投稿元:
レビューを見る
ブラジルと言えば「コーヒー」というイメージがいまだに強い私ですが、この数十年間にブラジルは、さとうきびの生産を大きく伸ばして、バイオ燃料を世界に先駆けて普及させていることが、この本に書かれています。
ブラジルには未だに未開発の土地が多くあるようで、さとうきびの生産を増やしても、他の穀物には深刻な影響がでないようです。この点が他の国には真似できない点なのでしょうか。
著者の小泉氏も、ブラジルと日本の特性の相違を把握したうえでに、日本のエネルギー戦略を考えるべきというメッセージを私は受け取りました。
日本の場合は、メタンハイドレードや、今週(2012.6.26)に私は知ったのですが、新潟沖で中東での中規模油田に相当する海底油田?という資源も活用することを考えるべきなのかもしれませんね。
以下は気になったポイントです。
・バイオエタノールとは、さとうきびの様な糖質原料やトウモロコシのような澱粉質原料を発酵・蒸留して製造される、バイオディーゼルとは、ディーゼルエンジン代替燃料として、植物油脂等の原料をメチルエステル化することで製造する(p15)
・一次エネルギー総供給量に占める再生可能エネルギー割合は、ブラジルは47%強と、日本の3.2%と比較して圧倒的に大きい(p19)
・1次エネルギーについて、薪を除くと47.3から37.2%、サトウキビ由来のものに限定しても18.2%(p20)
・最近は含水エタノール生産が増加している、2003年にガソリンとバイオエタノールが任意の混合割合を設定して走行できるフレックス車が販売開始されたことによる(p39)
・砂糖生産における副産物である糖蜜もバイオエタノール生産に使用されている点が、ブラジルにおけるバイオエタノール生産の大きな特徴、さとうきび圧搾後の搾りかすであるバガスは、タービン発電による熱源として使用されている(p49、85)
・さとうきびから直接、バイオエタノールを生産している国は少なく、ブラジル(95%以上)の他は、コロンビア、パラグアイ、フィリピン等(p101)
・ブラジルのバイオエタノール生産は、さとうきびを原料にしているため、穀物需給への影響は殆どなし、ブラジルが電力生産性を高めるようなシステムを導入しても、国際砂糖価格に与える影響は限定的(p128)
・現在のサトウキビ収穫面積(860万ha)は、適性の高い農地面積(719)を超えている、但し適性が中程度の農地は、その他に1634万haもある(p145)
・ブラジル産サトウキビからのバイオエタノールの産出/投入比率(9.3)は、他のバイオ燃料(1-2程度)比較で高く、エネルギー効率が高いバイオエネルギーである(p184)
・米国ではトウモロコシからバイオエタノールを生産しているが、全体の82%副産物として飼料しか製造しないもの(p194)
・ブラジルの自動車販売台数は 2010年に351万台を超え、世界4位の市場となった(p207)
・国営会社のペトロブラス社は、海底油田開発の技術がある、2010年に南西石油の株を購入して傘下に収めた(p208)
・バイオ燃���の問題点として、1)国際的な品質規格が統一されていない、2)供給安定性の問題、3)レアル高による国際競争力の低下、がある(p211)
・ブラジルでは高い固定費用をかけて太陽光パネルを設置するよりも、農地にサトウキビを植え付けていた方がコスト面で安上がり(p225)
・ブラジルは2014年のワールドカップ開催、2016年のオリンピック開催を契機に国内経済が一段と成長すると見込まれる(p234)
2012年6月30日作成