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ひとつひとつの言葉がとても気持ち良かった。生きていくことは、自分の都合の良いことばかりではない。そんな日常が時間とともにいろんな人と交わり、編み上がっていく。
食べものと関わるシーンが、自分の目の前で繰り広げられているよう。
スカイツリーをタワーと言っていた田中さん、わたしも暫くすみだタワーと言っていた。
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すごく好きです。
最初っから泣きっぱなしで、
泣きやんでも、ふとした瞬間またすぐ泣きだしました。
もう、その言葉のうつくしさたるや。
こころへの響き方がはんぱじゃなかった。
きっと、誰しもが持ってる痛みが、
ゆっくりと再生していく様を、
細やかで繊細に描いて。
読後、ひとすじの光にわたしは気付きました。
淡い空気、止まらぬ涙、それでも、
その光に希望をみました。
はっきりじゃなくても、
大丈夫なんだって。
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古びたアパートの住人たち。編みもの教室に通う仲間たち。大切にしていた恋を失くし、すさんだ気持ちから、ようやく顔を上げたとき、もっと、大切なものが見つかった。傷ついた心だけが見えるほんとうの景色。愛おしい人たちとのかけがえのない日々を描き、「群像」発表時から話題を集める著者初の長篇小説。第146回芥川賞候補作。
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傷心のあまり体調を崩し、殻の内側に篭もるように過ごした日々から、少しずつ外に目を向けられるようになり、人の暖かさや縁の不思議、すくすくと育つ植物の生命力に助けられ見守られて、生きることを取り戻してゆく物語である。アパートの管理人や住人、編み物教室の生徒たちなどの想いに触れ、幾度も熱いものがこみあげてくる。人はひとりきりでは生きられない、そして、助けを求めるのは忌むべきことでもなんでもないのだと、あたたかさと共に思わせてくれる一冊である。
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ほっこり喪女小説。編み物と喪女は相性がいい。主人公がどんな編み物をするのかよくわからなかったのと、自己懲罰的な性格で何か辟易。
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高低のないはなしだった。物騒も亀裂も、ひとかけらのきっかけを残し、ただ過ぎていく。高低はないけれど、わずかな傾斜ののぼり坂だった。失恋して這っていたさーちゃんが顔をあげ腕のばし立ち上がり歩み出す、上昇する物語。寄り添うように生きているのかもしれない、その人もまた誰かの支えとなっている。
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失恋からの痛手を受け止め、再生を図ろうとするアラフォー女性・さみ子の姿を丹念に描いた物語。
「風船」と題する書き出しの作品から、タイトル作となる最後の「きなりの雲」まで8編の短編が、見事に一連の事情を明らかにしていく。登場するアパートの住人や元同僚や仕事先の店長さんなどとの日々のやり取りが、前向きな気持ちを持ち始めた主人公の再生を助けてくれるのだ。
そんな中で、思わぬ形で再会することになった元カレとの付き合いが、心に波紋を広げていく。
エッセイストから小説家への変身に苦悩していたかのような著者だが、この作品によって、ようやく長いトンネルを抜け出した感がある。
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失恋のショックで崩れてしまった自分を形成するものたちを、主人公が少しずつ取り戻していく物語。
いや、主人公の世界は確実に広がっているから取り戻すという表現は正確ではないな。
編み物を一目一目編んでいくような静かでゆったりとした変化が丁寧に優しく描かれていく。
とても安心させてくれる小説。
人間て案外しぶといのかもしれないと思い、そのことを頼もしくも思う。
石田千さんの本は2冊目。
小説は初めて読んだけれど、エッセイと小説がとても近いなと感じた。
こんな風に感じる作家さんは初めてかもしれない。
とても好きだ。もっと読みたい。
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控えめで真っ当な善人。著者の作品の中心人物に対しては、エッセイであれ小説であれ常にこの感想を持ち、それは著者自身がそのような人間だからに他ならないと思う。自分自身とのあまりの乖離に憧れを通り越してほとんど驚愕しつつ読むわけだけど、私はこの著者のことをいつも好もしく羨ましく思っている。本作は著者2作目の小説、とても穏やかで地味な話なんだけど、私はこれ、好きだった。チョイ役の密輸団のボス(オジサン)に惚れました。
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静かでゆっくりとした変化、とレビューに書かれた言葉にひかれて。
しかし!変化はとても大きく実はとても驚く。
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初めて読む作家さんですが、とても好みかも。
周囲の人たちの暖かい心に触れて、主人公が失恋から立ち直っていく様子を丁寧に描いています。
主人公が誇りを持って好きなことを仕事にしているのもいいですね。
こういう小説は、読んでいて、優しい晴れやかな気持ちになるので、いいですね。
心に残るフレーズがたくさんありました。
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失恋の痛手で どん底にまで落ちた女性が
温かい周りの人たちとともに
徐々に立ち直っていく様子を
丁寧にやさしい言葉で綴られた作品。
読後 こういうほっこりとした気持ちになる作風
大好きです。
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さーちゃん、じろうくん、玲子さん、中野さん、笠井君、アパートの人たち、編み物教室の皆さん。
すずらんさんの番組でのお勧め。
美しい小説だ。
ガサツの対極にいるあたたかく美しい人たちに囲まれて暮らすさーちゃん。
手芸屋さんに行って、毛糸を選んでしまうくらい浸りまくった。
作者さんにお礼を言いながら大切に読んだ。
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ニット作家のさみ子さんの日常はゆったりとしていて心地よく、読んでいると無性に何かを作りたくなります。
失恋から立ち直ってゆくヒロインの様子、手編み教室の生徒さんたちの穏やかな優しさ、手紡ぎ糸職人のこだわりの糸、素敵なシーンがたくさんありました。
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石田千さんの近年のエッセイや小説は、体調も精神的にもおつらい時期なのかな?と心配になってしまうような読感だった。
この作品は暗闇に光を感じる、装丁のままの世界。
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主人公・さみ子のやさしさが、
彼女の編んだ作品から、編み物教室の生徒や隣人たちに寄せる心づかいから、あるいは、植物にむける視線からも感じられ、暖かい気持ちになりました。
一目ずつ針を動かし、コツコツと編み上げる醍醐味もさることながら、ほどけばまた元の一本の糸に戻せることも編み物の魅力ではないかと思います。
羊の色そのまんまのきなりの糸で、何か編みたくなってしまいました。