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犬の行動学の専門家による犬の行動についての分析書。自分で行っている観察結果や他の科学者の研究成果を基に、犬の性質や行動を科学的に論じている。著者は、ソニーのアイボの開発にも携わった経験を持つほどの著名な女性博士であり、精緻な分析と説得力ある論述が展開されている。訳もよく読みやすい。
「人間が世界を見るように、犬は世界を嗅ぐ。犬の宇宙は、複雑な匂いの層からできている。匂いの世界は、少なくとも視覚の世界と同じくらい豊かである」p88
「(いろいろな犬にマーキングされた)消火栓に堆積している見えない匂いの山は、コミュニティー・センターの掲示板である」p105
「犬は人間に聞こえる音(20Hz~20kHz)の大部分を聞くだけでなく、45kHzまでの音を検知できる」p117
「(人間の目は)赤、青、緑の波長に反応する。犬は、青か緑の領域にある色彩を最もよく認識する」p157
「犬は、人間よりも閃光融合頻度が高い(より瞬間的認識が高い。動くものに敏感)」p160
「犬は視野が広く、周辺にあるものがよく見えるが、真ん前にあるものはそれほどよく見えない。自分の前足はおそらくはっきり焦点が合っていない」p162
「犬には「視線をたどる能力」がある(視線での指し示しがわかる)。犬は、人間の行動から可能な限り情報を収集しようとする性質がある」p179
「霊長類と比べると、犬ははるかに人間に似ていない。だが私たちの視線の背後にあるものに気づき、それを使って情報を手に入れ、あるいは自分たちの利益になるように使うということになると、はるかに優れたスキルを発揮する」p188
「犬は問題解決に人間を使うことにおいて、すばらしく巧みであるが、人間がそばにいないときに問題を解決するのは不得意である」p210