=ソフトウェア」というアナロジーがよく用いられるが、DNAはハードウェアの一つにすぎず、細胞質との接触など、周囲の環境を介して、いかに分化すべきかが決定される。X遺伝子の抑制の話やRNA干渉など、きっちり書かれている部分も多いのだが、おそらく本書の最大の問題は、ある固体が受けた作用(ネグレクトなど)の影響が、子に伝わっていくという例を次々と挙げているが、そのほとんどがエピジェネティックなものかどうか証拠がないものも多いということだろう。母体環境などが子に影響を与えることは確かにあるのだろうけれど、それは著者も認めるように生化学的な変化によるものも多いのだろう。
・肥満における倹約遺伝子という考え方は提唱者自身が既に捨て去っているように、間違った考え。ただし、母体の栄養が極端に不足すると、胎児が倹約型になる、ということはこれまでの飢饉の調査などからも確認されている
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「エピジェネティック」とは聞き慣れない用語だが、もともとは発生学の「後成説」から取った用語で、前成説(即ち受精卵の段階で人格も含め全てのものがそこに存在しているとするもの)に対する概念として生まれたものであり、発生を受精卵という単純な構造から複雑な構造が生まれていく過程とみなすものという意味だそうで、そこから今では「遺伝子によらない遺伝の仕組みを研究する学問」となっているそうだ。
要するに、遺伝子の存在そのものが全てを決定するわけではなく遺伝子の発現にはDNAと絡み合うように存在するタンパク質や酵素の働きによって活性化したり不活性化することが大きな影響を与えている、とするものである。
そこで本書では遺伝子が同一でも其れが発現するかどうかは環境が影響するとして、第二次大戦末期のオランダ飢餓を例にとり環境が世代を超えて遺伝すること、同一遺伝子を持つ一卵性双生児でも先天性の病気の発現の仕方が異なること、ダイエットする妊娠中の母親の子どもへの肥満遺伝子影響、ベトナム戦争とPTSDの遺伝、親の居ない母親の子育てへの影響などなど、あれもこれもエピジェネティックなのだと紹介している。
このエピジェネティックの概念自体には全くもって異論はないのだが、本書で挙げられている例については、ちょっとばかり待てよ、という気がする。
ここ十数年の比較的新しい学問分野ということで研究対象もその範囲もバラバラとは著者も認めているようだが、エピジェネティックはDNAがメチル化することで不活性化するとメカニズムを余りにも単純化したり、影響を必要以上に過大評価・拡大評価しているようにも見受けられる。一時の「何でも環境ホルモンの影響」、「あれもこれもミラーニューロンのおかげ」に近いものだ。
中には癌の研究とかで有用なものもあるとは思うが、余り風呂敷を拡げるとキワモノ扱いされてしまいそうな危うさを感じてしまう。
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生物の設計図であるDNA配列は変化しないのに,DNAの性質が長期的に変化し,さらにそれが遺伝することがわかっているらしい。それを追及する学問がエピジェネティクス。
一卵性双生児の違いとか,三毛猫の毛色の違いとか,エピジェネティクスで説明できるらしい。DNAがメチル化されたり,生化学物質が付着したりすることで,遺伝子の発現が制御され,その状態が長い間続くのが原因という。
そもそも同一のDNA配列をもつ細胞が,様々な組織に分化するのも,遺伝子の発現がコントロールされているから。本書は,ナチスの占領下での「オランダ飢饉」の影響など,いろいろな事例を挙げてエピジェネティクスとは何か,を説く。ちょっと専門的すぎる話や,曖昧な説明が多くて,いまいち明快には理解できなかった。
トラウマなどの精神疾患にもDNAへの修飾が寄与しているみたいな話も載ってたけど,記憶の関与も大きいのでは?いまのところ,ちょっと半信半疑。
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身近で具体的な例をあげて説明されているので分かりやすかった。遺伝子の発現がいかに環境の影響受けるか、想像以上で面白かった。
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エピジェネティクスが存在することはほぼ間違いないと思うが、本書で傍証として挙げられる研究結果のいくつか、例えば飢饉と統合失調症の相関などは勇み足の感がある。飢饉と子供の病弱さ、まではわかるが、その先まで行くと、結論ありきの誤差分析無しの危険性。
インパクトのある現象なのだが、本書では定義や、メチル化などの数少ないキーワード以外は食い足りない印象。各章の冒頭まではとても良いのだが。
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エピジェネティクス 長期間にわたって遺伝子を調節する多様な有機分子の結合体である分子が、どのように遺伝子とくっついたり離れたりするのかを研究する学問。エピジェネティックな変化とは、DNA配列は変化しないまま、DNAの性質が長期的あるいは恒久的に変化すること。これは環境と遺伝子が作用しあう領域で起こる。世代を超えて伝わることがある。
遺伝子によらない遺伝の仕組みを探求する学問
ソフトウェアである遺伝子が、ハードウェアたる細胞の機械に指示を与えているわけではない。細胞を構成する他の要素と同じく、遺伝子もハードウェアの一つであり、指示を出しつつ指示を受け、監督しながら監督され、原因であると同時に結果でもあるというフィードバックがおきる。
妊婦の栄養状態、精神状態、虐待された経験などの環境が子供に受け継がれる傾向がある。
今までの生物に対する視点が全く変わる。
胚はどの時点で人間になるのか。言えるのは、ヒトの発生は接合子(受精卵)が人間になるプロセスであって、あらかじめ潜在的に存在していた人間が顕在化していくプロセスではない、ということだけ。
脳倫理学にもかかわってくるのでは?http://booklog.jp/users/tomo9784/archives/1/4314009993
エピジェネティクスという視点から見ればクローン人間を作ったとしてもますます元の人間とは違う人間になるのではないだろうか。クローン人間禁止の理由として、多様性がなくなりひとつの病気で全滅する可能性が高くなるというのがあるがその理由が弱くなるのではないか
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各章、出だしは卑近な例から始められてて読み易いんだけど、直ぐに専門的な話になってしまい…。毎章気持ちをリセットして頑張ったんだけどな… 一緒に借りてきた、仲野徹「エピジェネティクス」を先に読めば良かったかも。