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物語はとある女流詩人の変死体が発見されたところから始まります。 ところがそこにこの物語の核となるお話(つまり女流詩人の死亡)とはまったく関係がなさそうな、赤の他人の起こした殺人事件の話が出てきて、冒頭で KiKi の頭は??に・・・・。 でもまあ、この全く関係のなさそうな殺人事件の背景にある「どうして事件が起きたのか?」というお話と、女流詩人の死亡、さらには過去を遡ったある一族にまつわるいくつもの事件とが微妙に絡み合ったお話・・・・・となっています。
KiKi は「誰が真犯人か?」という点については、かなり早い段階で察しがついちゃったんだけど、途中で「まさか?」と思うような人が逮捕されちゃったりして若干混乱させられました。
物語を牽引していくのは女流詩人の娘で、チェリストという設定のサムという女性です。 チェロ、いいですねぇ!! KiKi はピアノを弾く人間なんだけど、ピアノ以外の楽器の中でもっとも惹かれる楽器がチェロなんですよね~。 チェロの音色って全ての楽器の中でもっとも人の声に近いと言われていて、楽器のシェイプも女性の体みたいで、奏でるに当たっては抱きしめるような格好になって・・・・・ とにかくチェロと言う楽器そのものが「愛おしむ」という言葉を形にしたらこんな感じ・・・・・という楽器だと思うんですよね。
で、そんなサム。 まわりが「自殺」ということで事件を終わらせようとしている中、ただ一人自殺説を否定し続けるという設定なので、ある意味とても頑なで、攻撃性もありで、なかなか感情移入しづらい筆致で描かれています。 でも、彼女が正しい音をなぞることだけはできていても音楽が奏でられていないという状況に陥っているくだりを読むと、言葉少ない彼女の言動には説得力がでてきて、かえって冷静に心を寄せながら読み進むことができたような気がします。
もう1人、物語の核心に近い存在である亡くなった詩人のかつての夫、辣腕弁護士という設定のラフという男性に関しては、職業柄ということもあるんでしょうけれど割とポーカーフェイスを貫いているので、どんな立ち位置の人なのかがわかりにくい人物となっていますが、最後まで読んでみてようやく「ああ、そういうことだったのか」と得心する・・・・・そんな描き方だったように思います。
誰もが心の中のどこかで守りたいと切望している「普通」 & 「平穏」な日常。 それが外的な力によって壊されそうになった時、人は何を選択するのか?? そこに普遍的な「道義心」とか「正義」といったような類のものがどの程度顔を見せるのか?? そんなことを考えさせられました。
(全文はブログにて)
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「殺す鳥」というタイトルでダフネ・デュ・モーリアを連想し、詩人である母が自殺…で、シルヴィア・プラスを連想。
舞台は現代のイギリスでありながら、ゴシックの香りもそれとなく漂ってくる。
詩人の母の消えた日記。母は本当に自殺なのか?
いくつかの家族を並行させたり、絡み合わせたりしながら、その秘密をたどっていく。
家族関係が幾分複雑で、それを把握するのに時間を要した。
過去と現在、そして3つの事件が絡まり合っているので、構造に奥行きがある。
その複雑さも、最後にストンと突き落とされる。極めてシンプルに。
この作者の名前、どうも覚えがあると思ったら「五番目の秘密」に人だった。「五番目の秘密」、絶対に家のどこかにあるんだが、どうしても見つからない。。。
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人と人との関係や葛藤を描いた、
地味だがしっかりと仕事のなされた作品。
面白く読めた。
こういう作品・作家は応援したくなる。
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母の自殺に疑いを持つ音楽家の娘サム。消えた母の日記としを探すサムの行動は次第に周囲に不協和音を招いて行く…。
事件の経過と犯人はかなり早い段階でめどが立ってしまう。伏線もしっかり張られているしね。
しかしこの作者はそこを巧く読ませる。
それぞれが少しずつ歪んでいるキャラクタ描写が物語に深みを与えていて、よくあるパターンの話なのに最後まで飽きさせなかった。
途中、予想外の人物が犯人とされるが、残りのページ数からまだ一山あるとわかってしまうのは紙の書籍の最大の欠点だなぁw
ラスト。
最後のセリフも怖いけど、そこに繋がるセリフも十分怖い。
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読了、70点。
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女流詩人であるキルスティンが不審死を遂げ、そこにあるはずの「殺す鳥」という詩と彼女の日記が消えていた。
このことに疑問を覚えた娘のサムはたった一人で事件の真相を追い求めて行き、、、、
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裏表紙では、心理描写に長けた作者の、とあり実際作品の多くの部分をその描写が占めている。
その中で特に描写が多い主人公のサムに関しては正直読み進めて面白いとは言い難い部分が多くこの点が非常に残念。
