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「数学とはどのようにあるべきか?」というイデオロギー闘争の歴史を追いかけた数学史の本。中心となるテーマは、やはりラッセルの論理主義とヒルベルトの形式主義、そしてブラウアーの直観主義のところ。これらのイデオロギー対立の源流を、プラトンの合理主義とアリストテレスの経験主義の対立に求めているところが本書の奥ゆかしいところかもしれない。西洋哲学の始まりから書き起こしているので、数学に対するカントの思想についても紙面を費やすことができる。カントとヒルベルトは共にケーニヒスベルク(現在のカリーニングラード)生まれであり、ヒルベルトがカントから受けた影響は計り知れない。1925年に故郷のケーニヒスベルクで講演をした頃がヒルベルトの絶頂期であったが、その後、ゲーデルによってヒルベルトプログラムが破綻してしまうのは周知のとおりである。
元の文章が悪いのか翻訳が悪いのか分からないけど、とにかくとても読みにくい本。とはいっても「読みやすく書かれていれば理解できる」ようなテーマでもないので、それほど問題とは思わない。数学史や数学基礎論を勉強していると、あるところから先にはどうしても越えられない壁が存在することを、いつも痛感させられる。「数学というシステムの謎」は奥が深い。
【川崎市立中原図書館 410.1】