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監禁文学を集めた短編集。地元の図書館で借りてきた。谷崎潤一郎の作品も収録されている。
ちくま文庫はよくやってくれた。良い仕事をしている。
もう絶版なのが残念でならない。
そして、この本に収録されている宇能鴻一の「ズロース挽歌」が逸脱である。すばらしい。
ググってみたところ、三島幸夫が死んでから官能作家に転身したらしい。
純文学はもう書かないのか……。宇能氏の本は、これまたほとんどが絶版になっている。図書館に行けば出会えるかもしれない。
まぁ「ズロース挽歌」自体は純文学としてはかなりイロモノではあるだろう。それにしても、すごく良い。あんなセンスはなかなか持ち合わせていない。
五感に訴える感じで女学生に対するフェティズムを語ってくるのが何とも生々しく素晴らしい。
簡単に言えば、この中編小説は「ズロースを履いた女学生」フェチの余命幾許も無いおっさんが学生時代を思い出して、女学生を追い求めてハァハァする話である。女子大生でも女子学生でもないのがポイント。
しかしメインストーリーとは別の前半の学生時代の話もすばらしい。メインストーリーは有名な女子高生誘拐事件が元ネタになってるらしいが。
日本が民主主義化し、男女共学となった時代を、語り手は学生時代として過ごしている。男子校と女子校が合併する際に、女学生の椅子を運んだりするわけだが、さりげなく匂いを嗅ごうとしてみたり、実際に学校生活が始まってからは、女学生が座る椅子を見て「あの椅子になりたい」などと思ったりする。女学生が椅子に座る時、スカートをふわっとめくって座るわけだが(※今もプリーツスカートの学生さんはするよね)そう考えると、女学生の尻と椅子の間にはズロース(※当時はパンツではない)一枚しかないわけだ。大変だ。……というようなことが大真面目に書かれている。
これを読んでピンと来た方、一度でも「変態」と呼ばれたことのある方や、健全な男子諸君は、是非図書館で探してみてほしい。
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学生時代、二年連続ゼミでで谷崎のマゾヒズム文学を扱ったせいですっかり飽きてしまったのですが、これに収録されている犯罪小説はあっと言わされます。純文学作家の書くこの手のものは、語り手をうまく使っていて実に面白いです。
オススメ:「私」「途上」
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『途上』が読みたくて購入。
他のもかなり良かった。
安部公房は詩人を特別なものと見做したがるけど、
谷崎潤一郎は芸術家(特に画家)を似たように扱うことが多い気がする。『陰翳礼賛』からして、視覚的な美術に強い関心があったのかな・・・さすがに突き詰めて調べてはいないけど。
著者はこれをミステリーとして捕らえられることを嫌がったらしいけども、 確かに心の動きに重きが置かれている。 悪事を犯しやすい人間たちの考え方や心境が見事に描かれており、 いけない考えなのだと判ってはいるのだけれども共感しそうにさえなってしまう。
自治医大店 田崎
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「私」のみ
語り手である私が自己愛性の高い人に見えるのと同時に、どこかすっきりとした印象を抱くのは。
平田に幸あれ。
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ミステリでも偏執的な谷崎節は全開です☆
■柳湯の事件
銭湯の中で一緒に暮らす女の死体を踏んだと思い込む。
ぬらぬらしたものにフェチな主人公って・・・らし過ぎです ^^;;
そこ、描写くど過ぎですから。流しましょうよ・・・
■途上
インタビューと称して犯人を追い詰める、なんて、
本当のミステリみたい〜。ちょっと乱歩が入っている感じかな。
■私
いやあ、このオチは・・・コケるわ。
クリスティ女史の「xxxxx殺し」もびっくり。
■白晝鬼語
ポーの「黄金虫」の暗号を使ってます。
とあることから今夜殺人事件があることがわかった友人園村。
・・・に巻き込まれる主人公。
節穴から覗くとか谷崎テイストもちゃんとあります。
このオチもちょっと・・・・ご愛嬌で ^^
園村がいい味。病んでる榎さん(@京極堂)って感じ。