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図書館でちょっと待ってた夏石鈴子の『わたしのしくみ』が届いて、その日のうちに読んでしまう。こんどはどんな話かな~と思っていたら、デビュー作の『バイブを買いに』を思い出す、夏石エロ系の一冊だった。
エロといっても、擬音語と鼻息や吐息ばかりが表現されているようなエロ本とは違い、生活してる中にエロもちゃんとおさまっている感じ。なにより私が夏石エロをスキなのは、「わたし」の感じ、思い、考えがこまやかに書かれていることだ。この本に入っている7つの話に出てくるどの「わたし」も、ああこういう人なんやなあと、読んでいる私のこころにたちあがる。
7つの話のうち、とくに「あなたの指で汚してちょうだい」と「資源回収日」がよかった。
▼邦江は、もし自分を小動物にたとえたとしたら、それは蛸ではないかと思っている。その蛸はとても小さく、いつも陣地と決められた蛸壺にひっそりと息をしている。壺の中にさえいれば、決して棒でつついていじめられることもなく、敵に襲われることもない。自分はそんな風に暮らしていくのだとうっすらとした決意で、これまで過ごしてきた。(pp.47-48)
▼自分がしたくないのに、セックスすることを「義務」や「義理」だなんて思う人もいるかもしれませんが、義理のどこが悪いのですか? 本音しか言わないなんて思いやりがありません。セックスなんて、よく考えれば不自然なことですから、そんな無理も必要です。そうでもしないと、生活の中ではいつの間にか風化してしまいます。(p.144)
カバーの絵はバラ。これがまたなんともエロい。
(5/17了)
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私が夏石作品を好きなのは、著者のある意味人並み外れた "正直さと真面目さ" を感じるからだと思う。前作(『虹色ドロップ』)で体調を崩されたと知り、勝手に心配して待っていた作品なので嬉しかった。今回の感想(評価)は☆3つだけど、これからも新刊を楽しみにしています。
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夏石鈴子の本は、幾つかの得意ジャンルに分類できるように思うが、本書は官能本系だった。本当の官能小説を読んだことはないが、どれも独特のエロさがある。
始まりが宇野鴻一郎風で、官能小説っぽい感じがした「資源回収日」、独特の奇妙なやり取りが面白くて全然エロにならないと思っていたら急転回する「真珠」など、どれも面白いが、普通の女性が不思議な世界に自然に足を踏み入れる「音読」が一番面白かった。夏石鈴子らしくもあり、また、川端康成の「眠れる美女」のようでもある。
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ジャンルとしては官能小説だが,若い女性が書いているので従来のものとは全く違う.あっけカランと性を楽しんでいるようで,おじさんには違和感がある.
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性をテーマにした7編の話。
日常の中に性的な衝動はあるのだけれど、それを露にしない社会の中で、自分の個性を納得しながら普通に楽しんでいる。
性が全く暴力と離れて描かれているところに新鮮な思いがした。