彼女の孤独の中の戦いを描こうとしているのはよくわかるが、この人なら私の言ってることを理解してくれるだろう、と思いその後相手から君の言ってることは荒唐無稽だ、と言われて幻滅する過程が繰り返されているのが頂けない。
ただし終盤の事件の中心部分にいる人物達の心理描写は上手く興味を惹きつける形で描かれていました。
ミステリとしては、このパーツの転がし方をすれば真相はそこにしかないだろうと想像がつく部分がほぼそのまま真相であり、
またその真相に当たるある部分は、実は事前に登場人物の一人が知っていて、それなのにそのシーンに至るまで頭の片隅にもなかったかのように描かれているのはどうにも納得し難い。
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コーンウォールはミステリの舞台としてはお馴染み(?)。
英国ミステリ好きとしては読まずにいられなかったんだけど、うん、読んで良かった、面白かった。
途中で、あれ、あれ、これってこういうことで狙われちゃってるんだよね、犯人はあの人だよね、と思って、
でもまだまだページ数はあるし、どんでん返しが待ってるハズ!と期待して、おおお、やっぱり、と読了、という流れ。
そういう意味ではつまらないかもしれないのに、最後までわくわくしながら読ませてもらったのは、さすがとしか言いようがない。
奇をてらわず、しっかりと基本に忠実な作品だった。
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“家族”ものはピンキリ。
本作は壮大な夢を抱きながら力不足であえなく散ったキリ。
人物描写もミステリーとしてのプロットも陳腐。
様々なことを知らずに書いてるでしょう感でいっぱい。
結末が読めた上に納得できない。
内容紹介やあとがきの美辞麗句にまどわされてはいけない。
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イギリスの作家「ジョアンナ・ハインズ」の長篇ミステリ作品『殺す鳥(原題:The Murder Bird)』を読みました。
「ジム・ケリー」に続き、イギリスの作家の作品です。
-----story-------------
夏のコーンウォールで、女流詩人「キルスティン」は死んだ。
バスタブの中、裸で。
自殺という検死審問の結論に、娘の「サム」はただひとり異議を唱える。
本当に自殺なら、母の日記と、詩集の表題作になるはずだった詩「殺す鳥」はどうして見つからない?
消えた日記と詩を探す「サム」の行動が、事件に新たな局面をもたらす……。
心理描写に長けた英国の才媛が贈る、サスペンスに満ちた逸品。
解説=「川出正樹」
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2006年(平成18年)に発表された作品で、「ジョアンナ・ハインズ」の第10作目にあたる長篇作品です。
世界的に有名な詩人「キルスティン・ウォーラー」がバスタブの中で感電死した… 自宅には遺書らしきものが残されており、検死審問で自殺と判断された、、、
多くの人はそれで納得したし、自殺を否定する証拠もなかった… 彼女がつけていた日記と、詩集の表題作になるはずだった詩「殺す鳥」が、どこからも見つからないことを除けば。
娘の「サム」は、生母の自殺という判断を頑として受け入れようとしなかった… 生き生きとして好奇心が強く、エネルギーと情熱に溢れた母が自殺するはずなどない! しかも、翌々日には会う約束をしていたのだ、、、
「サム」は、日記と詩の所在と母の死の真相を求めて動き出す… 「サム」が日記と詩を探し続けたことで、事態は新たな局面を迎えることに……。
「キルスティン」が遺したという詩は、本当に存在するのか? そしてそれは、彼女の周囲で起きていたいくつかの事件と、彼女自身の死の謎に解決をもたらすのか!?
真相が二転三転して全体的には愉しめる展開なのですが… 何だか物足りなさを感じる作品、、、
事件解決に奔走する主人公の「サム」に魅力を感じなかったからかなぁ… 育った環境の影響もあるんでしょうが、どうもいけ好かない性格で感情移入できず、「サム」を助けようとする「ミック・ブレイディ」に同情しながら読み進めた感じ。
あと、冒頭に描かれる「グレース・ホブデン」の夫殺し事件が、もっと巧みに絡んでくると重層的になって面白かったかもしれませんね… とはいえ、家族に隠されたいくつもの欺瞞や虚偽の絶妙な描き方等、興味を惹きつけられる展開もあり、それなりに面白かったのは事実、、、
トータル的には及第点以上なんですけどね… それだけに、もうひとひねりあれば、もっと面白く仕上がったと思いました。
以下、主な登場人物です。
「キルスティン・ウォーラー」
詩人
「サム・ボズウィン」
キルスティンの娘
「ラフ・ハウズ」
キルスティンの夫。法廷弁護士
「ダイアナ・ハウズ」
ラフの母
「ミリアム・ジョーンズ」
ラフの姉
「ジョニー・ジョーンズ」
ミリアムの夫
「アンソニー・ジョーンズ」
ジョニーの兄
「デイビー・ボズウィン」
サムの実父。キルスティンの元夫
「リンダ・ボズウィン」
デイビーの妻
「トレバー・クレイ」
キルスティンのエージェント
「ジュディ・サウンダーズ」
ガルコテージの所有者
「ローラ」
ラフの愛人
「ミック・ブレイディ」
ラフの部下。法廷弁護士
「グリゴリー」
サムの音楽の師
「ナディラ」
サムの友人
「グレース・ホブデン」
夫殺しの被告人